土曜日に大阪で買った君本昌久『仮名手本詩乱四十七行その他』(蜘蛛出版社、一九七〇年)を読む。「戦前神戸詩人の受難・神戸詩人事件にふれて」「神戸・モダニズム覚え書」「中原中也」。
「戦前神戸詩人の受難」は小林武雄と神戸詩人事件を論じたもので、季村敏夫さんの新著『山上の蜘蛛』の核となるテーマでもある。まあ、その具体的な内容をここで簡単に書いてしまえるものではないので、本書なり『山上の蜘蛛』を読んでいただきたい。が、ここで引用されている特高資料というのがきわめて興味深い。小林武雄らが「神戸詩人クラブ」をつくってどのような活動をしたか、つぶさに調べ上げられている。むろん思想的な側面はほとんどでっちあげとしか思えないが、事実関係はかなり信用がおけるのである。
そのなかにマン・レイが登場する。
《そのほか、クラブの対大衆宣伝活動として、一つには、一九三七年四月三十日よりナイトショーの形式で午後十時から「映画無限社」とタイアップして新開地朝日館で、イギリスのゴーモン・ブリテッシュ映画「アラン」、フランスのマン・レイ映画「ひとで」同ジェルメーヌ・デュラック映画「貝殻と僧侶」を上映した》(「昭和十五年における社会運動の状況」資料、引用のまま)
つづいて君本は「神戸詩人クラブ」に加わっていて検挙された佃留雄の手紙を紹介している。そこにも「ひとで」上映のことが出ている。
《神戸詩人クラブを設立したのは、たしか、神戸に多くのリトル・マガジンがあって、それぞれの主義主張をもたないままに活動しているので、大同団結をする意味で作ったもので、小林武雄が後日発表したような意識的なものではなかった》
《たしか、昭和十二年の四月に光本[兼二、神戸新聞勤務]の骨折りで、大丸の写真部の人の紹介で「ひとで」、コクトオの「貝殻と坊主」(?)の前衛映画のナイトショウを挙行しました。》
「貝殻と僧侶 La coquille et la clergyman」(1927)はコクトーではなくてアントナン・アルトーの脚本、ジェルメーヌ・デュラック Germaine Dulac 監督による初のシュルレアリスム映画とされるもの。いずれにせよこの君本の論考は一読の価値がある。
ところでみずのわ出版より朗報あり。東京堂書店へ納品した『山上の蜘蛛』がいきなり売切れになった! ドッサリ補充してほしいと連絡が入ったという。daily-sumus の読者が買い占めたか?