『蜘蛛』第六号(蜘蛛出版社、一九六三年一〇月一五日、表紙=中西勝)。現在編集中のある単行本の資料としてお借りした一冊。小島輝正訳のサルトルから、多田智満子、入沢康夫、飯島耕一、足立巻一、杉山平一、ゲイリー・スナイダーまで登場しており、神戸の同人雑誌とは思えない気魄が籠っている。ただし、いずこも同じ、台所は厳しかったようだ。「編集後記」にこうある。
《すでに一冊毎に一〇〇ページ平均の雑誌を五号出した。本号で六冊目である。約七〇〇ページになるわけである。一冊にいる費用が十万円平均、合計すれば七〇万円近い経費である。それを支える読者は、神戸では実数二〇〇人である。二〇〇人をかけて二〇〇円で四万円、不足は六万円となる》
ざっと四十万円を穴埋めしてきた。どうしてそこまでして雑誌を出すのか?
《理由は一つ、詩をのこしたい。さらに、詩人がなしうる仕事を十分にやっていきたい。しかも、神戸という地域社会で、本当に創造に価する世界を見出していきたい。ただそれだけのことである。「蜘蛛」の本音はそこにあった。》
ただそれだけ……といいながら、けっこう欲張っている。しかしその意志力がなければ雑誌などは続けられないだろう。執筆したのは君本昌久である。
いちばんビックリしたのはこの図版。伊藤誠「六人のサムライを斬る! 「蜘蛛」の表紙の画家たち」より鴨居玲の作品。シュルレアリスム風だが、後年の鴨居玲からするとひ弱い感じは否めない。初めから自画像の画家だったようだ。