自伝の仏訳『Kitano par Kitano』(Michel Temman 訳、Grasset & Fasquelle, 2010)が二月末に刊行され、パリは北野武でもちきりだった。上は『ルモンド・マガジン』の表紙。新聞売店にはたけしの顔写真入りポスターが貼られ、ポンピドーでは連続上映会が開かれていたし、サンジェルマン・デ・プレの映画館では「アキレスと亀」がかかっていた。たけしの顔はあんがいパリで見ても違和感はなかった。
で、みのること山田稔さんの方は名作『コーマルタン界隈』の文学散策。コーマルタン通はギャルリ・ラファイエット、オ・プランタン、C&A、MONOPRIX、UNIQLO……などの立ち並ぶ百貨店街のお高い感じとサンラザール駅周辺の猥雑さと、リセ・コンドルセやサン・ルイ・ダンタン教会のオーソドクスな厳めしさと、それらが隣接し合って妙なカクテルになった地域である。小生は上野(?)を連想したが、山田氏は京都の四条寺町だと書いておられる。
上から順にサンラザール通から見たコーマルタン通。ドームが百貨店プランタン。71番地の門、郵便受け。
コーマルタン通とサンラザール通のぶつかった角から歩いて五分くらいのところに
ギュスタヴ・モロー美術館がある(さらにもう五分ほど歩けばすでに紹介したブルトンの住居のあったフォンテーヌ通)。十二年振りに訪問。雰囲気はあまり変っていないが、来場者が多かった。蝋細工でミニチュアの人物モデル(群像など)を作っておいて、それを見ながら大画面を描き上げるというモローの手法が公開された特別展をやっていた。
チケットを玄関で買うと、親切な女性係員が「フランス語分かります?」というので「少し」と答えると、ゆっくりと聞き取れるように「今日から八日間、このチケットでオルセー美術館とオペラ座の展示を見られます」と教えてくれた。フランスの公務員(国立だから公務員だろうが)としては稀にみる親切さだった。