『文濠』創刊号(法政大学内文芸学会、一九四一年七月五日)、編輯兼発行人は近藤忠義。表紙は川口雄男。法政大学文学部の学生、校友会、教員を横断した雑誌を目指すことが後記に書かれている。記事としては岩佐東一郎「二つの態度」、野上豊一郎「『アンティゴネー』ソルボンヌ大学の学生劇」、川口敏男「詩壇時評」などが読める。しかし、やはり「法政文学部史」(編輯部)が法政事件にも触れておりもっとも興味深い内容であろう。この事件について詳述された江川英明氏の「百鬼園の独逸語」をかつて紹介したことがあるので参照されたい。
http://sumus.exblog.jp/9491142
個人的には喫茶店などの広告(麹町区富士見に大学があったので神楽坂近辺の店が多い)は有り難い情報だ。
・名曲茶苑/春日/自由ケ丘前
・第一/珈琲店/神楽坂
・神楽坂写場
・吾妻鮨/自由ケ丘駅前
・純喫茶/牛込館トナリ/松月
・古書新書一般/小川書店/神楽坂通り中程
・中華料理/杏花/神楽坂上毘沙門前
・志乃富寿司/神楽坂支店
・紙/相馬屋/文具一般/牛込区肴町五
・テイー・ルーム/神楽坂/紅谷
・茶荘/池田園茶舗/浅草門跡前(表紙3)
・永藤のランチルーム(表紙4)
これ以外に表2に雑誌『世代』(世代社)、そして文芸汎論社の広告が掲載されている。前者は野上豊一郎ら、後者は岩佐東一郎の関係。
この小川書店は麻布古川橋の小川書店(麻布区新堀町11)の支店である。住所は牛込区神楽坂町2ノ12(『古本年鑑1935』古典社より)。小川書店については「神保町系オタオタ日記」参照。
http://d.hatena.ne.jp/jyunku/20070425
検索してみると、編輯人の近藤忠義は国文学者、法政大学で長く教鞭を執った。妻の近藤宮子は藤村作の娘で唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』などの作詞をしている。