久しぶりに上京する。雪の富士山が青空にくっきりと浮かび上がって目が覚めるようだった。JRで浅草橋まで。ここで地下鉄に乗り換え(上は乗り換えの途中、地下鉄入口からJRガード方面)、一駅、蔵前下車。降りてすぐの筑摩書房へ。黒御影石(?)の外壁が渋く、真新しいビル。
受付で『ちくま』編集長のAさんを呼んでもらって待つ間にロビーに展示された筑摩の刊行物を眺める。『宮沢賢治全集』がついに完結したらしい。Aさんに今年の表紙画、残り全部を渡す。
二月号の讃州堂書店の絵については何件か問い合わせがあったそうだ。あの電車は実在するのですか、どこの線ですか? など。実在します。
琴平電気鉄道の志度線です。
地下鉄を乗り継いで神保町へ。田村書店の百円箱を独り占め状態で掘り起こす。仏独のペーパーバックが多かった。あとは文庫本と海外の古書目録。リーブル・ド・ポッシュのコクトー『オペラ』、ロブ・グリエ『ヌーヴォ・ロマンについて』、サロート『プラネタリウム』を。そして福永武彦『ボオドレエルの世界』(矢代書店、一九四八年再、装幀=桜井康)を見つけて喜ぶ。
他店も表の台だけ流して、東京堂書店の三階へ。畠中さんに挨拶。元気そうでなにより。アクセスの閉鎖空間は特別だったけれども、ここの小出版社コーナーもかなり頑張っていると思う。目移りして困った。ギャラリー・オキュルス発行の『W.W.W. 長すぎた男・短すぎた男・知りすぎた男』(二〇〇八年)を買う。渡辺啓助、温、済の兄弟についての資料集。次に神保町古書モールへ移動。ここで二冊ほど。外に出るとすでに黄昏れていた。ラドリオとミロンガのある路地は絵になる。
キッチン南海でカツカレー。初めて来たというおじさんが、感極まって「うまかったよ〜、また来るわ」。たしかにちょっと独特なカレーである。