高橋昭八郎『ペ/ージ論』(思潮社、二〇〇九年、装幀=著者)。『gui』でおなじみの高橋氏のヴィジュアル・ポエトリー。詩集といえども、たいていの詩集は読めばそれなりに意味が分かる。分かる分からないというのはこちらの勝手だから、表現しようとしていることが伝わってくる、とでも言い換えてもいいだろう。むろんまったく意味不明の詩もあって、それはそういう拒絶のスタイルでもあるわけだが、高橋氏のこの詩集に収められている作品は、意味が伝わってきそうで、こない。痒いところに手がとどかないような不思議な作風である。とても饒舌なのだが、何をしゃべっているのか聞き取れない、聞き取れるけど脳のなかを素通りする、そんなじれったさが、逆に快感かもしれない。
「あるか/のダブルだれ」から後半部分。
おしゃべりの 中黒 エリプシス …
ピリオド コンマ でもある
カンマ コロン
セミコロン
ひっかけ 太かぎ 二重かぎ
同じくチョンチョン
だから だからと
失礼しまぁすで
ヨーグルトドリンクで
まりちゃん見せて ちょっと ハイ帽子かぶって
はやく ほら いけないよで
ぐるぐる太まる 二重 三重まる
黒まる 蛇の目 どっとっと
ブルケイの見えない
空から
雨だれ だぁ
雨だれ だぁ が
二つ雨だれになり
あるかのうるんだ目ぬらし
荒鹿
で あるか
否か
の耳だれになり
ポパポパポーッと ぱぁーっと
鳴いているか あるか
の斜め二つ耳だれになって
彫像のように
ダブルだれになって
印刷用語で約物(やくもの)と呼ばれる記号活字の呼び名をモチーフにしていることはちょっと印刷をかじっていればすぐ分かる。ただ、そのファンタジーを共有するのは難しいし、共有する必要もない。ちなみに「中黒」は「・」、「エリプシス」は三点がベースラインに並んでいる記号。「ブルケイ」は波罫のこと。「雨だれ」は「!」、「耳だれ」は「?」。ひょっとしてかなりエロティックな描写かな?
そしてこんな視覚詩もある。
「々」ばかりで成り立っている。「々」は「同の字点」あるいは「おどり字」と呼ばれる。もしこの詩をピッポさんが朗読するとなったら「同の字点、アキ、同の字点、同の字点、アキ、同の字点、同の字点、同の字点、アキ……」なんて読むのだろうか、読むわけないか。