
郡正光『新選筆算五千題巻一』(岸本栄七、一八八三年)。明治十六年刊の筆算の問題集。322の問題とその答を収録。筆算というのは江戸時代にはなかった。算盤(暗算)があれば日常の計算は事足りた。幕末になって導入されて、明治になると学校教育に取り入れられたため、こういった問題集がたくさん出ている。これは大阪の版元。
例えば問題の一例。明治十四年の人口が分かる。
《我国明治十四年度戸籍ノ調ヲ見ルニ人口男女合セテ三千六百七十万〇百十八人ニシテ内男一千八百五十九万八千九百九十八人ナリ然ラハ女幾人ナルヤ》
岸本栄七は安政二年(一八五五)京都生まれ、大阪の吉岡宝文軒で修業、西南戦争に際して『薩肥電信録』という速報絵入雑誌を発行して大当たりを取ったという。明治二十四年には吉岡平助、柳原喜兵衛、梅原亀七らと匿名組合盛文館を設立。後に単独経営とし、博文館など東京の書肆とも取引を拡げ、西日本最大の取次店となった。
ということで巻末には弘通書林(取扱い店)が列挙されているが、すべて大阪以西、土佐、伊予、阿波、摂津、播磨、備後、安芸、肥前、豊後、紀伊。ただし裏表紙に書かれた上野東町は三重県伊賀市になるようだ。