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カテゴリ:佐野繁次郎資料( 112 )

文藝 昭和三十年九月号

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久方ぶりの佐野繁次郎資料。『文藝』昭和三十年九月号(河出書房、一九五五年九月一日)を頂戴した。御礼申し上げます。上は銀座特集の記事に添えられた佐野のカット(一番上は自画像)。下に目次を掲げておくが(目次の挿絵も佐野である)、執筆陣は新旧とりまぜて手堅くまとめている感じが強い。

なかでは、個人的な好みとして石塚友二「若き日の横光利一」が良かった。東中野に住んでいた時代の横光の生活を彷彿とさせる。菊池寛と袂を分かったと文壇的には見なされていたが、その実、菊池は横光に毎月二百円を補助していた。石塚が覗き見た横光夫人(病没する)の家計簿(それは雑誌『婦女界』の行間につけられていた)からそれが判明するという話。

銀座特集では東郷青児「銀座放浪記」が面白すぎる。カフェー年代記にもなっているし、これは貴重な文章だ。青山二郎の「銀座酔漢図絵」は青山人脈を例の独特の筆致で描いたもので、むろん文集に収録されている(ということは読んでいるはずだが、すっかり忘れて、面白く読了)。それに較べれば岡本太郎の「モンマルトルと銀座」は凡庸すぎていただけない。

その東郷青児と岡本太郎の確執について「文芸往来・美術 二科の小爆発」というゴシップ記事が載っていた。《二科を私物化していた東郷の番頭格であった三人》高岡・野間・鈴木の三人が二科を脱退して一陽会を結成したことから始まり、《抜け目のない東郷も、数回にわたる会員総会の席上、岡本太郎の猛烈な攻撃と糾弾をうけて遂に退陣》(岡本太郎……爆発だ!)、《いままで二科にいてもいなくても同様であり、別に二科の看板が無くても堂々と通用する岡本がのり出した以上、かれの胸中には遠大なる計画が描かれていることだろう。かれの登場によって恐らく、画壇の地図は一変するかもしれぬ。》と続く。

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「人道の英雄」は少々キザったらしい加藤周一(《四年間の欧米遊学を終えてこの春帰朝した新鋭》!)の小説仕立てのパリ報告。パリで知り合った北欧美女がシュバイツァー(S博士)の病院へ奉仕に行くが、シュバイツァーの現実に接して人が変わったようになって帰って来た、という出来事を自身のパリ生活を織り込みながら描いている。モロッコ問題など、一九五〇年代のパリおよびフランスを取り囲む状況については、実感をともなってうまく伝わっていると思う。
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by sumus_co | 2013-07-21 21:17 | 佐野繁次郎資料

佐野繁次郎関連記事

最近、佐野関連の資料が次々と集まったのでまとめて紹介しておく。まずは『銀座百点』No.700(銀座百店会、二〇一三年三月一日)に宇野亜喜良が「聞き書き佐野繁次郎」を執筆している。

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《東京オリンピックのポスターで知られる亀倉さんは、佐野さんのことを知っていて、あの独特のイラストレーションの描き方を話してくれたことがあった。ハードボイルドなルノワール、はたまたグラマラスにデフォルメされたエゴン・シーレといった感じの、階調のない黒い線で描かれた画風は、濃度の高い4Bとか6Bで力一杯に描かれ、凸版で黒白に製版するという話であった。佐野さんという画家は、印刷というメカニックをよく知っている。グラフィックデザイナーの方法論である。》

この亀倉雄策の回想する黒い線というのは『佐野繁次郎装幀集成』の巻頭に出ている挿絵原画などがいい例だろう。ただ、全部が全部そのような調子で描いたというわけではなく、もっと柔らかいタッチの線画もある。

それから、かとう美術の『コレクションカタログ』(二〇〇三年一二月)に「佐野繁次郎 ドローイング、コラージュ 68.5×51cm サイン ¥360,000(額共)」が出品されていたのを発見。一九六〇年代に得意とした動物(犬、馬?)の抽象形態。

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もうひとつ、『第9回現代日本美術展』(一九六九年)に「母と子」(一九六〇)を出品している。残念ながら図版は掲載されていないが、この作品は『佐野繁次郎展』図録(東京ステーションギャララリー、二〇〇五年)に出ているので確認できる。

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by sumus_co | 2013-05-05 20:34 | 佐野繁次郎資料

アート・トップ 33号

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『アート・トップ』33号(芸術新聞社、一九七六年四月一日)、「現代日本の実力画家(3)佐野繁次郎」が掲載されている。大判のカラー図版十二点、モノクロ十三点、装幀本、記録写真を掲載。ちょっとした図録のおもむきあり。これは早くから架蔵していたが、最近また一冊入手した。

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佐野繁次郎の他にもいろいろ記事があり、内容はかなり濃いなと感心するのだがなかでは連載「画学生24時間密着取材レポート」の第四回が貴重。大森駅前で焼き芋を売って生計を立てながら絵を描いているという宮沢佐一さんを紹介しているなかに《銀座の画廊にて》と説明されている写真があった。そして、そこに写っているのはなんと洲之内徹の現代画廊なのだ。

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現代画廊とはどこにも書かれていないが、もちろん、宮沢さんが絵を見せているのはどう見ても洲之内その人に違いない。『気まぐれ美術館展』の図録に載っている画廊の写真を調べてみると、椅子がそっくり同じである。大森界隈で焼き芋を売っているのなら、大森に長らく住んでいた洲之内とはそこで知り合ったとも考えられるが、宮沢さんは長谷川利行が好きらしいから、現代画廊をわざわざ訪ねたのかもしれない。黒ずくめの洲之内は若々しく見える。一九七六年なら六十三歳になるわけだ。雑誌というのは、こういうオマケが嬉しいのである。
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by sumus_co | 2013-03-10 17:43 | 佐野繁次郎資料

佐野繁次郎の装幀本展

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広島市立中央図書館
http://www.library.city.hiroshima.jp/guide/library/chuou/index.html

既報したトークショーは都合により中止となりましたが、西村義孝氏による講演会が開かれます。お近くの方はぜひご参集ください。

1.日時:3月24日(日)14時~16時
2.場所:広島市立中央図書館 セミナー室(定員40名先着順)
3.講演テーマ:佐野繁次郎の作品蒐集、装幀本を中心に

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by sumus_co | 2013-03-10 17:39 | 佐野繁次郎資料

佐野繁次郎装幀展 in 広島

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『かんだ』209号(かんだ会、二〇一二年一二月三〇日)、西村義孝「神保町彷徨(4)藁の効用」掲載。西村氏はさまざまな困難が生じた昨年を振り返りつつ阿川佐和子さんの著書から元気をもらったことに触れ、阿川さんが「スミスの本棚」で『佐野繁次郎集成』を紹介してくださったことに及ぶ。

そして今年の三月九日から四月七日にかけて広島市立中央図書館で佐野繁次郎の装幀展が開催されることを告知している。会期中の三月二十日に阿川佐和子さんを招いた座談会が開催される予定である。小生も参加します。詳しいことはあらためて。
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by sumus_co | 2013-01-15 20:48 | 佐野繁次郎資料

アイデア354号/古本倶楽部255号

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古本好きの間でこのところ話題になっている『アイデア 日本オルタナ出版史1923-1945 ほんとうに美しい本』(誠文堂新光社、二〇一二年八月一〇日、表紙デザイン=白井敬尚)を入手した。言うまでもなく往年の『別冊太陽 本の美』(平凡社、一九八六年)を連想させる内容だが、美と本というキーワードは使っていても「装幀」という観点ではなく、編集人あるいは発行人によって区分したことで、また新たな風景が眼前に現われたという感を深くした。

書物の外観だけを問題とせず、版面や奥付、書き込み、挟み込み、内容見本などのツキモノにまで目配りを怠らないばかりか、原稿や自筆の品々までも周到に図版として取り入れたセンスは古本者ならではのこだわり。

平井功纂輯の『游牧記』第一巻第四・五冊(一九二九年)奥付。
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本誌に協力している扉野良人氏が『ドノゴトンカ』という雑誌を編輯発行しているが、その元版の『ドノゴトンカ』(ドノゴトンカ発行所、一九二八年創刊)がこちら。
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驚いたのは秋朱之介が既存の詩集の上に自らの詩を直筆で書き込んだもの。その一作を図版から引き写してみる。

  中原中也

 アテネフランス[ママ]の学生で
 ランボー気どりのかつこうで
 出版屋に訳詩を売りこんでいた
 中原中也と
 いう少年が
 持ち込んできたランボーの学生時代の詩集を
 [消=私は]日本で
 最初に私
 がこさえた日本限定版クラブの一冊として
 刊行してやつた、
 その印税で
 私は彼と千葉の船橋というところに
 遊びに行つて酒をくんで
 二人の持金全部を使い果たした、
 かへりには
 二人共無
 一文なので船橋から東京迄気[ママ]車のレール伝いに歩いてかへつた、
 東京に着いた時は二人共つかれと空腹で
 へとへとになつたことを半世紀後の今日になつても
 忘れない、
 中原は死ん
 で詩集や
 伝記まで出ているが、最初の本がどんないきさつで
 出版された
 かということなど、伝記のどこにも出ていない、

まさにオルタナ魂だな、これは。
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その秋朱之介が出版した『ヴエニュス生誕』(裳鳥会、一九三四年)。佐野繁次郎の絵。
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こちらは中野書店『古本倶楽部』255号「特集・探偵は古本屋に居る。」(二〇一二年九月)より。巻頭カラーページがさすが中野さんという品揃え。そのなかに佐野装幀本が二冊出ていた。『甲虫殺人事件』のカバーがこんな図案だったとは知らなかった(!)
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by sumus_co | 2012-09-07 20:56 | 佐野繁次郎資料

地獄の季節 今日出海

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先日、今日出海「地獄の季節」のコピーを牛津先生より頂戴した。深謝。『新文学研究』第一号(金星堂、一九三一年一月)掲載。小林秀雄『地獄の季節』(創元社、一九三〇年一〇月二五日)の紹介文である。

《日本の現文壇には仏蘭西文学の翻訳が漲つてゐる。どれもランボオより出でた新しい文学である。然るにランボオが常に閑却されたのは一つの不思議に他ならない。》

《ところで小林秀雄が一年有余日々この翻訳にあたつて、やつと完成したことは、喜んで余りある。ランボオと小林秀雄、この組み合はせに関して、私は長々しい論文の題目を発見する。小林の頭脳は杜撰な批評家の頭には一つの神秘であらう。小林の正しい論理を奇智といふコケすらゐる程だ。だが漠然小林は並々ならぬ存在であることは解られて来たやうだ。「地獄の季節」一篇はランボオを理解するために、新しい文学を建設するために、そして小林秀雄を理解するために、充分な意義を有するものと私は確信する。
 終りにこの本の装幀は、近頃出版されたどの本よりも美しく立派だ。佐野繁次郎の腕は勿論、彼の理解の方向が正鵠を得てゐることを賞讃する。》

ランボオがまったく閑却されていたわけでもないだろうが(メルキュール・ド・フランス版のランボオ作品集が出たのが一九一二年。日本初訳とされるのが柳澤健『詩集果樹園』東雲堂書店、一九一四年一二月二〇日、に収められた「醉ひどれの舟」)、これをランボオと小林の出会いとして考えるべきだというのは正しい判断だと思う。

佐野の立体派ふうのデザインを《彼の理解の方向が正鵠を得てゐる》と評価するということも、佐野を含めて小林や今ら新しい世代のランボオ解釈だったに違いない。

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アルチユル・ランボオ『地獄の季節』函、表紙は下記参照。
http://sumus.exblog.jp/7237571/

『新文学研究』第二号(金星堂、一九三一年四月)の広告頁も興味深い。第一輯に上林暁が「昭和五年後半期の芸術派」を執筆しているのが不思議な感じではある。
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閑話出題(といってもたいていがすべて閑話なのです)。本日突然デジカメが不調になって、まったく写らなくなってしまった。これはやばい。以前使っていた古い機種を取り出して『地獄の季節』を撮ったのだが、暗いところの撮影はグッとレベルが下がる。シャッター速度もイラつくほど遅く感じる。やれやれ…。
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by sumus_co | 2012-07-28 21:34 | 佐野繁次郎資料

ある昭和庶民の軌跡/かんだ


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寺澤正夫『ある昭和庶民の軌跡』(私家版、一九八九年五月三〇日)。カバーと口絵に佐野繁次郎の油彩画が色刷りで掲載されている。佐野集成には記載されていない。Mさんが日記に書いておられたのであわてて入手した。

《本書の口絵「無題」は、昭和十年(一九三五)佐野繁次郎画伯から贈られた記念の遺作です。
 氏は大阪船場の老舗に生まれた生粋の浪速ッ子、美校を卒へ、フランスに留学、親友佐伯祐三・米子夫妻らとバリで画業に精進、一九三〇年帰朝以来各方面で活躍、二科会・二紀会の重鎮としてジャーナリズムの寵児でもありました。私は記者時代から交遊を重ね、公私ともに多くの文学的示唆を与えて頂きましたが、氏は昭和六二年(一九八七)暮、八十七歳で他界されました。しかしその朴[ママ]報は、遺言により一切公表されないまま今日に至っています。昨年の十二月熱海水口園に居られる未亡人に思い出の絵の所有をお伝えし、お許しを得て、本書の巻頭に飾ることができました。謹んで佐野繁次郎画伯のご冥福をお祈りする次第です。》(序にかえて)

かなり間違いの多い紹介だが(美校には入ってもいないし、パリへ行ったのも佐伯歿後)、臨終に関する情報は貴重であろう。巻末年譜によれば寺澤正夫は一九〇七年一月大阪市南区木津生まれ。一九二九年、新潮社入社。図書出版部、雑誌編集、新興キネマ大泉撮影所宣伝部、日本ビクターレコード、ボリドールレコード文芸部デレクターなどを勤めた後、藝能プロダクションを主宰。一九四一年、日立製作所に入社。戦後も日立および関連会社に勤めていたようだ。

《佐野繁次郎には、長く交遊を乞いいろいろの方面で沢山の制作を頂いた。文学雑誌「文学時代」の表紙には創刊以来毎号華麗なタッチで飾ってくれた他、単行本の装幀や挿画など多かった。
 特に東京日日新聞に横光が連載した『寝園』及び『旅愁』の挿画、日本画風の水墨画を取入れ新聞ジャーナリズムを圧倒した。彼は若い時から文才にも優れ、「三田文学」に創作を発表した。》(「世田谷に住んだ文人墨客覚え書」)

「旅愁」の新聞挿絵は藤田嗣治である。まだ全部読んでいないので佐野が他に出ているかどうかは分からないが、体験談はともかくとして、事実関係についてはちょっと雑な書き方なので注意が必要だ。

 *


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『かんだ』季刊・夏二〇七号(かんだ会、二〇一二年六月三〇日)。かんだエッセイ「神保町彷徨(2)吉田健一蒐集記」西村義孝掲載。佐野本蒐集家として名高い西村氏は吉田健一のハード・コレクターでもあった。とくに吉田健一が署名して献呈した本を網羅的に集めるという最もハードルの高いコレクションを目指していたそうだ。七十八人、百七十冊ほど集めたという。宛名が違えば同じ本でも買い求めることは言うまでもない。

ところが佐野繁次郎を二〇〇〇年から集め始めたため、それらの吉田健一署名本が軍資金に変って行った。《署名本は佐野本へ化け、いまでは署名本は二十冊もありません》とか。残したのは草野貞之宛『でたらめろん』、白洲正子宛『シェイクスピア』、河上徹太郎宛『交遊録』、三島由紀夫宛『残光』など。

現在は吉田健一が寄稿している雑誌や資料(非売冊子、全集見本、帯の推薦文など)がターゲット。全集未掲載の著作全集を作るのが目標だそうだ。これはかなり難関のようにも思えるのだが、西村氏なら相当なレベルまで集めてしまいそうだから恐ろしい(?)。

なお、その西村氏が二十年来探していながら見つからないのが『若い人々のために』(池田書店・人生叢書七、一九五四年九月三〇日発行)だとか。ありふれた本の方が見つけにくいらしい。

  *
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by sumus_co | 2012-07-14 20:56 | 佐野繁次郎資料

芸術新潮 第二二六号

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『芸術新潮』第二二六号(新潮社、一九六八年一〇月一日、表紙=熊倉順吉)「ぴ・い・ぷ・る」欄に「装幀」というテーマで佐野繁次郎が短い文章を書いている(あるいはインタビューか?)。集成の著述リストから漏れていた。矢部さんにご教示いただいた。

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《本の表紙は字だけがいいと思います》と述べているが、他に野中ユリもこう書いている。

《活字と紙だけが本の要素なので、装幀などもともとなかった。紙の上に、いきなり活字が場を占める。紙が真白であり、活字が真黒であることが現前するのみだ。「瀧口修造の詩的実験」において、このことが十全を越えて実現された。》

清宮質文もシンプル派である(この一文があるから矢部さんは重ねて求められたのか)。

《私の好きな装幀は単純なもの、やはり欧州のものになります。それも昔ながらの文字の他にはわずかに飾り罫が使ってあるくらいのもの、また千代紙風の紙をうまく使ってあるものなども好きです。大分昔、装幀をやっていた父が、「点一つ打っても装幀なんだがなかなか認めて貰えない」とよくこぼしていましたが、そういう時代は来るのか来ないのか、本屋の店頭の賑々しい販売戦争を思い浮かべるとどうも来そうもないように思えます。》

父は清宮彬。白樺派の一員だった。さらに杉浦康平のこの言葉は本の本質を現しているかもしれない。

《語り部にも語れない本、どうしても手にとり、眼でみ、視触し一体化する本をつくってみたいというのが、装幀(いつも私は造本といいなおす)をたのまれたときの決意になる。》

本は中身じゃない。
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by sumus_co | 2012-06-10 14:30 | 佐野繁次郎資料

かんだ 206号

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『かんだ』206号(かんだ会、二〇一二年三月三〇日)を西村氏より頂戴した。巻頭「かんだエッセイ 神保町彷徨(1)」として西村義孝「佐野繁次郎を探して」が掲載されている。佐野本蒐集の過去・現在・未来が語られており、改めてその圧倒的なエネルギーに感嘆させられる。『かんだ』は池谷伊佐夫さんの編集なんだ、なるほど。

スミスの本棚に『佐野繁次郎装幀集成』登場
http://sumus.exblog.jp/9842097/

佐野繁次郎エッセイ集成
http://sumus.exblog.jp/12863593/

佐野生原稿「幽霊か」
http://sumus.exblog.jp/10933778/

  *

その西村氏より神保町のこぼれ話が届いた。あまりに面白いので採録させてもらう。

《余談ですが、年配男性のキツイ一言を2件(発言者は違う人)聞き、当方の耳に残りました。

1件目は、田村書店前でタダの古本BOXから全ての本を持ち去る男性がいて、年配男性が「品がないことするな、全部持っていくなんて、あとの人へ残すものだ」と。

2件目は、先月末に新装開店した東京堂書店(コーヒー店を同じ敷地内に併設)の会計で書店員へ、年配男性が「この店は何屋ですか、何がしたいのですか。40年通って前の店を尊敬していましたが、グッドバイ東京堂書店」と。》
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by sumus_co | 2012-04-10 20:52 | 佐野繁次郎資料