『洪水』第七冊(書肆季節社、一九六〇年七月二五日)。表紙は小崎靖子、デッサンは織田博之。第六冊が一九五九年十一月だから、七冊までにかなり間があいた。最初はクォータリーとしていたものの、同人雑誌で季刊は難しかろう。誌名もこの奥付では『詩と批評 洪水』となっているし、タイトルの字体も変わった。評論やエッセイはなく、詩とデッサンのみ。鶴岡善久、戎栄一、大塚啓也、中村匡行、政田岑生、増田尚雄、永山哲見。『洪水』や当時の広島の同人雑誌の動向などがもっと知りたいものだ。
÷
アンドリュー・ワイエスが死去した。九十一歳だったという。忘れもしないが一九七四年に竹橋の近代美術館でワイエス展を初めて見て、はっきり言って、それまでの絵画観をくつがえされたと思った。武蔵美に入った年でもあり、シュールレアリスム展も強く印象に残っているが、やはりワイエスは特別だった。
けっしてテクニシャンというのではない、どちらかと言えば、不器用なタッチである。父親のN.C.ワイエス(福音館書店『アーサー王と円卓の騎士』の挿絵が馴染み深い)の方がよほど流暢な筆使いだ。アンドリューの執拗で綿密なタッチには、どうも父と反対の方向へ進もうとしている様子がうかがえる。テンペラのドライ・ブラッシュ(筆の水気を切って描く)というのは、やっかいな技法で、わざわざそれを選んだという理由もそのあたりにあるのかもしれない。筆が走らないように、である。
Andrew Wyeth, 1917-2009
An Unmistakable Figure on the Barren Landscape(肖像をクリックするとワイエス作品がいくつか見られます)