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植草甚一ジャズ・エッセイ2![]() 『植草甚一ジャズ・エッセイ』1、2(ともに河出文庫、一九八三年八月四日、カバーコラージュ=植草甚一、カバーデザイン=菊地信義)。1はかなり前、たぶん十年以上前、に買って『喫茶店の時代』にも引用させてもらった。それ以来ずっと2を探していたのだが、まったく見かけもしなかった。ネットならいくつも出ている。でも、それを買うのはよほどの必要があるときだけ。足で見つけるのが古本者の掟(?)。 昨日、今年になって初めて古本屋へ出かけた。あまりの忙しさに気分の余裕がなかったのだが、『sumus』が終わって一息ついた。まだ創元社も終わっていないし、他にも案件がいくつかあってウロウロしている場合でもないのだけど、まあいいや。 まずは善行堂へ立ち寄る。うわさの均一台を拝む。かなりユニーク(台の形が、中の本ではない)。さらに文庫棚をふと見ると、おやおやなんと「2」があるではないか。少し汚れている分、安めだった(ふつうは千円あたりが相場のようだ)。今年最初の(!)店買いとしては上々である。 『sumus』13の島田さんインタビューのなかに、植草甚一の文章が他社の文庫に入るのを防ぐために『植草甚一スクラップブック』を津野海太郎氏が企画したということが述べられている(p109)。それは一九七六年頃のこと。この河出文庫は主にその『スクラップブック』からジャズ関連のエッセイを抜き出して編輯し直した内容である。 コラージュをメインに持ってきたカバー・デザインが素敵だ。これがすべてだと言ってもいいくらい、断然いい。 目次をサッと見て気になる文章を読む。例えば「コルトレーンの死をハプニングといったら叱られるだろうか」。推理小説を読むとき、白い紙に線を引きながら、カギになるような出来事を線の上に黒丸を付けてそこにちょっとメモしておく、という前置き。そしてコルトレーンの死を知らされたときに頭の中に黒くて細い線が走り、黒くて丸い玉がその上にポツリポツリと乗っかりだしたと続ける。 《ところが最後の黒い玉がポツリとついたままで、その玉である出来事には、肝臓癌、ハンチントン病院で、四十歳で死んだ、という三つのメモしかつかないのだ。頭のなかでは白い線の上の最後の丸い玉のあとには、なんにもなく、つけ足しようもなく、急に遥か下のほうへと何かが落ちていくような気がした。これが、ぼくにはコルトレーンの死を知らされたときのショックだったのである。》 この一種独特のフィーリングこそ、植草甚一をシュルレアリスとだと断定するゆえんである。具体的には植草のコラージュの醸し出す不気味さもこの線と黒丸のイメージにとても近いように思う。 《それから夕刊で彼の死を知った友人たちから、三度たて続けに電話が鳴った。ああ、こんなふうに遙か遠く離れたところでも、コルトレーンの死はジカに訴えかけてくるんだ。その気持ちが友だちに伝えたくなってくる。七月十八日の夕方から夜にかけて、日本中のあらゆる場所で、ジャズ・ファンは同じような気持ちで友だちに電話をかけていたことだろう。》 マイケル・ジャクソンでさえ五十まで生きた。コルトレーン(1926年9月23日 - 1967年7月17日)の四十歳は早過ぎる。まさにハプニング。
by sumus_co
| 2010-02-16 20:10
| 古書日録
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