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昏睡季節(ふたたび)

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『初版本』終刊号(人魚書房、二〇〇八年十二月三十一日)に掲載されている大地達彦「詩集を掘り出す」というインタビューに『昏睡季節』が登場していた。この詩集については以前も(http://sumus.exblog.jp/7446903他)何度か触れてきたが、この記事には驚かされた。

《大地 小さな当たりはいろいろありますが、大当たりとなると、十年くらい前に島根の古本屋で見つけた吉岡實の『昏睡季節』(昭和十五年、草蝉舎)ですね。この本です。
編集部 最初から凄い本が出てきましたね。しかも見事な極美本だ。裏にレッテルが切らずに残っている。「百部限定一万三千円」。『昏睡季節』が一万三千円!》

さらに「用紙は友情の餞け/編むは出征の感激」と題された当時の新聞記事切抜きが挟まれているというのも珍しい。他の詩集もすべてウルトラ級の掘り出しばかり。しかもここ数年間、地方の古書店でというから、なんともかんとも……。

÷

昏睡季節(ふたたび)_b0081843_20223018.jpg


『VIKING』696号(VIKING CLUB、二〇〇八年十二月三〇日)、中尾務氏の連載「VIKING(九)」に「らんぼお」が登場している。富士正晴が「VIKING号航海記6」で、上京したときに『近代文学』の編集者の前で、『VIKING』と『近代文学』と「どっちが後までつづくと思いますか」と問われて、「それはVIKINGやね」と答えたという逸話を検証しているが、その場所が神田の「らんぼお」だったというのである。

これについて中尾氏は当時その場にいた中田耕治に手紙を書いて問い合わせた。その返答によれば、場所は「らんぼお」ではなく「ラドリオ」だった。

《「ラドリオ」の〈細長いテーブル〉の右に原通夫、平田次三郎、本多秋五、佐々木基一、埴谷雄高、荒正人、山室静、左に安部公房、中田耕治、富士正晴、野間宏、中村真一郎、椎名麟三と並んでいるところで、原通夫の発言があり、〈富士さんが「それはVIKINGやね」と答えたことは、よくおぼえています〉とのことであった》

年月日については、一九四八年か九年というところを、中尾氏は富士のメモより一九四九年一〇月二五日と特定している。手帳にはこう書かれているそうだ。

《ランボオ(午后三時)スルガ台下/コレ以後1時スギ/佐々木、本田。/山室》

そこで小生の『喫茶店の時代』から「らんぼお」の閉店時期が昭和二十四年四月頃という引用が挟まれている。この時期については『森谷均追悼集』(森谷均はらんぼおの店主、出版社・昭森社の社主)の年譜を根拠にしたものである。

ただこれについては異論がないわけではない。「神保町系オタオタ日記」によれば、《昭和24年6月9日消印の埴谷雄高の野間宏宛書簡に「ランボオ」が出てくる》し、《草野心平全集第12巻所収の年譜の昭和24年10月の欄に、「「歴程詩の会」(神田・らんぼお)を開催》という記載があるらしい。

そして、富士の手帳が第三の証言となってくると、いずれもラドリオとの混同だと簡単にすませていいものかどうか。もう少し決定的な証言が欲しいのだが……。
by sumus_co | 2008-12-29 20:28 | 喫茶店の時代
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