『本の宇宙 詩想をはこぶ容器』(栃木県立美術館、一九九二年、デザイン=桑畑吉伸)という図録より。湯川書房の本が何冊か出ている。柄澤齊、岡田露愁、望月通陽らの特装本である。上の図は『容器』の1〜3(一九八四〜六年)。柄澤齊、北川健次、高柳誠、時里二郎の四人による詩画集。
この『容器』三冊、たしか姫路の大西隆志さんのところで見せてもらったことがある。凄いなあと思った。思ったが、正直、どこか趣味悪いなあとも感じた。当時、小生が、キョーレツに「欲しい!」と感じていたのは、某古書店で手にとった吉岡実の『静物』だった。吉岡実書誌によれば、一九五五年発行の私家版、ほぼ四六判の並製で七十四頁というささやかな本である。表紙もちょっと黄ばんだようなありふれた紙(函があるそうだが、記憶にない)、真ん中にスミ刷の卵の絵(真鍋博らしい)と「静物」という赤い活字だけ、そのシンプルさにシビレていた。だからこそ柄澤ごのみのゴージャスについて行けなかったのだ。しかし『静物』と対になって『容器』が脳裏に刻み付けられたこともまた事実。今は、いずれこういう贅沢な本を作ってみたいと思っている。
これは古書現世の目録85号から買った図録だが、例の「店番日記」にこう書いてあった。
《5月某日[略]早稲田正門前での青空古本掘り出し市です。ついに新型インフルエンザが東京上陸とのニュース。なんだよ、大学閉鎖とかになったらどうなんだよ、などと思いつつ会場へ。マスクしている人もまったくいないし、いつも通り。古本屋も元気すぎてうるさいぐらい。「古本の埃を吸ってるやつがかかるわけないだろうよ」。そうなんですか!》
なるほどワクチンは「ふるほんのほこり」ですな。そして現世若頭からこんなメールも。
《実はこのあいだの古本市前にインフルエンザにかかった人がいたのですが、医者にいったら「こんな古いウイルスまだあるんだな」と冗談まじりに言われたとか。新型には無縁のようです。》
お後がよろしいようで。