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柳田泉の文学遺産よくぞ刊行した、という本は少なくないが、最近その感を強くしたのがこの『柳田泉の文学遺産』全三巻(右文書院、二〇〇九年、装幀=クラフト・エヴィング商會)である。柳田泉は明治二十七年青森県生まれ、早稲田英文科を出て、英文学を志すも、関東大震災に遭遇し、明治文学研究の必要性を痛感、当時はほとんど省みられていなかった明治文学を研究するために厖大な古書を蒐集し、多くの関係者の談話を記録、論文を発表した。その柳田の佚文というか単行本未収録の文章を精選のうえ収録したのがこの三巻本。 まずは作家たちの思い出や逸話を語った第三巻から読んでいる。明治文学といってもそう特別興味があるわけではないが、『喫茶店の時代』を書いていた頃にあれこれ読み散らしたような記憶もある(ほとんど忘れてます)。そこに付け加えられそうなのは「荷風と帚葉散人」で、帚葉散人は「校正の神様」として有名な神代種亮のこと。柳田によれば神代は毎日銀座をくまなく歩きさまざまな話題を拾っていたそうだ。そして荷風も銀座へ日参していた時期に二人は親しくなり毎日のように会っていた。神代から聞いた話を何度も小説のタネに使っているという。 《毎晩会ったけれども、そのころから荷風は、金銭上にきっちりとしていて、お茶でもコーヒーでも自分の分だけしか払わなかったという。一杯十銭といったころのことである。だから、荷風は、お茶かコーヒーかをのんでも、帚葉氏は水一杯でお相手することも多かった。》 帚葉は女給から先生扱いされて人気者だったので、水だけ飲んで粘っても店からは厭な顔はされなかったらしい(とはいうものの『喫茶店の時代』147頁には並木通りのコーヒー専門店「耕一路」からあまり長居するので出入り禁止をくらったという逸話が出ている)。 以上は昭和文学ネタだが、明治文学関係では若き内田魯庵が田辺たつ子(後の三宅花圃)にふられた話とか、樋口一葉の次兄虎之助は奇山と号する陶工だったというのが印象に残った。柳田によれば、虎之助は父と意見が合わず京都へ下って陶器画工に弟子入りした。その後、神戸に出て外国人相手に注文をとって仕事は相応に繁盛していたそうだ。虎之助について座右の和田芳恵『樋口一葉』(講談社現代新書、一九七四年三刷)を参照してみると、 《虎之助が少年時代に勘当され、別戸籍になっており、なつ[一葉]に頼るより仕方なかった》 《次男の虎之助も、一人前の陶器の絵付け職人になり、薩摩金襴手の名工として嘱目されていた》 《父に死なれた母となつ、くにの三人は、家をたたんで、芝西応寺町の虎之助を頼り、同居するようになった。虎之助は酒乱の気味もあり、泉太郎[長兄]びいきの母と意見があわなかった。虎之助のところに陶工も同居しており、その世話もしなければならない。なつは萩の舎の稽古どころではなくなった》 などと出ている。一葉の父の死は明治二十二年だから一葉はまだ十七歳である。長兄は父より先に死んでいる。この当時、虎之助は東京に戻っていたわけだ。しかし結局、母と次兄のいさかいが絶えず、この翌年には本郷菊坂へ母妹と三人で引っ越すことになる。萩の舎(はぎのや)は一葉が入門していた中島歌子の歌塾。魯庵をふって三宅雪嶺と結婚した田辺花圃も同門だった。 虎之助の陶器は一葉記念館に所蔵されているらしいが、京焼か薩摩焼か、ちょっと興味をそそるところ。ちなみ和田芳恵(この人も男性です、念のため)も「一葉女史と泉鏡花」の項に登場している。 《私などは一葉については大した知識もなし、又直接知つてゐたわけでもなく、これといふものを書いてもゐないのに、明治文学関係者のうちではまづ年寄りの部類に入るといふので和田君は度々訪問して、いろいろ相談もうけた。》 その和田の相談に応えるかたちで、博文館の編集を手伝っていた時代の泉鏡花が樋口一葉のところに原稿依頼に出掛けた話を紹介したのが「一葉女史と泉鏡花」。ここに引用された鏡花の描写が一葉の飾らない姿を髣髴とさせる。 「余りくさくさするもんですから、湯呑で一杯……てつたところ……黙つてて頂戴」。ーー こんな些細な話こそ文学研究の醍醐味というもの。『柳田泉の文学遺産』読んでしまうのが惜しい! 右文書院 http://www.yubun-shoin.co.jp/
by sumus_co
| 2009-10-18 21:24
| 喫茶店の時代
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