『砂時計 絵と歌』(文翫堂、一九二二年九月一日)、絵=宇崎純一、短歌=段谷秋比登。タテ135ミリ、ヨコ85ミリほどの掌に乗るような愛らしい本。口絵三点、本文に六十二点ペン画の挿絵がある。歌を三つほど引用しておく(行分けは本文通り)。
しみじみと哀れを感じアルベエルサマン
の詩集閉ぢし春の夜
人気なき夏のをはりの浜寺の夕をゆきて
涙にぢみし
天下茶屋円山の上にひとり来てひよろ松
の幹に夕陽をなげく
こんなおセンチな歌が並ぶ。浜寺、天下茶屋は大阪南郊、宇崎純一や段谷には親しい土地だったと思われる。アルベエルサマン(Samain, Albert Victor, 1858-1900)はフランス象徴派の詩人。父を早く亡くして青年時代から勤めに出た。パリ市役所に職を得ながら有名なカフェの「黒猫(シャノアール)」などで詩の朗読を続けていたが、一八九三年に処女詩集『王女の庭で Au jardin de l'Infante』を刊行して名声を確立した。しかしその七年後には肺結核で亡くなっている。
日本では堀口大学が熱心に紹介しており、アルス泰西名詩選から『サマン選集』を出したのが大正十年だから、この『砂時計 絵と歌』の前年ということになる。ここでいう《アルベエルサマンの詩集》はおそらくアルス版を指すのだろう。大学訳『月下の一群』にもサマンは十七篇取り上げられている(講談社文芸文庫版による)。
大正十一年はワシントン軍縮会議があり、京都では全国水平社の創立大会が開催された。流行歌は北原白秋・中山晋平の「砂山」、千野かほる・鳥取春陽「籠の鳥」。『コドモノクニ』(東京社)が創刊されて児童雑誌ブームでもあった。
『spin』06「宇崎純一特集」は絵葉書を中心にしてスミカズのおいしいところを楽しんでもらえるように編集した。またコレクションにも役立つように資料的な配慮もしたので、お買い求めいただいて損はありませぬ。
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京都新聞の文化欄で湯川書房のことを記事にするらしい。G記者が取材に来た。何年か前にやはり『sumus』のことを取材してくれた女性。湯川夫人にもお話をうかがい、きちんとした記事になるようだから、期待しておこう。