実現するかどうかは分からないが、佐野繁次郎のエッセイをまとめようとしている。といっても西村義孝氏が、である。氏が新たに収集したコピーなどをひとそろい送ってくれた。
飲食の話、ファッションの話、パリやニューヨークの話、芸術論というか芸談、小説風な随筆など、戦前からあちらこちらの雑誌に発表している。文章は雑なのだが、しゃべりのリズムで読ませてくれる。
たとえば「タバコ」という短文。上の写真に写っているもの。日本専売公社東京地区センター発行の『SMOKING』に掲載された。
《タバコ、いつも二十本入を、手のついたのと、もう一つポケットに入れておかないと、ちょっと不安みたいである。
ボクのように、ちょっとつけて、すぐ消す人間はボクだけか、と思っていたこともあるが、実際はわりあいにいる。日本人にも外国人にも。
机のまわりに、もえつくしたための黒い線のあるうちも、ボクとこだけではない。
ホテルの部屋へ初めて入った時、そんなのをみつけると、あっやってやがる、という気がして悪くない。》
『婦人画報』昭和八年十二月号には「食ひもの自慢」を寄稿し、東京の天ぷらのうまい店を紹介している。花長(はなちょう)、あしべ、はげ天、天菊が《うまい》店。天民、天安、みさご、が《いい方》。これにはパリの魚がまずいという枕がある。
《この間も友人がパリーから慨いて来たが鮪が魚屋に出たのでみなでとんでゆくと首にリボンがかけてあつてそれに『この次の金曜日に切ります』と書いてあつたさうだ。首にリボンをかけた鮪なんて考へただけでもおかしいが、それをその次の金曜日に買つて来ると黒砂糖の羊羹を切つたやうでみんな腹がおかしくなつたさうだ。》
フランスのマグロといえば、先日、フランスが地中海産「黒マグロ」の販売禁止に賛成する方針を示して話題になった。フランスは漁業国でもあるから、これには関係者はショックを受けたようだった。
フランス語では「黒マグロ」のことをトン・ルージュ(thon rouge)すなわち「赤マグロ」と呼ぶ。身が赤いから。英語ではブルーフィン・ツナ(bluefin tuna)=「青ひれマグロ」。面白い。
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大阪中央区平野町の
ギャラリー・プチフォルムの看板。