湯川さんが大きな影響を受けたというマラルメの『半獣神の午後』初版がいかなるものか、探してみた。湯川さんがどこで鈴木信太郎の文章を読んだのか。断定はできないけれども、上の『本の手帖』創刊号(昭森社、一九六一年三月一日)の「フランス特集」ではないかと思う。この巻頭に鈴木信太郎が「エディシオン・オリジナルといふ事」を寄稿している。
そこで鈴木はエディシオン・オリジナル(édition originale)の意味を説いて、単なる「初版」ということではなく《「著者の生前の」或は「著者の校閲してゐる」といふ内容を含んでゐる》と述べ、飜訳にはその意味で原典によって校合すべきであるとしている。
そして上のような図版が付されているわけだが、この貧弱な図版がかえって『半獣神の午後』初版のイメージにふくらみを与えているような気がするから不思議だ。湯川さんも想像をたくましくしてユイスマンスの『さかさまに』(鈴木訳)に描かれる『半獣神の午後』初版本の描写を読んだのかもしれない。下にネットで探した初版の扉を掲げる。『本の手帖』の図版では「3」に該当する。これはじつに美本だが、あまりすっきりしすぎていて妄想を刺激する感じがない。

Verlaine, Rimbaud, Mallarmé: une collection privée - Choix de reproductions
http://www.ville-ge.ch/bge/presse/2009-03-verlaine-rimbaud-mallarme/images.pdf
また鈴木信太郎旧蔵書は獨協大学に寄贈され(子息の鈴木道彦氏は同大学の名誉教授)、「鈴木信太郎文庫」として所蔵されているが、そこに《「半獣神の午後」L'apres-midi d'un faune 初版、1876年(マラルメ作、マネ画)》も含まれている。
獨協大学貴重書コレクション
http://www.dokkyo.ac.jp/library/shiryo/shiryo.htm
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高橋輝次『古書往来』が東京堂書店の今週のベストテン4位に入った。定価が少々高かったので心配していたのだが、出足は好調のようだ。慶賀。今週は珍しく上位に高めの本が並んでいる。6月14日に海文堂書店でトークショーが開催される予定。古本市もやるようだから、ぜひともお運びを。