格別カメラが好きというわけではないが、中学生の頃から何台も使ってきた。ちょうど売り出し中だったハーフサイズ・カメラ(要するに三五ミリのフィルム一コマに二枚写真が撮れる)が最初に買った機種だったような気がする。
自動車に熱中していた時期でもあり、田舎の国道の脇に陣取って、ごくたまに通る珍しいスポーツカーや外車をパチリパチリやったりしていた。
これまで短期間にもっとも枚数を撮ったのは大学時代だろう。デザイン科の女友達のために夏休みの宿題としてフィルム百本分を撮った、というか無駄にした。百本となるともう手当たり次第、犬猫はもちろん電信柱とか雲とか雑草とか、なんにでもカメラを向けたのだった。今となっては貴重な記録である。
この戦前のライカは古美術商の知人から譲り受けた。沈胴式というのか、レンズの筒を手で伸ばしたり縮めたりできる。手動ズーム(じゃないですね)。まだ使えるらしいが、フィルムを巻き付けたりするのが面倒なので使ったことはない。
しかし機械は放って置くとダメになる。動かなくなったライカを肌身離さず持ってレンズやレバーをいじって生き返らせた話を聞いたことがあるが、そんなところは少し人間に似ているのかもしれない。
ちなみに本当に百本撮って提出した学生は他に誰もいなかったそうだ。