Makino氏より早速「フランス装」の報告があった。上の写真も氏による。
《今日の宇部の古書店での収穫を二点報告します。まずは、¥250で買ったジャン・コクトオ(堀口大學訳)『白紙』(斎藤書店・昭和22年/昭和23年新装・定価90円)です。107mm×144mmの文庫版なのにフランス装というのは初めて見ました。》
これはいいものを見つけられました。第一書房版の文庫化ですね。斎藤書店も昭和二十一年から二十五年頃までの出版物があるが、戦後出版ブームに開いた可憐な花のひとつ。書目を眺めると、どうも第一書房と関係があったようだ……と思って検索してみたら、長谷川郁夫『美酒と革嚢 第一 書房・長谷川巳之吉』に
《伊藤禱一は戦後、八雲書店、斎藤書店を経て、第二書房を興した(「第二 著書と出版社」)。
八雲書店は、中絶したが、太宰治の最初の全集を計画したことで戦後文学史に名を残す出版社。(略)斎藤書店は斎藤春雄がはじめた新興出版社。斎藤は、十返肇編集の「新文化」を手伝った「新入社員」だった。》
とあるらしい(神保町オタオタ日記より孫引き)。
これにヒントを得て「フランス装」なんだからフランス文学の版元の本を探せばいいじゃないかと、今更ながらに思いついた。すると、あるある、白水社の戦前戦後の簡易表紙の本はたいてい「フランス装」。そしてこんな広告を見付けた。
パニョル『ファニー』(永戸俊雄訳、白水社、一九四一年五版)の巻末に「仏蘭西綴」と明示されている。これで探すメドが立った。
ついでに「フランス装」とは直接関係はないが、ジャケットとカバーの違いについて教えられる一文を引用しておこう。春山行夫『読書家の散歩』(現代教養文庫、一九五七年)から「ブック・ジャケット」の冒頭。
《本の表紙(cover)の上にかける外装紙のことをジャケットというが、わが国ではそれをカヴァーと呼んでいる。ジャケット(jacket)という場合にはスリップ・カヴァー(slip cover 覆いカヴァー)と呼んだ方がいい。本の外側に包紙(paper wrapper)をつけたのはイギリスが最初で、ロンドンの本屋が埃と霧のために立派な革表紙や絹の装幀が傷むのを防ぐために「埃よけ包紙」(dust wrapper)を使ったが、最初の間は今日のような表題を印刷したり、デザインを考えたりしたものでなく、ボール紙の「保護のための外装」(protective cover)だったり、時々は書店が店に並べた本の表紙を包んだ手製のカヴァーだったりした。当時はそれを「埃よけの包紙」(dust jacket)と呼んでいたので、その言葉がそのまま現在でも使われている。》