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林蘊蓄斎の文画な日々
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恭賀新春

恭賀新春_b0081843_1941472.jpg


政田岑生の年賀状を六枚ほど頂戴した。一九八二年から九二年にかけて。住所はすべて高槻市。四枚は年賀はがきに活版刷り。二枚は上質紙に活版刷りである(封筒に入っていたものか?)。構成はほとんど同じで、一枚だけ明朝体(八三年)、他は上のような太ゴチック。「和漢朗詠集」「懐風藻」「鳥追歌」「梁塵秘抄」から詩歌を引用している。宛名書きはブルーのインク(太目の万年筆?)が三枚、ボールペンが一枚(九二年)。

やはり性格が現れるというか、すっきりした感じは装幀とまったく同じである。

÷

数日前から森見登美彦「聖なる怠け者の冒険」が朝日夕刊で始まった。画はフジモトマサル。京都が舞台なのだが、いきなりイノダコーヒーが登場する。冒頭の三行目から。

《京都の街に怪人が現れた。
 朝のイノダコーヒーでは地元商店主たちが怪人の噂を囁き合い、[略]》

いや、いきなりのこの描写はなかなかだ。「商店主たち」かどうかはともかく、イノダコーヒー本店には入るとすぐに大きめの円卓があり、現代の町衆たちが毎朝そこの席を占めることになっているのは事実である。また、この間の植草甚一『ぼくのニューヨーク案内』を読んでいると、ここにもイノダコーヒーが登場していた。植草の奥さんは京の人だったからだろうか、京都がちょいちょい現れる。

植草はニューヨークで「噛みつく(バイト)」というタイトルのレストランガイドを読んで感心する。その本は一流レストランに噛みついて忌憚のない意見を述べているそうだ。ヒッチコックが通った「パピヨン」というフレンチの味が落ちたことが例として引かれている。

さらに植草は自分自身の体験として、京都は祇園の「壺阪」のカニ・コロッケを挙げている。週刊文春のアンケートで二人が推薦していた(植草文の初出は一九七四年)。

《一年ほどまえに食べにいった。そうしたらマズイと言うよりもアジがないと言ったほうがいいだろう。折詰めになった肉の佃煮を買って帰ったが、これは煮なおさなければ食べられなかった。つまり場所がらだけあって舞妓さん向きのアジだったわけだが、最初は二人の女性すいせん者の賞味力をうたぐったほどだった。》

普通なら店名は伏せるところだが、伏せないところにバイトの面白味があるわけだ。臼井喜之介『新編京都味覚散歩』(白川書院、一九七〇年八月一日)によれば「つぼさか」は花見小路四条上ル一筋目東入にあり、主人は神戸元町のレストラン「日の出」で修業した後、昭和二十二年に開業した。

《本場仕込みの腕はたちまち祇園にひろまり、「洋食やったらつぼさかハン」と、舞妓や芸妓たちに評判になった。》《安藤鶴夫氏がここの主人と同年とかで、京都へ来ると寄るらしい。いつか「太陽」でここの記事を書いているが、コックの作ったものを客に出す前に、主人はさりげなく目の前において点検してから出すとか、喋りながら三皿ぐらいは食べてしまえるとか、安鶴先生もさりげなくほめ言葉を記していた。》

安鶴先生は浅草生れ、植草は日本橋生れだ。江戸っ子でも真向から意見が対立する。舞妓や芸妓たちが京都出身とは限らないので彼女らの好みだから味がどうこうとは一概には言えないと思う。ちなみに「つぼさか」は閉店しているが、ネット上にこんな解説があったので参考までに。

http://r.tabelog.com/kyoto/A2603/A260301/26001870/dtlrvwlst/561956/

そして植草の話は新宿三越裏の「ヴェスタ」というコーヒー専門店へと移る。初めは東京で一番おいしい一軒で値段も安かったが、人気が出るとともにマズく、そして高くなっていったという。

《ついこないだ「ヴェスタ」のまえを通つたので、どうなっているかと思ってはいってみると「本日のサービス」が二七〇円なのでビックリした。こんなに高いコーヒーは普通の店にはない。そのうえコップにはいった量がすくなかった。そんなことからいま京都のイノダ・コーヒーを思い出している。
 昨年行ったとき値段が上がったなと思ったがアジにはまったく変りはなかった。いまでもおんなじことだろう。》

コーヒーの値段について、一九七四年より以前、六九年が100円、七三年で130〜150円である(『値段の風俗史』朝日文庫、一九八八年二刷)。オイルショックのせいか、七四年に180〜200円となり、翌年はさらに230〜250円へと急騰した。それにしても二七〇円はたしかに高かったろう。ちょっと検索したかぎりでは新宿にはもう「ヴェスタ」はないようだが(あったら教えてください)、他所には同じ名前のコーヒー店が残っている。
by sumus_co | 2009-06-11 21:25 | 京のお茶漬け
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