安藤鶴夫『ある日、その人』(婦人画報社、一九六二年、装幀=佐野繁次郎)の表紙。佐野集成No.249(こちらの図版は函)。先日、汎芽舎で安鶴を買った次の日に届いた本で、まさに本が本を呼ぶ、のを感じた。挿絵もこの前に紹介したばかりの宮田重雄である。東京新聞連載をまとめたもの。古本では珍しくないが、死亡記事が奥付のところに貼付けられている。あんがいと参考になる。
父は八代目竹本都太夫(表記はママ、最近は何代目と言わずに何世ということが多い、太夫と大夫もまぎらわしい)。《法大仏文科卒業後、都新聞(東京新聞)などで演劇・演芸を担当。のち批評活動に入り》云々。新聞社に勤める前に印刷所の精興社にもしばらくいたことが『ごぶ・ゆるね』に書いてあった。
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府中美術館にある佐野繁次郎の油彩画「少年」。河野保雄『少年が夢みたもの』(芸術現代社、二〇〇三年)より。先に
『美のおもちゃ箱』(芸術現代社、二〇〇九年)を紹介したことがあるが、これは河野氏の自伝的な要素の強いエッセイ集。コレクションという「業」が感じられる内容だ。佐野の「少年」は佐野集成の95頁、銀座百点の表紙画に見られる、少年シリーズの一枚であろう。