桑島玄二詩集『工業の周辺』(蜘蛛出版社、一九六二年四月一日、表紙=貝原六一)。これが大阪古書会館の毎月の即売展に捨て値で出ていたというのだから、ビックリというべきか、嘆かわしいというべきか。小生にとっては有り難いことこの上ないが。Mさんが届けてくださった。深謝。
巻末に衣更着信の「詩人の風土」という一文が収められている。旧制中学時代の桑島の情熱についてこう書かれている。
《杉山平一などの詩人に劣らず、ボン書店鳥羽茂の名前がかれの当時の関心である。殊に、簡素ながら愛情に満ちた詩書の出版者である鳥羽の名前は少年の崇拝の的でさえある。少年は町にたった一軒の本屋兼文房具屋の「顔」になり、物資欠乏のためにもうほとんどからになっている古倉庫に入れてもらい、捜し出して来た羅紗紙をこれまた一軒きりしかない印刷屋に持ちこんで、手作りの小詩集を出すことに夢中になる。そして、これを自己流に、零細芸術と名づける。》
桑島、衣更着が小生と同郷ということは何度も書いてきた。「町にたった一軒の本屋兼文房具屋」というのもだいたい見当がつく。小生の中学時代(新制です)にもまだちゃんと営業していた。ボン書店が好きだったとは早熟な中学生だ。内堀さんは桑島にもコンタクトをとったようなことを以前おっしゃっていたが、そういうことだったのか。
で、本日は、この版元「蜘蛛出版社」の君本昌久を軸に神戸の詩人たちと詩誌の動向を追った季村敏夫氏の労作『山上の蜘蛛 神戸モダニズムと海港都市ノート』(みずのわ出版)の装幀をやっていた。気づいてみると黒と赤の二色を使っていた。おそらく来月中には刊行できるものと思う。神戸関係の詩誌を広く拾い上げた資料編には刮目だ。