林蘊蓄斎の文画な日々
by sumus_co
カテゴリ
古書日録
もよおしいろいろ
おすすめ本棚
京のお茶漬け
東京アレコレ日記
佐野繁次郎資料
宇崎純一資料
渡邊一夫の本
青山二郎の本
spin news
読む人
パリ古本日記
写真日乗
あちこち古本ツアー
装幀=林哲夫
著述関連
画家・林哲夫
雲遅空想美術館
淀野隆三関連
喫茶店の時代
うどん県あれこれ
貧乏こっとう
ほんのシネマ
以前の記事
2017年 09月
2016年 11月
2016年 01月
2014年 02月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
more...
フォロー中のブログ
フランス落書き帳
フランス美食村
退屈男と本と街
ニューヨークの遊び方
gyuのバルセロナ便り ...
奥成達資料室blog版
空ヲ洗フ日々 十谷あとり
浅生ハルミンの『私は猫ス...
古書渉猟日誌
bookbar5
わたしつくるひと
猫額洞の日々
トスカーナ オリーブの丘...
フォロニアム
昨日の続き
モンガの西荻日記
往来座地下
天音堂★山口ヒロミ工房_...
NabeQuest(na...
フランス古道具 ウブダシ
Mの日記@古本T「たまに...
日常と夢の記憶
Gallery Shim...
and so on...
亡兎観現世
石のコトバ
ボローニャに暮らす
糸巻きパレットガーデン
Kumatetsu Ga...
Muntkidy
Lenzgesind
奈良 智林堂書店  
うらたじゅんの道草日記
高遠弘美の休み時間・再開...
ネジ式
さし絵のサイン
机の上で旅をしよう(マッ...
森のことば、ことばの森
新潟絵屋Blog
オックスフォード便り
白 の 余 白
Madame100gの不...
ツレヅレナルママニ(みど...
関西の出版社
めぐり逢うことばたち
古本万歩計
りはびりカメラ
ムッシュKの日々の便り
Books & Things
ちらしDMコレクション
ネコと文学と猫ブンガク
daily-sumus2
メモ帳
お問い合わせはこちらまで

本を散歩する雑誌 [スムース]
洲之内徹略年譜
『書肆アクセスの本』
ほんまに日記
恵文社一乗寺店
Calo Bookshop & Cafe
貸本喫茶ちょうちょぼっこ
BOOKONN
奥付検印紙日録
とらんぷ堂
書肆砂の書
みずのわ編集室
みずのわ放送局
エエジャナイカ
蟲文庫
古書日月堂
海月書林
田中栞日記
古書の森日記
日用帳
なえ日記
lady pippon
古書現世店番日記
海ねこ的日々の暮し
m.r.factory
ナンダロウアヤシゲな日々
内澤旬子・空礫絵日記
四谷書房日録
森茉莉街道をゆく
ねこそぎ記念
本の街日記
リコシェ
旅猫雑貨店
津田明人
北方人日記
柳居子徒然
駅前糸脈
日々のあわ.。o○
晩鮭亭日常
空想書店書肆紅屋
bibliomaine mod
autographes et …
BiblioMab
Le blog de Yv
Le Monde
Gibert Joseph
bnf
BRITISH LIBRARY
Galaxidion
Library of Congress
Strand Bookstore
The Book Design Review
penguin blog
Mark Simonson Studio
modernmechanix
くうざん本を見る
神保町系オタオタ日記
ma-tango
jun-jun1965
書物蔵
スローラーナー
本はねころんで
漁書日誌
城戸朱理
町家古本はんのき
古書ダンデライオン
Kanecoの日記
吉岡実の詩の世界
qfwfqの水に流して
古本屋ツアー
清水哲男
Automat svět
細馬宏通
中野晴行
古通・編集長日誌
昭和初期抒情詩と江戸時代漢詩のための掲示板
喫茶・輪 
古本ときどき音楽
本と暮らす
ウロボロスの回転
表現急行
tundowの日記
盛林堂日記
フクヘン
ですぺら
花森安治の装釘世界
文壇高円寺
ぶろぐ・とふん
medievalbooks
マン・レイと余白で
okatakeの日記
古本ソムリエの日記
最新のトラックバック
京都印刷発祥之地 記念碑建立
from 印刷見聞録|からふね屋|京都
本を散歩する雑誌 [スム..
from 相互に旅をする人
土曜日のブックオフ
from 古本万歩計
[書評][詩歌に寄せるエ..
from 読書百篇
第33回西荻ブックマーク
from 西荻ブックマーク
北野武似の少年は夏休み、..
from 月の風ノート
【ライト兄弟】についてブ..
from 最新キーワードチェック!
『田辺茂一と新宿文化の担..
from じんぶんや「紀伊國屋書店と新宿」
美の名言
from 美の名言
横尾忠則の小説
from Mの日記@古本T「たまにはス..
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


<   2012年 07月 ( 34 )   > この月の画像一覧

野見山暁治 絵とことば

b0081843_20151631.jpg

『ユリイカ 2012年8月臨時増刊号』(青土社、二〇一二日七月二五日)総特集◎野見山暁治 絵とことば きょうも描いて、あしたも描いて、90年。昨年十一月にブリヂストン美術館で野見山暁治の回顧展があった。十月に上京したのだが、時期的に少し早くて見られなかった。図録でも…と思っているうちに時間が過ぎて『ユリイカ』が特集をしていると知人が教えてくれたので買ってみた。巻頭インタビューが面白すぎてつい読みふけってしまう。

《野見山 絵描きにプロはない。むしろ、絵描きがプロになったらおしまいだと思っています。僕は職業欄に「画家」と描く時に、いつも「画家は職業か?」と悩みます。職業というのは、それで金を得るものでしょう。じゃあ一点も売れなかったゴッホは、絵描きが職業だったと言えるのか。道楽だとしても、ゴッホの場合は命がかかってますから。いや、案外、人は道楽に命をかけるものですけどね(笑)。》

九十過ぎてこの悩みは若いなあ。この間、ミッシェル・ラゴンの『だまし絵』を紹介したが、そこに登場するポリアコフとアトランのその後の様子が語られていたので引用しておく。

《ある日、菅井汲が、「ポリアコフ金持ちになっとるで」と言うから、「どうした?」と訊くと、「オペラ座のところでバスを待っていたら、夕立になって、困ったなあ思うてたら、ロースルロイスがパッと停まって「スガイ、乗れ」と言うから、見たらポリアコフやった。あれ、ロールスロイス買っとんのや」と言っていた(笑)。それから、うちの近くにはアトランという絵描きが住んでいて、よく遊びに行きましたね。アトランも売れだすと洋服がよくなって、「金持ちになったなあ」なんて話したり、みんな非常に人間的でしたよ。》

田中りえ「絵かきのおじさん」も面白かった。田中小実昌の娘。田中ファミリーと野見山暁治は一緒に暮らしていた時期もあり、その後も隣接した土地に家を建てたそうだ。田中りえはこう書いている。

《「こんなこと、わたし、いってないよ」と、おじさんにいっても、「オレはたしかにそうきいた」しかいわない。わたしが、そんなこと、いうはずがないという理屈は、門前払いで、「いった」「いわない」の水掛け論になる。おじさんは、つくってウソをかいたりしない。自分なりの「そのまんま」を、かいているだけなんだけど……。》

井伏鱒二のエッセイと同じだ。これまで『四百字のデッサン』はじめ何冊か野見山本を読んで来たが、やっぱり信じてはいけなかったのだ。駒井哲郎とか坂本繁二郎についての文章なんか、あんまりおもしろ過ぎるよなあ……。りえさんによれば《じつは、おじさんがいいたいことを、ひとの口で、いわせている》ということになる。なるほど。

《おじさんの文は、写生(デッサン)ではなく、勢いでかく油絵だ。『四百字のデッサン』という、おじさんの本の題名をつけたのは、わたしの父だが……。》

ガストハウス タナカ 田中屋
http://www1.ocn.ne.jp/~riedesu/

最後になったが、上の写真は本誌より。「1956(昭和31)年、陽子夫人と椎名其二氏。野見山撮影」。椎名其二も『四百字のデッサン』で印象深く描かれている人物だが、おそらくりえさんの言うように実像からはほど遠いのかもしれない。椎名其二の伝記を執筆された蜷川譲氏もそのようなことをおっしゃっておられたのを思い出す。

マビヨン通りの店
http://sumus.exblog.jp/14232002/

野見山暁治『アトリエ日記』(清流出版、二〇〇七年)
http://sumus.exblog.jp/6724638/

『野見山曉治展』(北九州市立美術館、一九八三年)
http://sumus.exblog.jp/14243819/
[PR]
by sumus_co | 2012-07-31 21:39 | おすすめ本棚

なげこみ目録など

b0081843_2055064.jpg
b0081843_205441.jpg

【投げ込み(なげこみ)】投げ込みとは、印刷物を完成した本や、冊子に挟み込むことをいいます。挟み込む印刷物をそう呼ぶこともあります。》(印刷用語集)。こういう小物を集めるのも古本道楽のひとつ。上は臼井書房の投込目録「臼井書房刊行詩歌集一覧」。臼井書房という名称は昭和十七年から使い始め十八年には企業統合されるので、その間に発行されたものに違いない。四季派を中心としたラインアップ。何冊か実際に手に取ったことがあるが、凝った造本も少なくない。

次は同じく京都の版元、人文書院の投込。『ランボオ全集』第三巻は一九五六年発行なので、その時期だろう。
b0081843_2053721.jpg
b0081843_2053070.jpg

河出書房『カレッジ版世界名作全集』。この美女は映画「戦争と平和」でナターシャを演じたサベーリエワ。一九六七年頃か。
b0081843_2052427.jpg

富士見ロマン文庫。山口はるみのイラストレーション。一九七八年頃。
b0081843_2051788.jpg

昨日アップした『筑摩書房出版通信』の第二号(一九四四年一月一日)が見つかった。日本古典文学がほとんどを占めるのも時局によるものだろう。
b0081843_205898.jpg

フランスのストック社『サント・ブーヴ全書簡 Correspondance générale de SAINTE - BEUVE』(一九三六年)の注文用紙。表だけ緑に印刷、少しずらして二つ折りにしてある。そうすると白い裏紙が見えて二色の効果が得られる。近頃のちらしでは珍しくもないけれど、戦前なのだから、なかなかやるじゃない、と思ってしまう。
b0081843_204585.jpg

そして『五木寛之作品集』第一回配本「蒼ざめた馬を見よ」(文藝春秋、一九七二年)の月報。母親そっくりの丸い顔だ。二歳にしてはしっかりした表情。
b0081843_2044749.jpg
b0081843_2043840.jpg

今月の解説者は川崎彰彦。
b0081843_2042825.jpg

[PR]
by sumus_co | 2012-07-30 20:45 | 古書日録

新しい世界の短編

b0081843_19574768.jpg

マンディアルグ『黒い美術館』(生田耕作訳、一九六八年一月二〇日、装幀=北園克衛)。マンディアルグを長い間「マンディアグル」と読んでいて、恥はかかなかったものの、おや? とある日気付いたときには、自らの節穴ぶりにあきれたものだ。先日のカルモチンを「カルチモン」とずっと読み間違っていたのと双璧である(ただ、後者は某氏も使っておられるようだし、検索してもけっこうヒットする。そう恥じ入ることもないかも?)。

この本は二冊目。同じ本を重ねて買うというのはあまりしないようにしているものの、この場合はシリーズのしおりが挿まれていたので、それに惹かれたのだった。「新しい世界の短編」スタート時のしおりは表紙のデザインを流用したもののようで、文字配りは北園克衛らしくない。

b0081843_19574055.jpg

《体裁・判型=四六判フランス装》と明記してある。「フランス装」といっても表紙を木口側の一方だけ折り返したスタイル。それをこの時期には「フランス装」と呼んでいたことが分かる。

『筑摩書房出版通信』第一号(一九四三年八月)を某氏より頂戴した。昭和十八年というのだから粗末な用紙だが、書目には苦心もうかがえる。タテ167mm。
b0081843_19573188.jpg

ついでに戦後(一九五五年一二月)の鱒書房の目録。挿絵は東郷青児。タテ13mm、ヨコ380mmという横長の用紙を四折りしてある。コバルト新書・グリーン新書・軽文学新書・女だけの本(殿方はご遠慮下さい)。いずれも軟派なタイトルが並ぶ。「女」がキーワード。石井好子「女ひとりの巴里ぐらし」、八木義徳「七つの女の部屋」、火野葦平「露地の女王」、永井龍男「女の靴」、柴田錬三郎「偽処女」、松本清張「悪魔にもとめる女」……。
b0081843_19572399.jpg

カバー担当の画家名も付記してある。東郷青児、生沢朗、高野三三男、永田力、桂ユキ子、野間仁根、古沢岩美、硲伊之助、脇田和、荻須高徳、鶴岡政男、山本武夫、鳥海青児、斎藤三郎、沢田重隆、松田穣、高沢圭一、毛利かほる、阿部竜応、井上賢三、土井栄、須田寿、山口薫、石川滋彦、風間完、木ノ内文三、井指純一、三好悌吉。二科会、新制作協会、自由美術家協会、独立美術協会など在野の画家たちが多いようだ。
[PR]
by sumus_co | 2012-07-29 21:16 | 古書日録

黒岩比佐子が遺した「世界」 8月4日〜5日

b0081843_1393940.jpg

黒岩比佐子が遺した「世界」~企画展&トークイベント
「『食道楽』の人 村井弦斎」 を見て、聴いて、食べる

■開催日時
8月4日(土)~5日(日)
11:00~15:00 「見て」の部   
◎黒岩比佐子さんが遺した著作資料展示

16:00~19:00 「見て聴いて食べる」の部  
◎担当編集者トーク&朗読と『食道楽』レシピの再現

・4日ゲストは、元・岩波書店編集者 星野紘一郎さん
・5日ゲストは、元・岩波書店文庫編集長 塩尻親雄さん

◎開催場所
アートガレー神楽坂
http://art-galley.craps.co.jp/about1.html
東京都新宿区矢来町114 高橋ビル地下1F
03-5227-1781

◎入場料
企画展+トーク&朗読+「食」は、メニューにより下記のとおり(要予約)
・アルコールドリンク付「ほろ酔いセット」(3500円)
・ソフトドリンク付「デザートセット」(3000円)
企画展のみ 入場料 500円(予約不要)

◎予約・お問い合わせ
VZD07320[アットマーク]nifty.ne.jp(語り継ぐ黒岩比佐子の会・鈴木)

語り継ぐ 黒岩比佐子の世界 『食道楽』編 8・4~5
http://blog.livedoor.jp/hisako9618/

語り継ぐ黒岩比佐子の会・鈴木さんよりご案内のメールを頂戴した。以下開催の経緯についての部分を一部引用させていただく。

《昨年、シリーズで「食道楽」を朗読させていただいたこともあり、なんと「食道楽」関連の資料一式が我が家にあります。何気なく預かった資料でしたが、日を経るうちに段々と落ち着かなくなってきました。リビングに置かれた資料段ボールから、「このまま誰に見てもらうこともなく、ずっとここにいるの?」というささやきが聞こえるような気がしてきたからです。もちろん単なる妄想にすぎませんが、その妄想から、やはり、これは一度ちゃんと皆さまに見てもらわなくてはいけないのではないか、それが私にしかできない使命ではないかと思うようになってきて計画をしたのが、今回のこのイベントです。

几帳面な黒岩さんのことですから、ホントにほとんど全ての資料が遺されています。岩波書店の星野さんに見ていただいた最初の「村井弦斎」の原稿。赤字が満載の初校紙、弦斎が妻・多嘉子に宛てた手紙などのすべて手書きで筆記した資料ノート。そして担当編集者や、執筆にあたりアドバイスをいただいていた方へ出した自分の手紙のコピー。複数冊あった蔵書もいくつかあり、「HANA」「食道楽」も展示します。

今回はこうした貴重な資料展示を中心に、担当編集者(「『食道楽』の人 村井弦斎」担当の星野さん、文庫「食道楽」担当の塩尻さん)の方のトーク。最初の「村井弦斎」の原稿と「『食道楽』の人 村井弦斎」からの抜粋の朗読、「食道楽」からの抜粋のそれぞれの朗読。そして『食道楽』レシピによるデザートか総菜の食事と、多方面から光をあてて、贅沢なイベントにしたいと思っています。》

《黒岩さんが1冊の著作を完成させるために、どれだけ時間をかけ、資料を集め読み解き、執筆していったのか、その経緯を感じてもらえる展示になると思います。ほとんどの方は初めて見るものばかりだと思いますので、たくさんの方に見ていただいて、改めて黒岩さんに思いを馳せていただけたら、彼女も天上で嬉しいのでは、と思っています。》

小生も本棚の目立つところに黒岩さんの著作を積み上げて、執筆の折には気を引き締めている。上の写真。一冊松崎天民が混じっているが、それ以外は黒岩さんの著書。天民のすぐ下の古本は黒岩さんに頂戴したものである。
[PR]
by sumus_co | 2012-07-29 19:56 | もよおしいろいろ

地獄の季節 今日出海

b0081843_20514438.jpg

先日、今日出海「地獄の季節」のコピーを牛津先生より頂戴した。深謝。『新文学研究』第一号(金星堂、一九三一年一月)掲載。小林秀雄『地獄の季節』(創元社、一九三〇年一〇月二五日)の紹介文である。

《日本の現文壇には仏蘭西文学の翻訳が漲つてゐる。どれもランボオより出でた新しい文学である。然るにランボオが常に閑却されたのは一つの不思議に他ならない。》

《ところで小林秀雄が一年有余日々この翻訳にあたつて、やつと完成したことは、喜んで余りある。ランボオと小林秀雄、この組み合はせに関して、私は長々しい論文の題目を発見する。小林の頭脳は杜撰な批評家の頭には一つの神秘であらう。小林の正しい論理を奇智といふコケすらゐる程だ。だが漠然小林は並々ならぬ存在であることは解られて来たやうだ。「地獄の季節」一篇はランボオを理解するために、新しい文学を建設するために、そして小林秀雄を理解するために、充分な意義を有するものと私は確信する。
 終りにこの本の装幀は、近頃出版されたどの本よりも美しく立派だ。佐野繁次郎の腕は勿論、彼の理解の方向が正鵠を得てゐることを賞讃する。》

ランボオがまったく閑却されていたわけでもないだろうが(メルキュール・ド・フランス版のランボオ作品集が出たのが一九一二年。日本初訳とされるのが柳澤健『詩集果樹園』東雲堂書店、一九一四年一二月二〇日、に収められた「醉ひどれの舟」)、これをランボオと小林の出会いとして考えるべきだというのは正しい判断だと思う。

佐野の立体派ふうのデザインを《彼の理解の方向が正鵠を得てゐる》と評価するということも、佐野を含めて小林や今ら新しい世代のランボオ解釈だったに違いない。

b0081843_20513629.jpg

アルチユル・ランボオ『地獄の季節』函、表紙は下記参照。
http://sumus.exblog.jp/7237571/

『新文学研究』第二号(金星堂、一九三一年四月)の広告頁も興味深い。第一輯に上林暁が「昭和五年後半期の芸術派」を執筆しているのが不思議な感じではある。
b0081843_20512197.jpg


b0081843_20511427.jpg

閑話出題(といってもたいていがすべて閑話なのです)。本日突然デジカメが不調になって、まったく写らなくなってしまった。これはやばい。以前使っていた古い機種を取り出して『地獄の季節』を撮ったのだが、暗いところの撮影はグッとレベルが下がる。シャッター速度もイラつくほど遅く感じる。やれやれ…。
[PR]
by sumus_co | 2012-07-28 21:34 | 佐野繁次郎資料

故郷の本箱

b0081843_19515573.jpg

『上林暁傑作随筆集 故郷の本箱』(夏葉社、二〇一二年七月三〇日)読了。小説集と違ってほとんど読んだ記憶がなかった。「「枯木のある風景」の出来るまで」くらいかな、再読感のあったのは。それでももうずいぶん昔のことだ。本書の感想というか、読み方は「撰者解説」が申し分なく語ってくれているように思う。よって省略。買おうかどうしようか迷った者は「撰者解説」を読むべし。個人的なテーマで気になった所だけメモしておく。

「「枯木のある風景」の出来るまで」より。上野桜木町の宇野浩二の書斎と応接間について。

《階段を二階に昇ると、右と左に部屋が別れていた。左手の部屋は宇野氏の居間兼書斎であったようだが、食事もそこへ運んでもらって食べていたらしい。私は右側の応接室に通された。日本座敷に椅子と卓子が置いてあった。床の間には、「白玉の歯にしみ通る秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり」、「考へて飲みはじめたる一合二合の酒の夏の夕ぐれ」という若山牧水の大きな軸が、二聯下っていた。階段寄りの襖に接して、エブリマン叢書などの洋書ばかりを並べた小さな本箱が置いてあって、その上に前記芥川の文章に出て来る、芥川から贈られたゴーゴリのテラコッタ像が置いてあった。芥川は、動坂で骨董を扱っていた田村松魚(田村俊子の前夫)の店で買ったのだと、宇野氏が話した。南側の窓に寄せて置かれた長椅子の上に、小出楢重のガラス絵の裸婦が横たえられていた。(この絵は二科会における小出楢重遺作展に出されていた。)》

「枯木のある風景」(小出楢重の絵の題名)は昭和七年暮れ頃に脱稿したそうだからそれ以前の様子であることは間違いない。牧水のこの二つの軸は今なら相当な金額になるだろう。

撰者がとくに熱心に集めた古本エッセイも深く同感しながら読んだ。

《しかし、古本を漁る楽しみは、早稲田だとか、本郷だとか、神田だとか、眼の肥えた、言わば摺れからしの古本屋を歩くよりも、街裏や路地などにあるちっちゃな古本屋で、思いがけぬ本を、埃を払って手に入れるのが一番の楽しみである。而もそれは安くなくてはならぬ。会心の本を安く手に入れた喜びが、一番大きいのである。それはあらゆる骨董趣味に通ずるものであろう。
 いつか僕のところへ訪ねて来た或る編輯者は、徳田秋声と葛西善蔵と嘉村礒多の本を蒐めているというので、僕が荻窪から買って来た葛西氏の「子をつれて」(大正八年、新潮社)を見せると、葛西氏の本ではこれだけ持っていないと言って、「これは珍本ですよ、珍本ですよ」と何度も呟いては、汗ばんだ指でペエジをめくるのであった。僕はそれを見ると、「その本、あなたにあげましょう」と言いたくて、口の端まで出かかっていたけれど、危うく思い止まった。僕は、葛西氏の小説集では「馬糞石」を欲しいと思っているが、なかなか手に入らない。阿佐ヶ谷の本屋で、以前二十銭で売っていたのに、買わなくて惜しいことをした。》(「大正の本」)

これが本当の古本好きというものである…というか、こういう古本好きが好きだ。というか、上林暁が好きになった。何冊か古い上林暁の本を持っていたけれど、「その本、あなたにあげましょう」とあげてしまった。今からでは難しいかもしれないが、上林暁を安く見つけてみたい。

その他、ブランデンや井伏鱒二、古田晁らの回想も味わい深いし、「小説を書きながらの感想」にみる文学至上主義も、いいもの読ませてもらったという感を深くした。

最後に文中に登場する飲食店などの名前メモ(数字は頁)。

紅雀 134
三楽荘 166
ぴのちお 166
長崎屋 172
おかめ 179
みち草 179
[PR]
by sumus_co | 2012-07-27 21:40 | おすすめ本棚

ビストロ・スポンタネ

b0081843_19284552.jpg

二年ぶりくらいでビストロ・スポンタネにてランチ。昔のブログ(http://sumus.exblog.jp/5269252/)を見てみると、最近はかなり値段がアップしているのが分かる。今は二千円からだが、前菜二品、スープ、肉か魚、デザート、珈琲か紅茶…これは十二分に満足のできる内容と思う。

b0081843_19283917.jpg
ホタテとニョッキ(豚足入りだそうだ)。

b0081843_19283246.jpg
ガスパッチョ。トマトと胡瓜が入っている。絶妙なバランスだった。

b0081843_19282528.jpg
法観寺(八坂の塔)。スポンタネから清水坂を上がって三年坂美術館へ向かう。歩き出すとすぐに汗だくになるくらい暑い。それでも中国、韓国、スペインからの観光客で賑わっていた。日本人はカップルが圧倒的に多かった。このあたりを歩くのは十何年ぶりかもしれない。かなり変貌している。

清水三年坂美術館を初めて訪れた。一階は売店と常設展示室。明治の金工、七宝、蒔絵、薩摩焼。象牙の彫刻が見事というのか何と言うのか、例えば貝殻をスーパーリアリズムで再現している。材質は象牙なのだが、彩色もリアルで、どう見ても貝殻にしか見えない。これって彫刻としての意味、あるのかな?

目的は二階の「ボリビアの織物」展示である。

《ボリビア織に初めて出会ったのは今から33年前、アメリカの蚤の市であった。以前からインディオの文化に興味を持っていてインカやプレインカ文明の土器や布の事は知っていたが、この様に色鮮やかで面白い文様が織り込まれた布がボリビアの高地で今も織られている事は驚きであった。両面織りで表にも裏にも美しい文様が織られていて、その美術品としての価値の高さを即座に感じ、たちまち虜になってしまった。》(館長・村田理如)

まったく見事な織物だ。緻密でありながら窮屈すぎないというか、ゆったりとしたものを感じさせる織り振りが何とも言えず良い。展示品のレベルも非常に高い。館長のコレクションだそうだ。一階の売店にはパウル・クレーの水彩画のセット絵葉書があった。店員さんに「これも館長のコレクションですか?」と訪ねたら、当たり前だが「そうです」との答え。居られる所には居られるんですなあ。

b0081843_19281562.jpg
鴨川の面を眺めてとぼとぼ帰った。汗が止まらなかった。
[PR]
by sumus_co | 2012-07-26 19:43 | 京のお茶漬け

新生第一詩集

b0081843_19181423.jpg

『新生第一詩集』(新生同人社、一九三七年一一月二〇日、174×195mm)が届く。某書店の目録に出ていた。久し振りにいい本が買えた。

臼井喜之助(臼井喜之介)が昭和十年八月に創刊した詩誌『新生』。その同人や関係者のアンソロジー詩集である。『新生』再刊第一輯(新生編輯所、一九四〇年)については別に書いたが、再刊ではない初刊の『新生』というのがどういうものか、これまで図版でも見たような記憶がない。『新生第一詩集』はどこかで見た記憶があるのだが、憶い出せない。

序文が百田宗治、序詩が西村陽吉。以下後日の検索のために執筆者一覧を引き写しておく。天野隆一、安藤真澄、麻生虔一郎、浅見勝治、秋沢弘子、有馬豊、臼井喜之助、岩崎宇三郎、右馬礼三、岡山聖虚、丘路映美、柏寿荘、加藤勤、上木猛、久保村薫二、小西武、鹿田直美、白石文造、杉山平一、俵青茅、田淵久市、高橋隆寿、丹治周子、辻孝三郎、土橋義信、南江二郎、半井康次郎、中林正也、萩原暎二、原田保、柊修子、法城寺閑、松井広、牧博美、三木敏、瑞木菁子、依田義賢、吉見茂、渡辺喜一郎。

臼井喜之助の略歴が《京都市・大正二年四月十五日生、京都二商出身、昭和十年八月「新生」創刊、引つづき編輯に従ふ。現住所、京都市北野瀧鼻町(電西陣三〇八六)、星野書店編輯部勤。(筆名、磯貝 純。》となっており、ウスヰ書房(臼井書房)を興す以前である。創業は昭和十三年十一月。

もう一人鹿田直美の略歴が気になった。《京都市・大正六年八月二十二日生。京都一工出身、歌誌「自然」に関係、新生同人、現住所、京都市三条河原町西入、そろばんや書店内。(電話本局二六一〇)》

『新生第一詩集』の発売元がそろばんや書店となっているのは鹿田直美が同人だからということか。鹿田(しかた)という名前は大阪船場の有名な書肆「鹿田松雲堂」を連想させる。そろばんや書店は鹿田一族の誰かの経営だったのかもしれない(?)。

b0081843_1917574.jpg


b0081843_19174921.jpg
杉山平一さんの詩もあった。

   愁雨

 一日一日と生きてきてゐたものを
 猫の仔は死んでしまつた
 瞳が海のやうに碧くひらいてゐた
 いつの間にか ぬか雨が柔い毛をしめらせてゐた
 樋がすすり泣きはじめた

b0081843_19174138.jpg
出田忠夫「煙」。この工場はどこだろうか? 

b0081843_19173292.jpg

[PR]
by sumus_co | 2012-07-25 20:10 | 古書日録

A4用紙でCDを包む

b0081843_203463.jpg


b0081843_2033595.jpg


b0081843_20334914.jpg


b0081843_20334255.jpg

A4用紙でCDをコノ包む方法が非常に優れているとFacebookで話題」というので真似をしてみた。個人的なひと工夫は、単なるA4用紙ではなく、展覧会などのA4チラシを用いるところ。紙質のしっかりしたもので、デザインのいいものは包み甲斐がある。

チラシを使ってCDのジャケットを作る(これは小生が思いついたのです)というのも以前に紹介したことがある。チラシはできるだけ保存するように心がけている。何枚もらっても無料だし、クリアケースに入れて飾るのもいいが、それ以外にもいろいろと使えるのだ。

CDにオリジナルのジャケットを
http://sumus.exblog.jp/11900014/

ちらしDMコレクション
http://chirashcol.exblog.jp/
[PR]
by sumus_co | 2012-07-24 20:46 | 写真日乗

黄葉夕陽村舎詩

b0081843_1951213.jpg


b0081843_195559.jpg

『黄葉夕陽村舎詩』(積玉圃、柳原喜兵衛、心斎橋通北久太郎町)。黄葉夕陽村舎詩五冊、黄葉夕陽村舎遺稿四冊、黄葉夕陽村舍文四冊。早稲田大学図書館にある『黄葉夕陽村舎詩』弘化四(一八四七)と同じ版木だろうが、発行は明治期と思われる。文化九年に詩が上梓され、文政六年に詩後編(以前書き入れのある端本『黄葉夕陽村舎詩後編』を取り上げた)、さらに天保、弘化と増補されたようだ(正確ではないので、ご確認を)。十三冊が最終形態らしい。明治二十九年に金刺芳流堂から、昭和五十六年には葦陽文化研究会から一冊本が出ている。

少し前、某書店のレジ横に積んであった。虫食いがすごいので十三冊まとめて千円だった。かなり迷ったが、もし綺麗な状態だったら…などと妄想してしまい、つい買ってしまった。いまだに富士川英郎『菅茶山』(福武書店、一九九〇年)さえ求めてないのに…。

七夕は曝書(ばくしょ)の時節だという(あれれ、とっくに過ぎてますけど)。風を通すつもりで十三冊平たく並べてみた。むろんもう虫はいない。かじり跡が軽くくっついているので、そっと各頁を剥がして自由にする。部分的に読みにくいところはあってもまったく読めないというわけではない。

パラパラっと読むでもなく開いていると「讃州」という漢字が目をかすめた。おンや? 詩付録下の「康定爵」という一文。戊午之冬というから菅茶山数え五十一歳、寛政十(一七九八)年。故郷に戻る路で岡山の斎藤文貫に宿した。文貫こと斎藤九畹(きゅうえん)は岡山藩士で大目付にまで上った人物。茶山より十ほど年下だったらしい。当然酒に及ぶ。文貫は古色鬱然(うつぜん)とした爵(しゃく)に酒を盛ってもてなしてくれた。その爵の胴には「康定」と大きく彫られていた。それを見た茶山はびっくり仰天(乱草如驚蛇)。どうやってこれを手に入れたのだと問いただした。

余曰康定是宋仁宗年号距今八百年所吾子何以獲之
文貫笑曰五年前遊讃州過丸亀市見之骨董店
我為不知問是何物店翁答曰古燈盞問其価答曰五百文遂買載帰也

「五年ほど前に讃岐の丸亀の骨董屋で見つけました。親父にこれは何だとたずねたら古い灯皿ですよというので、いくらだと尋ねたら五百文だと。それで買って帰ったんですよ」との答えに感じ入った茶山であった。これを使っていた大昔の人間達はすっかり忘れ去れて悲しむ人もいないが、この爵はちゃんとこうやってわれわれの前に残っているんだなあ…。

爵は灯皿などではなく、酒を温めるための器で、古代から用いられていた。康定は宋の元号。一〇四〇年だが、その頃の爵とはどんなものだろう? 五百文はいくらか? 仮に、そば十六文が今の五百円とすれば、およそ一万五千円少々になる。これは掘り出しものだろう。

b0081843_20422890.jpg
奈良国立博物館所蔵の青銅爵(中国・晩商二期 紀元前15~紀元前11世紀)。
[PR]
by sumus_co | 2012-07-23 20:55 | 古書日録