珍しいと思った一冊はこれ、『上野動物園案内』(東京帝室博物館、一九〇二年五月三日)。冒頭、動物園監督・理学博士・石川千代松述としてこういうふうに書かれている。
《本園ハ東京帝室博物館ニ付属シ、上野公園地字清水谷ト云フ処ニアリテ。[ママ]明治十四年頃ニ設ケラレタルモノデアル、今日トナツテ見ルト、土地ガ狭クテ、又南ノ方ニハ大木ガ沢山アリテ、動物ヲ養フニハ余リ都合ノ好キ地デハナイケレドモ、別ニ好キ土地モナイカラ、先ツ此処デ出来ル丈ノコトヲ為シテ居テ、段々ニ改良シテ行ク積デアル。》
ウィキによれば開園は明治十五年である。この説明文の上に押捺されている蔵書印は「伊達邦宗旧蔵書」。昨年七月に同じ印のある『A GUIDE TO THE EXHIBITION GALLERIES OF THE BRITISH MUSEUM』を買ったことを書いた(この本は南方熊楠の関連書ということで、びわこのなまず先生にお譲りした)。
http://sumus.exblog.jp/8944767
またしても伊達蔵書に、しかも天神さんで遭遇するとは、驚きだ。
国会図書館が地図を「
写真の中の明治・大正/上野動物園案内」としてアップしているが、こっちの方が保存状態がいい。本文は活版ながら地図はどうやら木版刷のようである。序文に続いて地図の順番通りに飼育している動物を紹介している。「いんどざう」「ふたこぶらくだ」「大かんがるう、うをむばつと」「ばーばりいじゝ」(ライオンです)「ほくきよくぐま、つきのわぐま、日本ぐま」、これだけの別刷イラストが収められている。キリンやカバ、チンパンジーなどはまだ到来していない時代である。
一番最初の動物は入口(地図ではいちばん下の中央)すぐの丸い池のようなところに「たんちやうづる」(現在の地図を見てもやはり入口近くにはタンチョウはじめ鳥類が配されている)。そしてグルリと一周した最後は「いしがめ、やまがめ、はこがめ、りうきうはこがめ」で締めくくられている。場所は出口に近い方(ということは入口にも近いが)、水路の手前になる。