北野天神の骨董市で買ったような気がするが、古物はメモしていないので、はっきりとは分からない。おそらく明治末頃のものか。
この手の土人形は今でも各地で作られている。もっと形式化されて単純になっているものが多いようだが、これはまだ背中の丸みや首の捻りなどに写実の跡が感じられるのが好ましい。
黒い斑のあるこれらの犬は「ちん」だそうだ。かなり昔から口先が短い小型犬の一種が大陸から日本にもたらされ(ペキニーズだという説も)、主に江戸時代に屋内で飼う犬「狆」として独自に改良されたという。
背中の彩色を省略してあるところからすれば、正面だけ見えればいいのだろう。おそらく狛犬のように左右一対(すなわち雌雄)だったと思われる。犬はその多産から安産の象徴とされてきたから、例えば産屋に置かれるものだったのかもしれない。
底の面に「分丸」と筆で書入れがある。以前の持主が名付けたものか? 「丸」というのは童、鷹や犬、武具、楽器、船など、いずれも人間の世界とそれを超えた世界の竟(さかい)に存在するものを指すという(網野善彦)。汚れなきものたちである。