『ヤサシイ画手本』(家村文翫堂、一九二六年五月一日)。これは『spin』06号に掲載した『ポケット画手本』と同じシリーズである。どちらも宇崎純一の名前が明記されていないしサインもない。しかし絵柄はスミカズのこれまでの画手本に見えているのとそっくり同じものがある。似ているが多少違うものもある。かなり違う絵柄もまじっている。
おそらく、純一の許可を得てかどうか、版元としてはコストを低く押さえる必要があったため、若い絵描きまたは版下職人に作らせた、と考えるのが妥当なのではないかと思う。絵葉書にも同じようなものがある。純粋スミカズではないにしても、スミカズ派と呼んでいいだろう。
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本日、この夏からかかりきりになっていた単行本のデータを某社に渡した。産經新聞大阪版で連載していた「古書さんけい堂・関西出版の明治から昭和」をほぼ倍の分量に増補してまとめたものである(出版は順調に行っても来年になると思うので、もう少し進捗したら宣伝させてもらいます)。
その編集室で
アマゾンの「キンドル Kindle」を見せてもらった。とにかくダウンロードのスピードが以前とは格段に違うとのこと。「一冊三十秒ぐらいかな」だそうだ。登録も購入も簡単で、今後、新聞・雑誌などの情報系、文庫・新書などの実用書の類いはこれらのリーダーに集約されてゆくだろうとの見方であった。
グーグルの「Google Books Search」の問題といい、今後の出版は劇的に変化する局面にさしかかっている。紙の書籍そのものは、仮になくならないとしても、はっきりとした棲み分けができてくるのではないか。紙の生産も環境問題と直結しているわけだし、書籍が先細りなのは間違いない。そして古本屋だけが残った……ということになる、のかどうか。