昨日のこと。四条烏丸で昼食をとり、三密堂書店まで歩く。店が見えてくるこの感じが好きだ。例によって表の百円均一と店内の二百円均一をゆっくり点検する。表では高橋徹の詩集『生きものたち』(海風社、一九八五年、装幀=粟津謙太郎)。高橋徹氏といっても「月の輪書林高橋徹」ではない。朝日の学芸部におられた方。二〇〇七年に八十二歳で亡くなられている。詩人でもあった。
それからもう一冊、巻菱潭(1846-1886)の『三体千字文 草書之部』(文学社、一八八三年)。かなり傷んでいたが検印紙に惹かれて購入。この手本の文字を書いた巻菱潭は巻菱湖(1777-1842)の養子で菱湖の書風を守った。菱湖は人気の高い書家だったようだが、小生は将棋駒の書体として「菱湖」というのがあることしか知らない。この冒頭の部分、読めるかな?
いきなり最初の字が読めない。まあタイトルだから想像はつく。草だろう。草ときたら次は書しかないが、こんなふうに草するのだ。次の二行はオリジナル・テキストの作者について。
勅員外散騎侍郎周興嗣次韻
梁の武帝が王子たちに字を習わせたいがために王羲之の筆跡から重複しない一千字を選ばせて模本にさせた。しかしそれだけだと覚えにくいのでその選ばれた一千字を使って韻文を作れと周興嗣に命じたそうである(いろは歌と似ている)。周は一晩かかってなんとかパズルを組上げたが、そのため一夜にして白髪になったという。韋絢の『劉賓客嘉話録』にあるそうだ。「員外」は定員以外、「散騎侍郎」は官職名。「次韻」は韻を踏襲したということだが、この場合はどういう意味なのか?
版元の文学社は教科書出版などが中心。文字を学ぶのが「文学」だ、たしかに。
店内でも数冊買って、それなりに満足して帰宅。『みんなの古本2』の原稿を仕上げてしまう。メリーゴーランド京都の古本市の方も箱の用意だけはととのった、ふう。
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古本通の某氏よりメールあり。
《今日は小宮山のガレージセールで、湯川書房の伊藤海彦「午後の牧歌」の150部限定版を三冊百円で買いましたよ。味噌も糞も一緒の昨今ですが、キレイな本だし驚きです。他の二冊は塚本邦雄「薔薇色のゴリラ」、夏石・斉藤「現代俳句パノラマ」。となりにいた紳士がどれをさして言ったのか、その本が入っていたの、見つけ物だねと感心してました。》
さすが神田です。