「青唐津の陶片ですけど、いります?」
個展をやらせてもらっていたギャラリーのオーナーが無造作に渡してくれた。彼は古美術の目利きでもあるからこんなものが事務所のそこここに置かれている。もともとは大振りな茶碗だろうか、器の胴の部分は割れ失せて高台のまわりだけがまるで小皿のように残っている。たっぷりと溜まった深い緑色の釉薬がなんとも言えない輝きだ。
「割れてないと、けっこうするんですよ」
唐津焼は佐賀県の焼物。唐津港から出荷されたところからその名がある。元来が朝鮮半島の陶工たちが渡来して室町頃には製陶が開始されていたようだが、秀吉の明国攻め(文録・慶長の役、十六世紀末)によって多数の陶工が大陸から連れて来られ一大製陶産業に発展していった。
厚味を見れば分かるように破片でもそれなりに持ち重りがする。完全な形なら相当ずっしりした器だろうし、かえって野暮ったいくらいかもしれない。それにしても高台の刳り方などまったく無頓着というか、練達の無造作には見惚れてしまう。酒肴などちょっと盛るにはいいかもしれないと思いつつ、もう何年も膝元に転がしてあるだけだ。
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