『映画無限』第八冊(映画無限編輯部、一九三七年四月一五日)。某氏より頂戴したのだが、な、なんと! この雑誌に昨年九月に君本昌久『仮名手本詩乱四十七行その他』(蜘蛛出版社、一九七〇年)から引用したマン・レイ映画「ひとで」その他の上映会の広告と岡田眞吉による解説が収められている。
仮名手本詩乱四十七行その他
http://sumus.exblog.jp/11978899)
『映画無限』第八冊の編輯人は松本三郎(神戸市湊東区神田町三〇三)、発行人は土肥春比古(神戸市林田区前原町一ノ四六)、発行所住所は神戸市湊東区荒田町一丁目五六九ノ一一〇。もう一冊頂戴した第十冊は発行所が「映画無限発行所」(神戸市灘区北通八丁目五六)、編輯人は松本三郎のままだが発行人は瀧口傅(住所は発行所に同じ)に替わっている。土肥が責任者では発行できなくなったようだ。
また上映会は発行費用を補うために企画されたらしい。そしてそれはある程度の成功を収めたようで、第十冊の後記にはこんなことが書かれていた。記者は松本三郎。
《神戸映画界のオエラ方から地平線と一緒に純粋映画の夕の催迄叱言を頂いた。興業を打つなどゝ云ふことは映画愛好家として為すべきことか。反省を促して置くと、他にも同じ考への人があるかも知れないので此際私達の立場を明らかにして置く。“ひとで”“貝殻と僧侶”などは現在の映画の常識に反するものであるかも知れないが、嘗つてのアバンギヤルデイスト達の真摯な努力の結晶を観て頂くことは非常に意義あることだと思つていゐる。又興業師のテキヤ根性故に、歪曲された映画の進むべき道を是正する意味に於ても成功したことはほめられてもよい筈のものだと思ふ。》
発行に協力している神戸映画新人会の同人十六名の名前が載っているが、そのなかで季村敏夫『山上の蜘蛛』(みずのわ出版、二〇〇九年)の人名索引にひっかかるのは亜騎保と岬紘三と広田好夫の三人だけだった。三人ともに寄稿もある。