区内の郵便局の本局へ用があって出向いた。窓口の横で老人が担当者をつかまえて苦情を述べ立てている。べつに聞くつもりもなかったが、大声でなじっているので、しぜんと耳に入ってきた。なにやら、ご当人は家にいたのに、不在配達表が郵便受けに入っていたらしい。
「これから老人がどんどんふえてゆくのにやで、こんなことでは困るやろ、ちゃんとしてもらわんと」
まあ、たしかに一二度チャイムを鳴らしたくらいでは、耳が遠いと、聞こえないこともあろうし、聞こえたとしも、戸口に向うまでにひまがいる。配達員もそのあたりの見極めが難しいだろう。苦情を受付ている係のおじさんはひたすら「ごもっとも」で通していたが、少々気の毒になった。
ついでに近くの古本屋をのぞくと、堀口大学訳のルパン傑作集(新潮文庫)が五冊ほど積み上げてあった。経年のため天が少し汚れているが、オビとグラシンが付いていた。瀧口修造訳『芸術の意味』(みすず・ぶっくす、一九五九年)も合わせて捕獲した。3冊200円。
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一週間ほど春休みとさせていただきます。