ある古本屋で Khan-Magomedov『RODCHENKO THE COMPLETE WORK』(THE MIT PRESS, 1987)を買った。かなり傷みがあるので、決して高くはなかったが、そう安いというわけでもなかった。何年も悩んだすえ、やっと先日決断したのだ。
何年間も売れずにずっとそこにあったというのも、ある意味、驚きである。それこそが古本屋の底力というものではないか。のぞくたびに棚が変っているというのも魅力のひとつだろう。だが、いつ行っても同じ本がデンと置いてある、これじゃないと古本屋としては浅いような気がする。
22日の季村×内堀対談を拝聴できなかったのが残念でならないが、内容はいずれ『ドノゴトンカ』に掲載されるというので楽しみにしておきたい。「
森のことば、ことばの森」によれば、そのとき会場で内堀さんがボン書店の刊行した竹中郁『一匙の雲』(一九三二年)などを展覧したようだ。ちくま文庫版の『ボン書店の幻』表紙に並んでいる掌サイズのシリーズ。この『一匙の雲』と北園克衛『若いコロニイ』がボン書店の処女出版だという。
上は内堀弘『石神井書林日録』(二〇〇一年)から。装幀は北園克衛。そして下が『ロトチェンコ』に掲載されている写真「The Theatre Square, 1932」、ポストカードのようだ。ロトチェンコは写真家としても多くの作品を残しており、影響力も小さくなかった。極端な人物の顔のクロースアップや建築物を見上げたり、見下ろしたりした構図、とくに被写体を斜め四十五度に撮るというのがとくに斬新だった。
北園が
『DES LIVRES』(シモン・クラ書店、一九二九年)を参考にして紀伊國屋書店の小冊子『本について』を発案したように、『若いコロニイ』の表紙もロトチェンコかあるいは類似の誰かの写真に触発されるところ(あるいは直接的な引用)があったのではないだろうか。そうだとすれば時差がほとんどないのが凄い。
なお『若いコロニイ』の表紙に写っている自動車はおそらく一九三〇年頃の「Ford Model A town sedan」(詳しい方に御教示願いたい)。