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輪_b0081843_201072.jpg


『輪』54(輪の会、一九八二年六月一日、表紙画=貝原六一)、「追悼竹中郁」を藤本義一、海尻巌が書いている。藤本義一(作家の藤本義一とは別人)の回想に古本屋が出て来る。藤本は編集者、サントリー宣伝部を経て洋酒研究家となったが、当時は古本屋をやっていたという。昭和二十一年。

《その頃、私は楠町六丁目交叉点から十軒ばかり山手へ上がったところにバラック建ての古本屋を開いた。十九才の店主である。一九四三年十月満十六歳才で陸軍航空通信短期学生として親もとを離れるまでに私が所蔵していた本だけで、とにかく店が開けた。しかしハタチまえの少年が読んでいた本だけで商売が成り立つはずがない。当時、大人たちがいかに活字に飢えていたからといって、客にまた来てもらうためには、違った本を並べる必要がある。古書籍商組合にも入れてもらえたが、玄人さんにまじっての落札はむつかしかった。そんなある日、先生は「藤本くん、京都の古本屋を回って、値打ちのあるのを抜き買いしてこよう」といわれた。先生はときおりこの本屋へ立ち寄ってくださったので、これではいけないと思われたのであろう。約束の日、二人して国電で京都へいき、四条から上(かみ)へ随分多くの店をのぞいて、先生のおっしゃる本を相当量買った。そのたびに風呂敷包みは重くなる。ふたりがそれぞれ両手にズッシリと本をぶら下げて、最後に京都駅前の喫茶店でひと休みしたとき、先生は言われた。
「きみとはこれからずっと付き合っていくのだから、無理をしては長続きしない。今日いままでに使ったお金を計算しなさい。割り勘にしよう」ーー実は家をでるとき、母に言い含められていた。「お前のためにこんなことまでしてくださるのだから、お昼もちゃん[3字傍点]としたものを食べるんだよ。そして、みんなお前が払うんだよ」ーーだから私はその通りしたのだが、先生は交通費も含めてすべてを書き出させ、その半分を出されたのである。こんなありがたい先生って、あるものだろうか。》

竹中は一九〇四年生まれだから、四十二歳だったことになる。昭和二十三年から藤本は竹中の世話で尾崎書房に勤める。児童雑誌『きりん』を発行していた版元である。井上靖もいた。『きりん』へ届いた子供たちの年賀状に竹中は一枚一枚手書きの絵を入れて返事を書いていたそうだ。竹中からの封書はいつもよそから来た封筒を裏返して手作りの再生品だった(これは寺島珠雄さんもそうだったし、現在も年配の方の封筒にときおり見られる。小生は裏返しはせず宛名紙を貼付けて再利用するが)。『輪』に載っている晩年の竹中郁。

輪_b0081843_20412662.jpg


この『輪』は二十冊ほどを某氏よりお借りしたもの。桑島玄二の記事をコピーさせてもらうのが目的である。ただ、ずっと読んでいると、伊勢田史郎氏の回想記がたいそう面白く、それは高橋輝次『古書往来』(みずのわ出版、二〇〇九年)でもかなり詳しく触れられているが、神戸には「ロマン書房」「火の鳥書房」「クラルテ書房」など詩人たちがやっていたにわか古書店が多かったことが分かる(神戸に限らないだろうが)。『輪』は一九五五年五月に創刊、二〇〇六年七月に百号で終刊した。ということはまだ八十冊あるわけだ……。カナブンにはかなり揃っている。兵庫県立図書館にもある(ただし不揃い)。

÷

今朝、階段の壁に掛けていた有元利夫のポスターが落下した。もう随分前から同じ紐だったので古くなって切れたようだった。針金に交換して玄関の壁面に掛けかえた。

すると正午前に座敷の蛍光灯が落下した。これは笠を掃除しようとして力がかかったためカチットの部分が割れて落ちたのだった。割れた蛍光灯の破片が散乱した。すぐに一番安いのを買ってきて付け替えた。

二度あることは三度あるか? まだ何も落ちてはいないが、多少心配だ。
by sumus_co | 2009-07-13 20:40 | うどん県あれこれ
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