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世界探偵小説全集 ドイル集

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装幀という見地から今年手に入れた本でいちばん気になったのがこれ、『世界探偵小説全集7 ドイル集』(延原謙訳、博文館、一九二九年六月一八日)。とりたてて珍しいということもないようだが、探偵ものにはさほど興味がなかったためこれまで知らないでいた。とにかく百円だったのが何よりうれしい。

昭和四年だから紙ジャケットや函もあったのかもしれない。今、簡単に図像検索してみても、引っかかったのは同じような裸本の写真ばかり。乞御教示。文庫本のサイズ、漆黒の地券表紙(セミハードカバー)は布装である。朱で押した文字やケイの配置がピッタリ決まる。もともと黒い本が好きなのだが、これはとくにかっこいいと思った(下にある赤い表紙の本は昨日の『藤田嗣治と愛書都市パリ』図録です)。

また来年もシビレルような古本に出会えればと願いつつ。歳末の一首。

 遠樹沈沈日已闌
 嬌鴉聲裡海雲攅
 不知成雨将成雪
 且喜城中減暮寒

文化十一年(一八一四)十一月に菅茶山が江戸で詠んだ七絶より。この翌朝、江戸は一面の銀世界になったという。「不知成雨将成雪」はまさに「雨は夜更け過ぎに雪へと変るだろう、あああ〜ん」というおもむき。

みなさまよき新年をお迎え下さい。
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by sumus_co | 2012-12-31 21:36 | 古書日録

藤田嗣治と愛書都市パリ図録

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『藤田嗣治と愛書都市パリ 花ひらく挿絵本の世界』(キュレイターズ、二〇一二年、デザイン=キュレイターズ)を恵投いただいた。年末に嬉しい頂き物。本展は林洋子『藤田嗣治 本のしごと』をベースに企画されたもののようだ。

藤田嗣治と愛書都市パリ
http://sumus.exblog.jp/18867358/

林洋子『藤田嗣治 本のしごと』
http://sumus.exblog.jp/15912195/

藤田の未亡人、君代さんの遺品のなかに約五百冊の書籍があったという。七割程度はフジタの旧蔵書である。

《自覚的に残されたもので、二種の傾向を見せる。ひとつは藤田が装幀や挿絵に関わったもの、もうひとつは制作用の資料として集めた書籍である。これらは夫人の最晩年に、東京国立近代美術館のアートライブラリーに一括して寄贈された。その概要については2011年の拙書『藤田嗣治 本のしごと』で紹介したが、今回の展覧会はその後者、挿絵本関連の大半をまとめて披露する初めての機会となる。》(林洋子「本を読む、本を装う」)

上の図は小牧近江『Quelques poèmes』(LA BELLE ÉDITION, 1919)より、おセンチな詩の一節。フジタにとっては最初の挿絵本である。この少女の絵はそのまま阪本越郎『暮春詩集』(金星堂、一九三四年)に流用されている。

ジュール・ボワシエール『Propos d'un intoxiqué』(JAVAL & BOURDEAUX, 1929)、石版画挿絵十六点、限定九十七部。
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ラビンドラナート・タゴール『Amal et la lettre du roi』(LUCIAN VOGEL, 1922) 、木版画七点、限定百四十二部。
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フジタは『芭蕉とその弟子のハイカイ Haïkaï de Bashô et des ses disciples』(国際文化振興会、一九三九年)に四点の挿絵を提供しているが、そのなかには芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水の音」を視覚化した絵もある。常識的に一匹のカエルが池にジャンプしている図(じつは複数のカエルかもしれないという説は以前紹介した)。フランス語訳はこうなっている。

 Ah! le vieil étang!
  et quand une grenouille plonge,
   le bruit que fait l'eau!

母音の数を五七五に揃えてあるところが苦心の翻訳。当然ながらここでも一匹のカエル(une grenouille)である。

フランス語の俳句について
http://sumus.exblog.jp/10792148/

古池や蛙とひこむ水の音
http://sumus.exblog.jp/18660956/
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by sumus_co | 2012-12-30 21:19 | おすすめ本棚

欧米女見物

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道家斉一郎『欧米女見物』(一九二九年一二月一五日十版)を借覧中。初版は同年一二月五日である。内容については西出勇志「「ニッポン洋行御支度史」ガイドブック4」にうまく紹介されている。道家の武勇伝はどこまで本当か、少々怪しいところもなくはないにしても、臨場感あふれる描写には違いない。

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本書口絵よりハンブルグのダンスホールで美女に囲まれ満悦の道家斉一郎(1888-1942)。道家(どうけ)は経済学者。博士論文は「人口ノ経済的社会的研究」。本書にも柔道が得意なことが何度も出て来るが、大正六年、日立製作所に柔道場ができたとき最初の師範になっている(庶務係勤務)。その後、東京市統計課長となり、おそらくその関係で世界の都市調査に携わったのではないだろうか。その副産物、夜の都市調査が本書となって結実した。

専修大学第二代総長、第三代学長。衆議院議員(一九三七初当選)時局同志会。本書ではけっこうリベラルなことを書いているように思うのだが、日本精神を鼓舞した「道家イズム」で知られたというから分らないものだ。日本アマチュアボクシング連盟(全日本アマチュア拳闘連盟)第三代会長、日本カヌー協会初代会長(一九三八就任)も務めた。ざっと調べた著書は以下の通り。

[著書]
・震災ニ因ル日本ノ損失 東京市 一九二五
・新経済学 生産論 自彊館書店 一九二七
・新経済学 総論・生産論 自彊館書店 一九二七
・参考統計学 巌松堂書店 一九二八
・売春婦論考 売笑の沿革と現状 史誌出版社 一九二八
・世界三大経済ブロックと満豪の資源 一九三二
・財界の統計的観測 白鳳社 一九三二
・交通研究資料第41輯 戦争と交通機関, 交通盲目 日本交通協会 一九三六
・政党よ何処へ行く 政党罪悪史 講演通信391号 日本講演通信社 一九三八
・何故に斉藤隆夫君は懲罰に附せられたる乎 国民は正しく認識せよ! 森本耕 一九四〇
・配電管理と臨戦体制 富強日本協会 一九四一
・経済統計学 栗田書房 一九四二

[訳書]
ムンロー『欧米日本都市問題大系』上卷 白鳳社 一九三一

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見返しは上のような図柄。下は削除がはなはだしい頁。版そのものを後から削ったようだ。

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《[ロンドンの娼婦の数は]或る学者の説によると八万といひ或は三万位といふが、私の推算ではそれ程居るとは信じない。いくら多くとも二万人位だらう。これに次ぐのはパリーである。パリーには公娼だけでも七千近くから居る。或る学者は矢張り三万人の私娼が居ると述べているが私はロンドンと殆ど同数の二万人位と見てゐる。ベルリンもほゞ同数位であらう。公娼は約四千人である。日本の芸者は勿論体裁のよい私娼であるが、その数が東京市で一万二百五十六人ゐた(大正十五年)娼妓は吉原、新宿、洲崎、品川のいはゆる四宿で四千人以上居る。東京はさすがに世界第六位を占める大都会だけに如何なる方面にもひけを取らない。偉いものだ。》

こんな調子で、ざっくばらんな筆致が全編に踊る。感心なのは娼窟ばかりでなく古本屋もよく回ったらしいこと。シカゴ市の私娼撲滅運動の報告書を求めて《私はシカゴの古本屋を一軒残らず捜してみたが残念ながらとうとう手に入れることが出来なかつた》というくだりもあるし、下のような貴重なニューヨークの古本屋の写真も掲載されている(もう少し鮮明だったら!)。

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海外旅行記は概して面白い内容のものが少ないのだが、それでも、その時その場所でしか知り得ない事実が記録されていることもあり、そういう意味ではいずれも貴重であろう。

実は、かなり前に岡崎武志氏の書斎を見せてもらったとき、書棚の一角に戦前の海外旅行本がまとまって並んでいたのに興味を覚えたのが最初だった。安いものを見つけたら買っているという話だったと思う。それ以来当方も真似をして数百円までで出会えば、たいていは拾い上げることにしてきた。十年は経つはずだが、このくらいしか集まっていない。

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by sumus_co | 2012-12-29 22:00 | 古書日録

細川叢書

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架蔵の細川叢書、メリメ『イールのヴィーナス』(杉捷夫訳、細川書店、一九四七年八月二〇日)。Makinoさまより以下のような質問メールを頂戴したので取り出してみた。

《佐藤春夫『美しい町』(細川書店・1947年・非売品)を入手しました。フランス綴じの美しい本で、本文の紙質、印刷、活字・レイアウトも申し分ありません。裏表紙には「Ne se vend pas」と空押しがしてあります。敗戦直後にこんな洒落た本が出ていたとは驚きです。「細川叢書5」としてありますが、この叢書について、何かご教示いただければさいわいです。》

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細川叢書および細川書店の岡本芳雄については曾根博義『EDI ARCHIV 3 岡本芳雄』(エディトリアルデザイン研究所、一九九七年)が詳しい。また拙著『古本デッサン帳』(青弓社、二〇〇一年)にも一文を収めているのでご参照あれ。かいつまんで岡本芳雄の略歴を掲げておく。

大正元(一九一二)年一〇月二日高知県に生まれる。五歳のとき母とともに北海道へ。十八歳で上京。新聞店に住み込む。二十一歳、旭川歩兵第二十八聯隊第一中隊に入隊。満州へ。翌九年帰国。十年、日大芸術科夜間部に入学、創作を伊藤整に学ぶ。軍隊小説を発表。十二年、充員補充で応召。大陸へ。細川武夫と知り合う。十五年帰国。学芸社に勤めるかたわら小説を執筆。十八年『山襞』(洸林書房)、十九年『冬陽』(肇書房)を刊行。昭和二十一年、細川武夫とともに細川書店を創業。昭和二十九年閉業。五十五年友人等と同人誌『疎林(遡河に改題)』を創刊。六十三年『流亡』(遡河詩社)、平成三年『山河抄』(遡河詩社)を刊行。平成七(一九九五)年一月二十六日肺炎のため死去。

八年間の活動期間において細川書店は初刊本七十六冊を数え、各版ごとに挟み込まれた栞「細川だより」は百一号にいたる。天野貞祐『生きゆく道』(一九四八年)が唯一のベストセラーで十万部出たという。

細川叢書は全十二冊。愛書家の間では根強い人気がある。野田書房のコルボオ叢書を模範としたそうだが、時代も趣旨も違い過ぎてコルボオ叢書とは較べられないように思う。

《国民は活字に飢えている一方、用紙、ことに洋紙の調達がきわめて困難で、諸物価の騰貴も予測がつかない。そういう厳しい条件の下で、無駄を省いた、しかも美しい「純粋造本」を目指したところに細川書店の苦心があり、面目があった。コルボオ叢書が『伊豆の踊子』を除いてすべて初版本だったのに対して、初版本にこだわらず、すぐれた作品であれば再刊本でもよしとしたこと、限定部数を増やしたこと、和紙を有効に使ったことなどに、状況の違いを考慮したその特色がうかがえる。》(『岡本芳雄』より)

この叢書には後に独立して雲井書店を興す雲井貞長も関わっていた。
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「Ne se vend pas」(非売)というのは会員制で頒布していたため。A会員版(署名入り限定本)とB会員版があり、部数は二千。ただし会員制も部数制限も途中から撤廃されたらしい。

敗戦後間もない出版物としては意地を示した見事な仕上がりだと思う。


伊藤整『感傷夫人』(中央公論社、一九五六年)、装幀=岡本芳雄
http://sumus.exblog.jp/6199746/

ウィリアム・モリス『理想の書物』(庄司浅水訳、細川書店、一九五一年)
http://sumus.exblog.jp/6095722/
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by sumus_co | 2012-12-28 20:33 | 古書日録

東京 ローズ・セラヴィ

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『東京 ローズ・セラヴィーー瀧口修造とマルセル・デュシャン』(慶應義塾大学アート・センター、二〇一二年、デザイン=川村格夫)展図録を頂戴した。深謝です。展覧会は十二月三日から二十二日まで慶應義塾大学アート・センターで開催されていた。

図録のカバーはトレッシングペーパー。一皮むくと白い清潔な表紙が現れる。
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瀧口は一九五八年にスペインのポルト・リガトへダリを訪ねて行き、ちょうど来合わせていたデュシャンに紹介された。翌年から文通が始まり、デュシャンが急死する一九六八年まで続いたそうだ。瀧口はこの交渉のなかで「ローズ・セラヴィ」と名付けたオブジェの店を開くことをデュシャンに提案し、看板用に「Rrose Sélavy」という署名をもらっている。そのサインを銅板に鋳造したものが作られ瀧口の書斎に置かれた(店は実現しなかった)。

ローズ・セラヴィ(Rrose Sélavy)という名前の由来は、デュシャンが別人格になりたいと思ってユダヤ人の名前を探していたが、どうもぴったりくるものがなかった、そんなときにひらめいたのが、性別も変えればいいじゃないかということで、ローズ・セラヴィ(Rose Sélavy)を思いつき、さらに LLoyd のように語頭の文字を重ねることにした、のだそうだ(Michel Sanouillet『Duchamp du signe』でデュシャン自身がそう語っている)。

とにかくダジャレ大好きなデュシャンと瀧口修造は大いに意気投合したようである。瀧口はデュシャンの駄洒落をなんとか日本語に置き換えようと努力した。その成果が『マルセル・デュシャン語録』(東京ローズ・セラヴィ、一九六八年)となる。そのなかで『Rrose Sélavy』(publié par GLM dans la collection "Biens Nouveaux" le 19 avril 1939 à 515 exemplaires numérotés)から訳したこの一文は傑作だ。

 Poils et coups de pieds
 en tous genres

 アラユル種類ノ
 足蹴ヤ足毛

訳文は瀧口の手帖から。語録では《あらゆる型の/足毛と足蹴》。poil は頭髪とまつげ以外の体毛を指すが、足毛はうまい(!)

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「東京ローズ」はもちろん洒落になっているのだろう。
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by sumus_co | 2012-12-27 21:12 | おすすめ本棚

萬心覚

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幕末のメモ帳。文中に万延元年(一八六〇)、文久二年(一八六二)の年号が登場する。多田宗太良の朱文円印が巻首と巻尾に捺されている。

出所はどうやら阿波(徳島)らしい。富田秋田町、伊月町は現在の徳島市内になる。岩田七左衛門といえば大坂冬の役で蜂須賀家の家臣の一人として家康より感状と賞賜を受けた同名の武将がいるが、その後裔なのかどうか。
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難読漢字を書き付けている。手紙に用いる慣用表現なども羅列されている。
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面白いと思ったのはこの絵。「ヲコリヲトス法」。ヲコリは周期的に悪寒と発熱を繰り返す病。マラリアらしい。足の指に灸をせよということか。
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者病吉(物病?) 《一銅銭拾四文紙ニツツム火ニヤク》そして印を結んで呪文を唱える。これは真言密教の呪法のようである(?) 阿波は空海の縄張り。
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最後は十六頁にわたって楽焼きの釉薬の調合が記されている。《此薬法ハ伏見富吉より申寄候》というメモも見える。セミプロだっただろうか。かなり詳しい調合である。
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以上のようにまったく脈絡のない内容だが、そこがかえって「よろず心覚」の名前にふさわしく、持ち主や持ち主が生きた時代に対する興味を掻き立てられる。
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by sumus_co | 2012-12-26 21:26 | 古書日録

アルマイトの弁当箱

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クリスマスランチに。河原町通へ。丸亀うどん(はは、は)。ついでにオーパの八階にできた巨大ブックオフのぞく。初めて入ったが、迷子になりそう。洋書コーナーもすごい。画集の棚で足が止まってしまった。明らかに安すぎる大冊を求める(いずれ紹介しますが、いまはナイショ)。

そのあと烏丸通から高辻通りへ入って因幡薬師のすぐとなりにある「木と根」へ。喫茶店もやっているようだが、今日は陶磁器を中心とした展示だけだった。展示用の古い家具の抽き出しにそっとしまいこまれていたアルマイトの弁当箱を発見。売り物だったので有り難く頂戴する。そういえば、中学校時代はもっと大きなアルマイトの弁当箱を使っていた。冬場だと昼前に生徒たちの弁当を集めて蒸気で暖めてくれたことを思い出す。

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因幡薬師のラァシュ君はシェパード犬

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kitone/木と根
器、日用道具と喫茶室
http://hibiniki.kitone.jp

アルマイト弁当箱
http://kura-kyoto.at.webry.info/201006/article_2.html
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by sumus_co | 2012-12-25 19:59 | 貧乏こっとう

2012年極狭私的見聞録

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今年最後の収穫だと思うが、まだ少し日を残しているので何が起こるか分らないところもある。世界は滅亡しなかったし。

洲之内徹の現代画廊の年賀状ひとまとめ二十二枚。開業して初めての正月昭和三十七年から昭和六十一年まで。三十九、四十二、四十三、四十四、五十二年の五枚が欠けている。洲之内が倒れたのは昭和六十二年なので、六十二年の賀状はあってもいいはずだが、年譜を見ると前々年の大晦日に母が死去している。あるいは六十二年の賀状は作らなかったのかもしれない(断言はしないが)。他に暑中見舞いが二枚。

使われている絵は松田正平が五点、佐藤哲三が三点。他はそれぞれ違う作家。宛名や住所はすべて手書きだが、洲之内徹本人が書いたと思われるのは初期の一枚か数枚かだけである。

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    * * *

ということで、今年の古書の成果はどんなものだったか、振り返ってみた。まだブログで紹介していないものは、いずれ近い内に紹介したい。順不同。

◎現代画廊年賀状二十二枚
『詩囚』四冊、詩囚苑、一九二六年
『唄のくさぐさ』プレヴェール、小笠原豊樹訳、昭森社、一九五八年
山田稔旧蔵書、バタイユ『エロティシズム』他
◎『歌集坊やの夢』矢倉年、紫朗塔社、一九三四年
◎『集古随筆』林若樹、大東出版社、一九四七年
◎『和漢太平広記』二冊、藤井懶斎、正徳五年序
『竹秋遺稿』三谷九八、一九三四年
『waiting for godot』samuel beckett, GROVE PRESS, 1954
判じ絵豆本

昨年のリストはこちら「2011年極狭私的見聞録

読んで面白かった本も挙げてみる。ただし、ご恵投いただいた書籍については除外し、身銭を切って買った本のなかで、という条件をつけておく。平野遼は拙作装幀本ではあるが、多めに買い取らせてもらったので選んだ。

◎林若樹『集古随筆』大東出版社
柏木如亭『詩本草』岩波文庫
因果道士著・中島棕隠軒編集『都繁昌記』
ドリュー・ラ・ロシェル『LE FEU FOLLET』
由良君美『みみずく偏書記』ちくま文庫
◎レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ『パリの夜』岩波文庫
『深夜、雷鳴のなかでしきりに鳴き続ける野犬の遠吠えに、ふと永遠を思っていた 平野遼水彩素描集』みずのわ出版
◎ツヴァイク『ある心の破滅』角川文庫
『味覚極楽』東京日日新聞社会部編纂、光文社
『藤澤清造短篇集』西村賢太編、新潮文庫

映画はDVD、録画だけである。劇場では見ていない。今年はじめて見たものに限った。二度目以上のものは面白くても除外した。フランス映画を贔屓しているわけではなく、マジ、最近のフランス映画おもしろいです。ただしアカデミー賞作品「アーティスト」はアイデア以外は平凡だった。

◎ハンナ [理屈なく楽しめるアクション]米
◎ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
 [理屈なく楽しめるサスペンス]スウェーデン
◎この愛のために撃て [理屈なく楽しめるアクション]仏
◎この自由な世界で [ビンボーで悲惨な話]英他
◎フローズン・リバー [ビンボーで悲惨な話]米
◎潜水服は蝶の夢を見る [病気で悲惨な話]仏他
◎きつねと私の12か月 [きつねにつかれた少女]仏
◎サンジャックへの道 [巡礼コメディ]仏
◎パリ、恋人たちの二日間 [恋愛コメディ、パリ好きにおすすめ]仏他
◎永遠のモータウン ファンク・ブラザースの歴史 [歴史の裏面を知る]米
[番外]
◎テルマエ・ロマエ [くだらなさも必要なり]日
◎ニーチェの馬 [人間辛抱だ]ハンガリー他
◎ブンミおじさんの森 [見知らぬ懐かしさ]タイ

以上
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by sumus_co | 2012-12-24 21:14 | 古書日録

Christmas Greetings

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ずっと以前に求めた古い写真帖に挟んであったクリスマスカード。大正六年の年末にシアトルの勝?氏より神戸の中村氏へ届いたもの。

SEATTLE,WASH.TERM.STA.-1917
DEC18
6_30PM

神戸市東川崎町
鈴木商店内 機械部
中村栄一郎様

謹賀新年
昨年中は種々御厚情に
預り難有く存候尚本年も
不相変宜しく願上候
アメリカの奴は小僕の時分から
男と女とおどる事になれて
居るので成人すると一層甚
しい実際助平な国です
大正七年元旦
     勝?生
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by sumus_co | 2012-12-23 20:40 | 古書日録

どんたく図案社

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かぐら川様より「どんたく図案社」の雑誌『図案と印刷』についてご教示いただいた。夢二の年譜は何度も読んでいるのだが、この件についてはさっと通り過ぎてあまり意識になかった。今、あらためて手近の年譜を読んでみると

大正十二年(一九二三) 40歳
五月、「どんたく図案社」結成の宣言文を発表。顧問に岡田三郎助、藤島武二の名が記される。
八月、『都新聞』に自作自画長編小説「岬」の連載を始める。
九月一日、関東大震災。本所の印刷所の全滅によって恩地孝四郎らとともに企画した「どんたく図案社」は、その機関紙『図案と印刷』と共に実現寸前に潰滅。

などとある。以上は『生誕二〇〇年記念竹久夢二』展図録(朝日新聞社文化事業部、二〇〇四年)の年譜から引用したが、それは《長田幹雄編「竹久夢二年譜」を基本に作成》したものである。上の写真も同書より。「大正8年から夢二のモデルをつとめたお葉(佐々木カ子ヨ)大正12年」と説明されている。はっきり、どんた「く図案社」の竹の看板が写っている。

かぐら川様は《『純正詩社雑誌』第2巻第1号の巻末に、『図案と印刷』六月号の広告が出ていた》と書いておられるので、宣言文を発表と同時に広告を打ったと考えていいだろう。九月まで六月号が刊行されなかったとは、一般的には考えにくい(ありえないことではないが)。幻の『図案と印刷』も存在しているかもしれない! 

恩地孝四郎は「夢二の芸術・その人」(『書窓』夢二追悼特集、アオイ書房、一九三六年八月五日)では当事者ながら簡単にこう書いているだけだ。

《この芽は大正震災によつて潰れて了つたドンタク図案社の企画となつて伸び後年には榛名山美術研究所となつて果を結ぶべきであつたが、遂にその事なくして終つたのは遺憾の極みである》

この芽というのは夢二のデザイン方面の才能の萌芽をさす。
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by sumus_co | 2012-12-23 20:21 | 古書日録