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週刊三階

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生活社の検印紙。先日の検印紙スクラップブックより。印は「学蔵会印」と読める。じつは以前から、この検印紙のデザインは佐野繁次郎ではないか、と疑っているのである。墨文字による、にじみ、とぎれ、が戦中から戦直後の佐野のイラストや文字に共通する。生活選書や「くらし」のシリーズの装幀も手がけており、生活社との関係は深いから、可能性は大いにあると思うが、確証はない。(花森安治作ではないか? とも思う)

÷

神田の某氏より紙モノをいろいろ頂戴した。その中に『週刊三階』の創刊号(8/11)と第二号(8/21)そして地方小出版の情報誌『アクセス』379号が入っていた。前者は東京堂書店の三階でガンバッテいる畠中理恵子さん手作りのフリーペーパー。B4大の紙(裏表に手書き、コピー印刷)を折り畳んでB7判の冊子にしてある。文字通り「三階」の書棚地図に、オススメ本の紹介などがびっしり、そしてちりばめられたイラストにみょうなインパクトがある。漫画家をめざしていた畠中さんならでは(?)。東京堂の三階はゆったりとしたいい空間なのに、神保町にかなり親しんでいる人でもまだ未踏という方は少なくないだろう。ぜひ一度のぞいていただきたい。このブログで紹介しているようなミニコミもきっと備えてあるはず。

後者の『アクセス』379号には、東京堂書店の店長・佐野衛さんが、畠中さんを東京堂書店にスカウトし、三階に地方小出版やミニコミのスペースを確保するまでの顛末を記している。まずは、坪内祐三さんに、どうしても残して欲しい「書肆アクセス」(地方・小出版流通センターのアンテナ店舗、昨年十一月閉店)の棚があるので、引き継いで欲しいと頼まれた。そこで佐野さんは、書肆アクセス店長だった畠中さんに、立ち話で入店を打診して、その場で来てもらうことに決めた。

地方・小出版流通センターから商品を出してもらうためにもかなり苦労したようだ。先行の書店(名前は出ていないが、三省堂だろう)が同様のコーナーを設置しようとしていて、東京堂は遅れをとった形だった。さらに畠中さんの入店時期が今年四月にずれこんだ。五月半ばオープンの予定が厳しくなった。畠中さんも不可能だと言ったそうだ。ここからが佐野さんらしい。

《私はこれまでも不可能性について考える癖がついている。そうして、それはできると判断した。
 以前洋書を担当していたとき、本の仕入は直接エージェントに出向いて棚から本を選んで仕入れていた。もちろん海外から送られてくる新刊案内を見ているのだが、現物を見るのが最上の選択だと思っている。今回も出向いていって、直接棚から抜いて揃えようと思った。》

《とにかくやってみようということにして、疑念だらけの畠中さんを引っ張って出向くことにした。》《こうしてなんとか地方出版社と小出版社の本とミニコミ誌が、オープンに間に合った。》

東京堂の洋書の棚は伝説的だが、小生もまだその棚があったころ、一度だけ迷い込んで、「なんじゃこりゃ〜」と思った記憶がある。思っただけで何も買ってはいないけど。なるほど、そういう担当者の熱意とセンスによって棚は作られているのだ。棚は人なり。東京堂の三階へ行くのが楽しみになって来た。とは言うものの、さて、次はいつ覗けることやら。
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by sumus_co | 2008-08-31 21:03 | 古書日録

大阪京都死闘篇

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書影がヨコになってますよ、と言われても、これが本文の向きなのである。『大阪京都死闘篇 武藤良子関西旅行記完全版』(わめぞ文庫001、500円)。9月6日(土)〜7日(日)の外市から販売開始だとのこと。

このブログでも紹介した武藤良子さんの大阪での個展、そのために西下した武藤さんの、大阪と京都での、浴びまくり(銭湯)、飲みまくり、歩きまくり、なつかれまくりの抱腹絶倒な数日間がつづられている。女流作家はやはり濃い。絵の作風と同じで、洗練されたスマートさとおやじ臭さが同居した文体というか趣味にへきえき、いや、感動した(!)。

かなり詳しい註がついているのが、関西人にとっても有り難い。巻末に南陀楼綾繁氏が「野放図なうつくしさーー私が見た武藤良子」を寄稿している。これはまた、本文とは違った意味で名文だ。
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by sumus_co | 2008-08-30 22:35 | おすすめ本棚

ブランデン詩集

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かつてスムース文庫で『一読書人の日記』を刊行した。神戸での震災後に、某書店に出た数十年にわたる日記帳の中から、書物に関係する記述だけを拾い出してまとめた内容である。かなりの読書人であり、また大変な古本好だったことがはっきり分かる。刊行時には、書き手は不明としていたが、じつはこの葉書など、手がかりになるものはいろいろ含まれていたのである。

『一読書人の日記』の読者のなかに一人だけ、ズバリその本人を割り出した方がおられた。たしかに、丁寧に日記(とくに学生時代の記述)を読めば、手間は多少かかるかも知れないが、特定するのはそう難しくない。ということで、その方には、現在、淀野隆三日記の校正をお願いしている。入力したテキストだけをメールで送信してチェックしてもらうのだが、入力ミスはもちろんのこと、オリジナルテキストの綴りまで推測して誤謬を指摘して下さる。驚きの洞察力である。そのお蔭で、『spin』02以後、間違いは極端に減った(今後ともよろしくお願いします)。

で、この葉書は、その日記の書き手が、寿岳文章にブランデン詩集『EASTWARD』について問い合わせた、その返事である。消印は昭和二十五年六月二十七日。『EASTWARD』は一九四九年に限定二五〇部版が寿岳文章によって刊行された(京都の便利堂から普及版)。

《おたづねのブランデン詩集〈EASTWARD〉は、何もかも小生がやり、その意味では向日庵版であります。発売は凡て東京都千代田区神田錦町三丁目十二番地、北星堂書店でやつてゐます。予約時に一冊一、三〇〇円、書留送料六五円、計一、三六五円ですが、恐らく既に予約超過ではないかと存じます。一度同店へたしかめてみて下さい、とりいそぎて》(読み間違いがあればご教示ください)

エドモンド・ブランデン(Edmund Blunden、1896-1974)は英国の詩人で、一九二四年から二七年まで東京帝大で英文学を講じた(淀野隆三が在学中だ)。これは英国でカツカツの生活をしていたのをブランデンの生涯の親友となった英文学者・斎藤勇(さいとう・たけし)が招いたのだという。彼は夫人と子供二人を故郷において極東の島国へやって来た。そのせいかどうか帰国後離婚している(というようなことはwebsite of Edmund Blunden参照)。

戦後も一九四七年から五〇年にかけて日本に滞在し、講演などに引っ張りだこの人気だったそうだ。記念碑も各地に残っている。著書も何冊も刊行された、そのうちの一冊がこれである。『一読書人の日記』の書き手がいかにも好みそうな本だと思う。
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by sumus_co | 2008-08-29 21:44 | 古書日録

季刊湯川

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『季刊湯川』第二号(湯川書房、一九七七年四月、表紙=平野遼)。都合七冊刊行された湯川書房の雑誌である。小生は二冊、古本屋で見つけた。ソムリエ氏は揃いを持っているという。某先輩より七冊揃いを譲ってくれると嬉しいお言葉を頂戴したが、まだ届いていない。期待せずに待ちましょう。

この『季刊湯川』の寄稿者が凄い。塚本邦雄、宇佐見英治、有田佐市、秦恒平、生田耕作。当時としてもやはり相当なものだったろう。

ということで、現在、『spin』04の編集作業中なり。小特集として「追悼 湯川書房・湯川成一さん」を編んでいる。湯川さんと永く親しくされていた戸田勝久さん、福永幸弘さんのご両人にご寄稿を願い、『sumus』4号の湯川さんインタビューを再録する。インタビュアーである古本ソムリエ氏にも思い出を書いてもらう。目玉は「湯川書房限定本刊行目録」、未定稿だが、これは圧巻となるだろう。

他に、オックスフォードの古本便りもスペシャル・ヴァージョンでお願いしているし、さらには、みずのわ出版特別企画の須藤護・佐田尾信作両氏の対談「宮本常一という問題提起」(海文堂書店でのトークショー記録)も収録される。むろん連載は続くので、次号も読みごたえバッチリです。十月初刊行予定。

÷

短時日のうちに完売した『spin』03。その理由はもちろん特集だった「佐野繁次郎装幀図録」があったため。それならば、図版を圧倒的に充実させ、西村コレクションの全貌を示すようなカタログを作ろうとなって、現在編集している。十一月一日(予定)から大阪のアトリエ箱庭で佐野繁次郎装幀展(仮称)を行うため、できればそれまでに刊行したいと思う。

÷

本日は『ほんまに』(海文堂書店)の取材があった。小生が次号(8号!)の「本の黒子たち」に装幀家として登場する予定。鈴木創士さんへの取材も終えたということで、これは次号が楽しみだ。H店員と編集長世良女史と、同誌の表紙を描き、奈良絵本を手に入れたいという無謀なエッセイ「古本訪ねて三千里」を連載しているイシサカゴロウ氏が来宅。

奈良絵本はさすがにウンチクも架蔵しないけれど、江戸時代の奈良絵の系統を引くような物語絵の断片は、その昔、古本まつりで手に入れていたので、それを見てもらった。氏の探しているのはあくまで室町時代の本物なのだが(金さえ出せばモノはあろうが)、江戸モノの断片くらいなら、あんがい安く手に入るよ、という話をする。
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by sumus_co | 2008-08-28 21:24 | 古書日録

湯川書房、最後の刊本

 〒657-0844
 神戸市灘区都通4-1-13 創文社
 メールアドレス sobunsha@kcc.zaq.ne.jp
 FAX 078-882-1251(担当者・延命)
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by sumus_co | 2008-08-28 18:25 | おすすめ本棚

検印紙スクラップブック

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検印紙ばかりを、ちょど切手のように、集めたスクラップブックである。某氏に頂戴した。スクラップ本体に280枚、173枚糊付したノートブックの切れ端三枚が挟んである。同一人のものだとれば、たぶん初めは思い立ってノートに貼っていったのだろうが(剥がし方が雑なので)、そのうち、ちゃんときれいにはぎ取って切手用のスクラップブックに並べたのかもしれない。

一部テーマ別になっているところもある。フクロウと鳥の図柄がけっこう多い。丸善、新紀元社、日独書院、改造社、白水社、羽田書店、金星堂、修文社、山と渓谷社、人文書院、大観堂、角川書店、筑摩書房……。他には、花や植物もかなりある。意外なのは壷。青磁社、三省堂、芸艸堂、揚子江社、蛍雪時報社、新英社……。動物、人物、山、建物、器物(ランプなど)、装飾模様などなど。一社で何種類も使っているところもあれば、ずっと同じものを使う版元もある。社名の記載なしも多い。奥付検印紙日録も参照されたし。

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ところで、数えているときにこの検印紙を見つけた。谷中安規の絵柄に似ている。先日のレッテルの例もある。『谷中安規の夢』(渋谷区立松濤美術館、二〇〇三年)には見えないようだ(?)。東宛書房は昭和九年から十八年までの出版物が確認できる。白鳥省吾の著書が目立つが、教育関係から時局的なものまで、いろいろ出した版元らしい。

「佐藤」印なので『学芸随筆第3巻 匠房雑話』(佐藤功一、一九三八年)か『各教科の自己法則性と教授の要諦』叢書、第1-5巻(佐藤熊治郎他、一九三六年)だろうか。

と思ったら、さっそく谷中に詳しい某氏よりご教示をいただいた。

《本は佐藤正彰訳の「ボエームの王」で、「佐藤」の印鑑はこの訳者のものでしょう》

ということだ。ただし某氏は谷中安規作であるという点については疑問視している。その理由は以下の通り。

《安規に裸婦がこのような座り方をしている図は幾つかありますが、その際顔の向きが真横にはなっていない、安規が蝶を描くときは翅をはっきりと4枚描くという相違点があります。とはいえ、全体の雰囲気は似通っているし、東宛書房の住所(麹町区六番町)が、内田百間の住所(麹町五番町)と近いことも気になります。残念ながら、安規の作か否か、今のところ確実な証拠は見つかっていません》

絵柄としてはいいものだし、否定し去ってしまうのも惜しいが、誰か他の作家である可能性も充分考えられる。とくに囲み線の描き方が谷中安規らしくないような気もする。

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先に紹介させていただいた牧野氏が発見された「上海/内山書店」のレッテルは神田の内山書店にも保存されていないというお報せをいただいた。貴重な資料である。
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by sumus_co | 2008-08-27 20:33 | 古書日録

紙魚繁昌記

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内田魯庵『紙魚繁昌記』(書物展望社、一九三三年三版)の口絵写真。《四十年代の魯庵》とある。明治四十年代か。慶応四年(1868)生れだから四十歳代というに等しい。

先日バラバラッとめくって、書斎を出て街に……、というくだりを目にした。あ、寺山修司はこれをパクッた、いや参考にした、のかと思って、そのまま数日が経った。今日、ブログに書いておこうと思い立ち、探してみてももう見つからない。この本じゃなかったっけ、と疑いはじめた。なにしろ耄碌してるのだ、最近。

ページをめくり倒して(倒さんでもよろし)、ようやく、《此頃氏が「新潮」三月号に発表した極めて興味深い氏一流の皮肉な詩趣を横溢したアンチ読書説がある。命題は『書斎を出よ』で、書斎の臭ひを脱せよといふ非読書論である》というくだりを見つけた。氏とは野口ヨネ(野口米次郎)のこと。だが、先日読んだのはここではない。もう諦めた。

ツンドクという言葉もこの本に頻繁に登場する。ツンドク礼賛である。ツンドクは魯庵の造語かどうか、それは知らないが、喧伝したのが魯庵だということは間違いないようだ。

《読書子の習慣として絶間なく新らしいもの珍しいものと漁るが故に勢ひ読書量以上の書籍を積むに到るは必然の結果である。且読書子としては自分の書架の書が尽く読古しの糟粕であるのは堪へ難い苦痛で、全然未読の或はマダ眼を通さないものが若干冊無ければ知識の探求が行詰つた心配がして心細さに堪へられない》

《ツンドクは決して無用でも呪ふべきものでも無い。書籍の身の上となつて見れば所謂韋編三度断つといふまでに余りに過度に濫読又は熟読数十遍数百遍されて表紙がちぎれ紙が破られ、手垢だらけ汚じみ膩(あぶら)じみるまで読まれるのは寧ろ虐待である。ツンドク先生の書架の上に美しく飾られて、アンカツトの一頁をだも切らず十年二十年は魯か五十年も百年も真新らしくウブのまゝに手厚く秘蔵されるものが一冊でも余計に有る方が永久に残存する所以で、書籍としては愛読者の知遇に感謝するのは勿論だが、ツンドク先生の手厚い保護にも亦深く感謝する》(大正十五年六月「學燈」所載)

さらに決定的な発言はこうである。

《書物は読んで利益があり興味があるのは勿論であるが、読まないでも亦書物から醞釀(ウンジョウ)される雰囲気に陶酔する事が出来るので、此の書物に酣醉して得られる忘我の恍惚境が愛書の三昧である》(大正十五年七月)

いよいよツンドクに励みたいものだ。
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by sumus_co | 2008-08-26 21:12 | 古書日録

季刊銀花百五十五号 2008秋

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「一九〇〇年生れのモダニスト 画家佐野繁次郎の装幀」特集が14頁組まれている。長い『銀花』の歴史で佐野初登場だそうだ。装幀本その他、西村コレクションより。写真が迫力だ。小生の寄稿あり(これは六月の東京古書会館でのレクチャーの要約になってます)。是非お求めを。表紙はこんなんです。

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文化出版局 二〇〇八年九月三〇日発行 定価1,450円
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by sumus_co | 2008-08-25 20:23 | 佐野繁次郎資料

福岡古書漁り記

先日紹介した『遊心』に凄みのある蒐集譚を執筆しておられた牧野氏より「福岡古書漁り記」という古本メールが届いた。福岡の古書店事情も分かって参考になりそうなので、お許しを願って一部引用する。桜新道は検索すると品川区にあるようだが、どうだろう。

÷

《福岡には九州大学があり、六本松と箱崎にキャンパスがあったので、それぞれ周辺にたくさん古書店がありましたが、箱崎はほぼ全滅、六本松ももはや二・三店を残すのみになりました。ご多分に漏れず、九大も順次郊外に統合移転中。そうなると、広島同様、古書店は全滅でしょうね。そういうわけで、まずは西鉄バスで草香江(六本松の次)へ。葦書房をチェック。
 葦書房には道路側の壁面に百円均一の棚があります。そこでの今日の収穫は:

[1] 阿部知二『道』(新潮社1943(昭和18)年8刷・定価1円90銭)装幀・挿絵は脇田和とあります。駅の改札口の挿絵に「口札改」、「口出」とあるのに注目。小説としておもしろいかどうかは読んでのお楽しみ。
[2] 共立数学演習講座『積分論・位相解析』(共立出版1962(昭和37)年初版5刷・定価350円)積分論は功刀金二郎・中西静、位相解析は吉田耕作・伊藤清三という豪華メンバー。これが百円とは!
[3] ランダウ・リフシッツ『統計物理学(下)』(岩波書店1963年3刷・定価600円)元パラ、極美。ランダウ・リフシッツの理論物理学教程のシリーズはすべて東京図書(旧・商工出版)の出版ですが、なぜか統計物理学だけは岩波が出しています。理工書専門の明倫館では第2版で上・下それぞれ¥1,500の値がついています。
[4] 岸田国士訳『ルナアル日記1894−1896』(白水社1938(昭和13)年・定価1円80銭、満・鮮・台北・樺 外地定価1円98銭)
[5]  岸田国士訳『ルナアル日記1900−1901』(白水社1940(昭和15)年10刷・定価1円80銭)

[4]には「桜新道 山陽堂書店」というラベルが貼ってあります。桜新道ってどこや? [5]には「海上 店書山内」というラベルが貼ってあります。へえ、あの魯迅が入り浸っていた内山書店か。1940年の上海から2008年の福岡まで、この本はどんな旅路を辿ってきたのでしょうか。もっとも、福岡からの直線距離では、東京より上海のほうが近いのですが。》

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《支払いをしたら、ポイントが溜まっていて、千円のキャッシュバックがありました。ご主人に福岡の古書店地図がないか訊いてみると、「古いのしかなくて、いま、どんどん店がなくなっていきますからね」とのこと。「香椎に行きますか?」と云うので、「香椎には古書店が残っていますか」と云うと、「いや、いま香椎の駅の三階で古本市をやっているのですよ」と云います。聞いてないよー! 出掛けにネットで福岡古書組合のホームページをチェックしましたが、そんなことは書いてありませんでした。もっとちゃんと広報してほしい。
 葦書房を辞去して、西鉄バスで「薬院駅前」、幻邑堂さんへ。店内をチェックするが、香椎のことが気になって集中できません。けっきょく、今日は次の二点だけ:

[8] 森銑三・柴田宵曲『書物』(岩波文庫1997年・定価660円)¥500
[9] 中国古典文学大系54『文学芸術論集』(平凡社1974(昭和49年)・定価2200円)¥1,500》

《薬院駅のドートルで一服して収穫物を点検してから、西鉄バス、JR電車を乗り継いで「香椎」へ。駅ビル三階の「納涼古本市」を見てまわりました。そこでの収穫は:

[10] ジュール・ヴェルヌ(田辺貞之助訳)『八十日間世界一周』(創元SF文庫1994年13版・定価480円)¥200。映画とその主題曲が好きなので。挿絵=南村喬之。
[11] トルストイ(中村白葉訳)『復活(上・下)』(岩波文庫1993年・定価410円+460円)¥400。いわずとしれた名作。
[12] デカルト(落合太郎訳)『方法序説』(岩波文庫1990年・定価410円) ¥250。旧訳が知らぬうちに入手できなくなっていたので。
[13] 安田武『昭和青春読書私史』(岩波新書1985年・定価480円)¥210。暗い時代に読書でからうじて生きる。
[14] 工藤宜『江戸文人のスクラップブック』(新潮社1989年・定価1500円¥700。江戸時代の儒者・詩人の大槻磐渓(1801−1878)がいっさいがっさいを張り込んだ11冊のスクラップブックの解読。英仏海底トンネル計画図まであり。おもしろそう!
[15] 中山省三郎訳『全訳ツルゲェネフ散文詩』(第一書房1933(昭和8)年・定価1円80銭)¥2,800。155ミリ×120ミリ×18ミリ。総革装丁、函入り。和紙に鮮明な印刷。たいへん美しい本です[下の写真]。初版千三百部と謳っていますが、こんな総革装の本をそんなに多く造ったとは信じられません。》《第一書房の美しい本をもう一度。現代の長谷川巳之吉よ、出でよ! なあんちゃって。》

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《ざっと以上が本日の収穫です。しごく満足して、15時40分博多発のレールスターで帰路に就きました。全日空のマイルが溜まったので、29日は休暇をとって上京します。東京古書会館の「書窓展」で掘り出し物にぶつかることを期待しつつ。》

う〜む、東奔西走、古本の日々ですなあ。
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by sumus_co | 2008-08-25 20:14 | 古書日録

日露の戦聞書

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『横光利一全集』第八巻(非凡閣、一九三六年)に貼付されていたレッテル。今日、たまたま整理中に発見した。神田の有楽堂書は新刊書店のようである。上部が破れているらしいのがちょっと惜しいなあ。

÷

さらに『歴史のかげにグルメあり』の余韻で、こんな本が目についた。宇野千代『日露の戦聞書』(文体社、一九四四年二刷、装幀=青山二郎)。これは裸本だが、たしかジャケットがあったと思う。宇野の舅、北原信明は明治六年生れ、日露戦争のときに第一軍近衛師団砲兵弾薬大隊付きの軍医として出征した。夫の父の昔語りを宇野がメモしたものだという。第一軍なので旅順攻撃については何も触れられていないものの、東京から出発して朝鮮へ、さらに鴨緑江を渡ってロシア陣地へ進軍するさまは、あまりにリアルすぎて、滑稽でさえある。

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面白い逸話満載ながら、ここではグルメに絞っていくつか引用する。日本軍は明治三十七年五月初め、鴨緑江の対岸にある要塞・九連城を落した。

《九連城の分捕り品の中でな、始めて見て感心したものが三つあつた。武器では機関砲だが、外に携帯野菜とでも言ふか、乾燥野菜だな。乾燥して圧縮した奴だが、重箱くらゐの大きさの、白い塊りがあつた。それを、ほんの拳大くらゐに砕いてバケツに入れ、水を入れて打ち込んでおくと、それが、バケツに一ぱいのキヤベツになるんだ。まるで手品のやうな具合にぢやな》

三つ目は水に濡れても大丈夫な繃帯パック。それにしても、われわれが即席麺でお世話になっている乾燥キャベツはすでに実用化されていたのだ(!)。とにかく装備についてはロシア軍が圧倒的に贅沢だった。このときまで北原たち兵士ですら機関砲を見たこともなかったというくらいだから驚く。それで戦争をおっぱじめるのだから。さらに進軍、奉天から撫順へ続く鉄道の駅にはロシア軍の軍需物資が放置されてあった。

《兵隊の食糧である缶詰類、塩鮭なども無闇にあつたよ。露西亜でも塩鮭は食べてをると見える。まあ、さういふものは、わが兵たちも持てるだけ持つて行つた》《兵隊たちももうながい間といふもの碌なものは食べてをらんのだ。その鮭は甘塩でうまかつたなア。缶詰めと言ふと小さいものと思つてをるけれども、肉の缶詰なんぞは石油缶くらゐもあつて、歩兵隊の者なんぞは重くて持てんのぢや。》

《支那と言つても、今で言ふ満州だが、この辺りの常食は高梁ぢやアない、玉蜀黍だ、玉蜀黍を粉にしてつくつたものでな、ちやうどカステラのやうな具合にふうはりとしてをつて、見たところはまことに旨さうに見えるのだが、食べて見ると、少し酢つばいやうで不味い。食べ物と言へば、満州に大豆からとる油がある。今日で言へば笑はれて了ふやうな話であるけれども、兵隊が、あの大豆の油で揚げ物をしても好いかと訊ねに来た。それをわしは、豆の油は中毒するから食ふなと言つたものだ。大笑ひだよ。》

日露戦の兵隊たちはカルチャーショックの連続だったろう。何しろ、戦闘による死傷者よりも、病気で送り返される兵士の方が多数を占めた。食事のせいで、脚気と胃腸病が多かった。さらに夜盲症(鳥目)になる兵隊が続出した。要するにビタミンA不足。

《鶏、豚なんぞの肝臓を食べさせて、二十日くらゐのことで病人はみな治つて了つたが、一時は騒ぎであつたよ》

そして旅順陥落のニュースについてはこう書かれている。

《あれは一月元旦の夜であつたが、旅順陥落の報が全線に伝はつた。その晩一晩といふものは、もう夜通し万歳万歳でもつて眠られなかつたよ》

しかし媾和条約が締結されるのはそれから九ヶ月後のことになる。媾和当時の日本軍は四十万、一方のロシア軍は六十万にふくらんでいたという。

《あのまま戦争を続けて行つたならば或ひは勝てんやうな場合もあつたかも知れんとさう言つてをる者もある。だが、兵隊は何にも知つてはをらんからなア。媾和といふことをきくと、これぢやアまだ足りん、もつと遣りたいとみな言つたものぢや。とにかくここで、開戦以来二十ヶ月、日露の戦は終つた。》

この薄氷の勝利が日本にもたらしたものは計り知れない。善くも悪くも。
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by sumus_co | 2008-08-24 21:29 | 青山二郎の本