林房雄『妻の青春』(創元社、一九五二年二月一〇日、装幀=三岸節子)、三岸節子の絵にひかれて購入。三岸の装幀本は何冊か紹介してきた。
石川達三『愛の嵐』
大鹿卓『三つの恋』
『本の手帖』3号
いちおう本文に目を通しておこうと開いてみたら、こういうことが書いてあった。
《僕達のは、小学校の唱歌にも日本風のメロディは殆んどなかったし、中学時代には教科書の古典といへば徒然草と平家物語くらゐなもので、万葉も源氏も知らず、専ら新潮社版エルテル叢書の飜訳小説ばかり読んでゐた。音楽といへば、モーツァルトにベートーフェン、絵といへばダヴィンチ・ミケランゼロに、ミレー・ルーベンス、セザンヌ・ゴッホ。芝居はイプセンとチェーホフで、思想はカントにマルクス、ビフテキにトンカツだった。学校を出て、サラリイマンともなれば、いやでも洋服を着て電車で通勤しなければならず、娯楽といへば、ジャズにダンスにアメリカ映画、芝居は歌舞伎よりも新劇とレヴュウ。放蕩の場所は待合よりも、酒場とカフェー。》
主人公の作家越智が青春時代を回顧した部分である。林房雄は明治三十六年(一九〇三)生まれだからちょうどこのまま当てはまる。他には標準語教育というのも入ってくるだろうし、キリスト教も考えに入れたいものだが、佐野繁次郎(一九〇〇)、淀野隆三(一九〇四)、小野松二(一九〇一)と小生が興味をもって調べている人達も、ほぼ同時期の生まれだから、同じような風潮のなかを育ったと言えよう。他にも瀧口修造が一九〇三年で植草甚一が少し遅れて一九〇八年生まれ。一九〇〇年ヒトケタ生まれは個性的な遊び人ばかりだ。
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田村七痴庵独演会はほぼ満席になったそうです。追加公演も近々予定とか。