『記憶表現論』(昭和堂、二〇〇九年、造本・装幀=間村俊一)。
[序] 記憶のアクチュアリティへ・・・・・・・・・笠原一人
[映画]記憶のエコノミーに抗して・・・・・・・・・細見和之
[文学]エチカ、地上の声・・・・・・・・・・・・・季村敏夫
[音楽]コール&レスポンス、あるいは友愛の記憶・・港 大尋
[写真]受動としての写真・・・・・・・・・・・・・宮本隆司
[美術]戦争が終わって転々とするものについて・・・木下直之
[展示]空間の中の時間・・・・・・・・・・・・・・寺田匡宏
[都市]環境ノイズエレメント・・・・・・・・・・・宮本佳明
[建築]メモリアルを超えて・・・・・・・・・・・・笠原一人
記憶表現論とは、要するに、表現について考察するということである。いくつかのジャンルに分けて気鋭の書き手たちが、互いに共鳴しながら、それぞれの興味のありどころを深く掘り下げており、読み応えのある論集となっている。
個人的には木下直之氏が、まず防衛庁が防衛省に昇格した折りの、六本木から市ケ谷台への移転から説き起こして(《信じ難いほど巨大な庁舎が用意された》!)、遊就館(旧陸軍)と教育参考館(旧海軍)に触れつつ、トレンチアートにたどりつく、というかトレンチアート展を提唱する流れに興味を引かれた。トレンチアートはトレンチコートの、まあ、親戚といっていいだろう、トレンチ(塹壕)で兵士たちが産み出したオブジェのことである。遺影や遺言ばかり展示しないで、そういうトレンチアートに目を向けよ、ということらしい。
《われわれが「美術」と呼んでいるものの大半は、死と向き合う時間の中から生まれた造型表現にほかならない》
この木下氏の指摘には大きく頷く。
昭和堂学術ネット