『遊心』5号(
古書ダックビル、二〇〇九年二月四日)を頂戴した。今回の巻頭エッセイは磯部孟生氏の「本の虫」。紙魚(衣魚、蠹魚)についての考察。シミが本を食い荒らすのではなく、フルホンシバンムシが犯人であること、その名前の東西の由来などを述べておられる。
ちなみに本などの害虫について実際的かつ写真も多くて参考になるのは『文化財害虫事典』(クバプロ、二〇〇四年)。
文化財虫害研究所という団体もある。
ということで、このところ安い和本ばかり買っているため、虫食いには悩まされている、というか、そのおかげで古い本が手に入る。もちろん、ほんの参考程度にしかならないが、ガラス越しに見たり、写真版で見たりするよりも、実物に手で触ることは大切だ。
その一例、見るも無惨な饗庭篁村(あえば・こうそん)の『勝鬨』(和田篤太郎、一八九〇年)。篁村二十五歳の作。このころがいちばん油の乗っていた時期のようだ。口絵は月岡芳年。芳年はこのとき五十一歳で二年後には歿する。若手人気作家に大御所のイラストを添えた、という感じだろうか。和田篤太郎は春陽堂主。
《前山冥々雲開かんと欲するも後山陰々猶を雷を聞く風雨時なく晴れ曇り常ならぬ世の有様や。》
とまあこんな書き出しである。表紙も本文もすべて木版刷り。赤い練糸で平綴じにしてある。キレイな本なら万円だろうが、ボロボロのこれは100円。