コクトー『白紙(Carte Blanche)』(Editions de La Sirène, 1920)。ヴィーニュ書店での買物。一九一九年『パリ・ミディ』紙に連載したコラムを単行本としたもの。後年、ストック、ガリマールからも再刊されている。
Editions de La Sirène(人魚書房)は一九一八年にコクトー、ブレーズ・サンドラール、ジャック・ラフィットらが設立した版元。ごく単純に考えれば、コクトーがレイモン・ラディゲと出会い(一九一八年)そして別れる(一九二三年歿)までの間に主な活動をした出版社である。
今回これがもっとも高額な買物だったので、参考まで。パリ古本日記はこんなところで終了(『spin』05に加筆掲載の予定です)。パリ生活の細部については下記ブログを参照されたし。
Madame100gの不敵な冒険
予算がもっとあればもっと楽しめただろう。けれども、ないものはどうしようもない。それなりに楽しむしかなかったが、予想以上に楽しめた。下調べは大事だと思う。ただし調べようもなかったジョルジュ・ブラッサンス公園の古本市がとても意外性に富んでいた。結果として荷物になるという不安が常に歯止めとなって二十二冊しか買えなかった。ある意味、これでちょうど良かったのかもしれない。リストアップしていた店でいくつかあきらめたところもある。次回を期したい(いつだろう……)。
いちばん印象に残った古書店は、サンジェルマン・デ・プレのゴズラン通り(3, Rue Gozlin)にあるポール・ジャム書店(
Librairie Paul Jammes)だ。印象に残るといっても買物をしたわけではない。ただ通りすがりで観察しただけ。サンジェルマン大通りから一本南側で、最初のステュディオからメトロのマビヨン駅への行き帰りに前を通る。
けっこう広い店舗で正面は扉と飾り窓、左右の壁が書棚、正面奥の壁には絵画が展示され、その横に木製の印刷機が置かれている(古い印刷について専門としているらしい)。手前に瀟酒なテーブルと椅子。卓上灯。ここで顧客は注文した本をゆっくりと点検することができる。なんとも優雅な空間である。
まあ古本屋というより古美術商の雰囲気。「あれ、あるかな?」と注文すれば、白手袋でうやうやしく奥から持参してくれるのかもしれない。べつにこういう店で買物をしたいというわけではないが、古本屋の形として新鮮だった。