『姫路市立図書館報しろかげ』第8号(一九五八年三月一日)より「ブックモビールしろかげ号」。新しく自動車文庫が作られたという記事。トヨエース一九五七年型ライトバン。ボデーの色はグレーに赤にコバルト。三十人以上の団体で申込めば、三十冊以内の本を一ヶ月間貸し出す。毎月一回決まった日にその地域の小学校へ駐車し、団体の管理者から借りる、というシステムだそうだ。借りたい本は管理者に知らせておく。
自動車文庫、移動図書館はイギリスで始まったらしいが、直接のお手本は
アメリカのメリーランドで一九〇五年にワシントン・カウンティの無料図書館の最初の司書メアリー・ティットコム(Mary Titcomb)が始めたブック・ワゴンだそうだ。荷台に本を積めるように改造した二頭立ての馬車だった。写真は下記サイトに。
Bookmobile History
http://homepages.nyu.edu/~mg128/History.htm
日本では戦後すぐに導入され始めている。ウィキによれば、昭和二十三年に高知県立図書館、鹿児島県立図書館が導入し(下記註参照)、翌年、千葉県立図書館が「ひかり号」を運行して一躍知名度が上がったそうだ。京都市立図書館は昭和二十六年に「青い鳥号」(昭和三十九年から「こじか号」に)、京都府立は昭和四十一年から「あゆみ号」を、大阪市立は昭和四十二年から「まちかど号」を稼働している。東京都は昭和二十八年に「むらさき号」を導入したが区部での運用は二〇〇五年に終了した。
なんだか当たり障りのない車名ばかりかと思えば、最近は、長岡市立図書館の「米百俵号」(元「ながおか号」)、富山市立図書館の「よまんまいかー号」(カーが洒落になってるのかな)などもあり、讃岐の高松市立図書館は「ララ号」である。ランニング・ライブラリーの略ですと!
[註]書物蔵「日本で最初の「配本車」についての、日本で最初のエントリ」に異説の紹介あり。
http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20090803
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Mさんより、すばらしい収穫のメールあり。
《今日はちょっと珍しい(私には)本に出会いました。場所は北大阪急行の某駅の近くです。店頭の文庫台にいやに小さな本が積み上がっているのでとりあげてみたら、小山書店が1955年に出したポケット・ブック・コレクションでした。サイズは丁度文庫の半分。一葉、藤村、鴎外、漱石等まず読むことはないでしょうが余りに可愛いので全部いただきました。9冊。それから店内2階の100円台から『ある客間での物語』宇野千代昭和16年スタイル社カバー欠? 裏見返しのレッテルは「第三書店」(大阪市北区梅田町二)、それから古そうな雑誌を抜きだしたら『薹大文學』編集兼発行人薹大文學会(薹北市富田町薹北帝国大學内)右代表者矢野禾積となっています。矢野禾積は矢野峰人でしょうが、昭和19年11月号には矢野の「アーノルドの英文學観(一)」とか「西鶴雑話二」瀧田貞治等が収録されています。この時期に国内ではとてもこんな雑誌は出せなかったのではないかと。雨に降られたりきつい日光にあたったりとくたびれましたが、満足です。》
台湾帝国大学の雑誌ですか! まったく知りませんでした。検索してみると、矢野は『文芸台湾』『台湾文学』などにも関係していたようですねえ。いやいや、参りました。