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カテゴリ:京のお茶漬け( 87 )

京名所三日案内

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尚学堂さんでの収穫を一冊。『京名所三日案内』(美術月報社、一九一五年一一月五日)。発行所の住所は京都市下京区古門前大和大路東入元町三百五十八番地、印刷所は「四日市印刷所」で住所は京都市下京区三条通麩屋町西入弁慶石町四番戸。三条通りは印刷・出版街であったようだ。以前紹介した点林堂印刷所日本写真印刷も三条通りにあったことで分る。

タテ12.5cm、ヨコ6.5cmと掌サイズでポケットにもスッと収まる。三日でどう京都を巡るかというと

《第一日 御所を中心として其付近の社寺名所より岡崎公園大典記念博覧会に及ぶ
 第二日 円山公園より洛東の名所を探り伏見桃山御陵に参拝して宇治に遊ぶ
 第三日 加茂下上の両社より大徳寺北野天満宮を経て高雄観楓に終る》

そうである。大典記念博覧会は大正四年十一月の大正天皇即位大礼を記念して岡崎公園を中心に開催された。

下は折り込み地図。赤線は「京電」(京都電気鉄道)で大正八年に京都市に買収され市電となった。京阪電気鉄道は明治四十三年運行開始だが、阪急京都線(京阪神急行)が開業するのはまだまだ先の話である。

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この小冊子の後ろ三分の一は白紙ページ、メモ用に使いなさいということで、旧蔵者はこんな地図を残している。

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応天門は平安神宮のことだが、1〜3の番号をふられているのは旅館だろうか、飲食店だろうか? 数字は何を意味するのか? 

 1 津の実 一・一・乙
 2 梅屋  二・二・甲
 3 安達  三・三

興味は尽きないけれど、判明したところで世の中が変るというほどでもない。

  *

以前(二〇〇九年九月四日)このブログで文学保管館(あなたの本や資料を置いておいてあげます館)の提案をした。

京都近代文学館などできるはずもない
http://sumus.exblog.jp/11933680/

否定的なコメントもいただいたが、そのアイデアにかなり近い《蔵書持ち寄り「集合本棚」》というものが構想されていると朝日新聞(二〇一三年二月一一日)に出ていた。発案者は成毛眞さん(マイクロソフト日本法人元社長)。

《蔵書を持ち寄り、オフィスや店舗の空き空間を利用して共同で本を所蔵。持ち主や利用を許可された人は、その場で自由にすべての本を読めるという計画だ。》

《成毛さんはファッションや料理、歴史など、街の特色に合わせた集合と本棚を各地に作れば、事業化も可能だと考える。「会員制にして低料金で利用してもらえば、書店や図書館とは異なる本との出会いの場になるかもしれない」》

考えはまったく同じというわけではないが、持ち寄りと課金の基本アイデアは共通している。管理がしっかりしていれば、十分成り立つ方式だと思う。
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by sumus_co | 2013-02-12 20:16 | 京のお茶漬け

鴨東四時雜詞

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昨日の『都繁昌記』とほぼ同時に求めた写本もついでに紹介しておく。『鴨東四時雜詞』(中島棕隠作の著名な竹枝歌)と題簽にはあるが、それ以外にも中国の漢詩および日本人の漢詩も数多く抜き写している。前半では竹枝歌(もと中国で俚歌=民謡から始まったが、遊里の情景をうたう連作として幕末に流行した)や秋山玉山「春宵観秘戯図引」(本書では「観春宵秘戯図引為木下侯題」)を筆録しており、知恩寺でのエロトロジーを引き摺っている感じ。ただ後半の日本人の部はさまざまなタイトルを気ままに写したように見える。

何かの参考に(何の参考にもならないでしょうけど)日本人の収録作者だけ列挙しておく。勝安房(勝海舟「辛巳晩秋泛船墨江述懐」)、松斎散人、熊谷老泉、米川隆生、島岡鹿国、亀谷省軒、阿満得聞、島尾得庵、藤沢南岳、安積艮斎、岩垣松苗、細川頼之、藤森弘庵、土屋弘、中尾雨山(長尾雨山?)、赤松渡、稲垣簡、相良常長、以上。島岡鹿国の註に《和州人乃余師也》としてある。なかで赤松渡は高松市初代市長・香川県博物館主事で漢詩をよくした人物。大正五年歿。ということで明治末頃の写本ではないかと考える。

『鴨東四時雜詞』を全頁。これも参考まで。虫食いで読めない文字も少々、お許しあれ。元版(百二十首本の初刊は文政九年、天保三年版もあるようだ)は「日本の古本屋」に15,000円前後の値段で何冊も出ている。祇園の春夏秋冬を巧みに歌って、さすがに文字遣いが凝っておりスラスラとは読めそうにもないが、そう堅苦しく考えるほどの内容でもないだろう。頼山陽は

《かの中島文吉(同門)と申す、是は御存じの先年、穢名あり候者、近来、江戸より帰り、『鴨東四時詞』と申す小冊を出し、竹枝六十五首、猥褻瑣細を極め申し候。元来、竹枝と云ふもの、如何の物と云ふ事を知らぬ様に相ひ見へ候。それはともあれ、あの通の名を被りて、また帰郷、誰も取り合はぬ筈のところ、ヤハリ用ゐ申し候者もこれ有り候、世は広きものに候。》(『菅茶山』読書ノート

と中島文吉(棕隠)をこきおろしている。棕隠は京生まれの秀才だったが、何事か京に居られないようなことをしでかして江戸へ下ったそうだ。ふたたび京都に舞い戻ってくるとは…。なお山陽の言う六十五首本『鴨東四時詞』は文化十一年刊である。

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とにかくこれだけきっちりと筆写するのは相当な根気と熱意が必要と思って、感心することしきりである。
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by sumus_co | 2012-11-04 21:46 | 京のお茶漬け

夢みて老いて色塗れば野菊である 耕衣

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因果道士著・中島棕隠軒編集『都繁昌記』(田中屋専助、村上勘兵衛、吉野屋仁兵衛、丁子屋源次郎、慶応三年補刻)。安価だったが、題箋が剥がれてなくなっている以外はきれいな本だ。巻首に「青木」の朱文角印と「椹木禎」の朱文円印あり。

初刊は天保八年。新稲法子『都繁昌記註解』(太平書屋、一九九九年)という書物があるようなので内容はよく知られているのだろう(洛中洛外虫の眼探訪というブログの「『都繁昌記』を読む」は参考になる)。

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内容は京都の「乞食」と「セウベントリ・コエトリ・コエトリヤ」と「劇場(シバヰ)・優人(ヤクシヤ)」についてその現象形態と構造の両面を微細に描いている。それぞれの組織の構造とその経済を把握して紹介しているところが非凡であろう。描写も案外と平易である。三都穴さがしとして同様な記事を孫引きしたことがあるが、とにかくいきいきと幕末の京都の世情を描き出していて楽しめる読物。

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序によれば浪華蘭恵堂主人がたまたま書き始めの原稿を目にして金五両で全部の原稿を買い取ることを約束してくれたとある。そこでそれを意気に感じて先約の書林某へ断りを入れ一気呵成に書き上げたとか。《俚諺云拙速不如巧遅余甘受其嘲者歟》。五両を単純に五十万円と考えると、そうたいした額でもない。棕隠が執筆を思い立ったのは寺門静軒『江戸繁昌記』に刺激されたことによる。その静軒は十両以上もらった《則所換繁昌記一編不下十両》と同じ序には書かれている。とはいえ有り難い申し出であることは今も昔も変わらないだろう。ただ巻末には《次編三編追刻》と明記されているにもかかわらず刊行された気配はない。惜しい。
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by sumus_co | 2012-11-03 21:39 | 京のお茶漬け

ビストロ・スポンタネ

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二年ぶりくらいでビストロ・スポンタネにてランチ。昔のブログ(http://sumus.exblog.jp/5269252/)を見てみると、最近はかなり値段がアップしているのが分かる。今は二千円からだが、前菜二品、スープ、肉か魚、デザート、珈琲か紅茶…これは十二分に満足のできる内容と思う。

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ホタテとニョッキ(豚足入りだそうだ)。

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ガスパッチョ。トマトと胡瓜が入っている。絶妙なバランスだった。

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法観寺(八坂の塔)。スポンタネから清水坂を上がって三年坂美術館へ向かう。歩き出すとすぐに汗だくになるくらい暑い。それでも中国、韓国、スペインからの観光客で賑わっていた。日本人はカップルが圧倒的に多かった。このあたりを歩くのは十何年ぶりかもしれない。かなり変貌している。

清水三年坂美術館を初めて訪れた。一階は売店と常設展示室。明治の金工、七宝、蒔絵、薩摩焼。象牙の彫刻が見事というのか何と言うのか、例えば貝殻をスーパーリアリズムで再現している。材質は象牙なのだが、彩色もリアルで、どう見ても貝殻にしか見えない。これって彫刻としての意味、あるのかな?

目的は二階の「ボリビアの織物」展示である。

《ボリビア織に初めて出会ったのは今から33年前、アメリカの蚤の市であった。以前からインディオの文化に興味を持っていてインカやプレインカ文明の土器や布の事は知っていたが、この様に色鮮やかで面白い文様が織り込まれた布がボリビアの高地で今も織られている事は驚きであった。両面織りで表にも裏にも美しい文様が織られていて、その美術品としての価値の高さを即座に感じ、たちまち虜になってしまった。》(館長・村田理如)

まったく見事な織物だ。緻密でありながら窮屈すぎないというか、ゆったりとしたものを感じさせる織り振りが何とも言えず良い。展示品のレベルも非常に高い。館長のコレクションだそうだ。一階の売店にはパウル・クレーの水彩画のセット絵葉書があった。店員さんに「これも館長のコレクションですか?」と訪ねたら、当たり前だが「そうです」との答え。居られる所には居られるんですなあ。

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鴨川の面を眺めてとぼとぼ帰った。汗が止まらなかった。
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by sumus_co | 2012-07-26 19:43 | 京のお茶漬け

祇園会とゴブラン織

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『日本美術工芸』第五十一号(日本美術工芸社、一九四七年七月一日)より明石染人「祇園会とゴブラン織」。函谷鉾前懸、鶏鉾見送、白楽天山前懸、蘆刈山前懸、油天神山見送、露天神前懸、鯉山前懸・胴懸・水引・見送、この他に旧菊水鉾見送(断片として残る)などがゴブラン織(正確には綴織懸氈=タピスリーとすべきであるとのこと)だったという。鶏鉾のゴブラン織は長浜市八幡神社の鳳凰山見送と一対になるそうだが、その売買の証文が残っている。

《これで見ると文化十四年三月八日(一八一七)室町の巻物問屋(今日の洋反物問屋と云ふ意味。氈通、羅紗類は畳まず巻物として取扱ふ故にこの称あり)に和蘭船で舶載されたであらうゴブラン織を伊藤勘兵衛(白粉屋勘兵衛と同一人なりや否や不明)が買ひ、藤倉屋十兵衛が売主となつて長浜の鳳凰山組(組町は祝町、西魚屋町)に売渡したものであらう、その代金双方共二百両とあるは手数料は売主、買主どちらからか得たものであらうし額面に現はされてゐないところがその頃の売買契約で興味深いものがある。》

古渡毛綴織見送一枚、二百両……二千万円?

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本書掲載の「巴里ゴブラン綴氈工場作業図」、背広にネクタイのサラリーマンのような職人たちである。ネット上にこの元写真と思われるゴブラン工場発行の絵葉書が出ていた。

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《因に、私はゴブラン織に就てのみ述べたが、実はこれに比肩すべき古渡の名品が祇園山鉾懸装にいま一つある。華氈ー波斯及び近東各国製の華毛氈である。絶妙多彩なアラベスクの構成する毛氈(カーペツト)こそは又別の夢幻の世界である。月鉾の前懸及び左右胴懸、鶏鉾の胴懸(万暦氈と通称のもの)、月鉾の胴懸、放下鉾の前懸、胴懸、岩戸山の前懸、胴懸、北観音山の前懸、胴懸などがそれで今はない鷹山の前懸も紅毛渡の華氈であつたといふ。》

マン・レイ石原氏によれば今年は北観音山の京都生活工藝館・無名舎にて南観音山の旧前懸・障屏山水文様とインド更紗印度東南部で発見された巨大更紗が展示されているというから、祇園祭における染織コレクションの壮大さと幅広さ、ひいては京町衆の黄金力を再認識する(山鉾はインド発祥だとの説もあるそうだからあながち無関係ではないかもしれない)。

なお本書の出た昭和二十二年は十八年より中止されていた山鉾巡行が復活した年である。
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by sumus_co | 2012-07-17 21:35 | 京のお茶漬け

詩本草

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柏木如亭『詩本草』(揖斐高校注、岩波文庫、二〇〇六年八月一七日、カバー=中野達彦)。漢文で書かれた食味エッセイ。旧友葛西因是は如亭の人となりをこう記しているという。

《山人、吟詠書画を沽(う)る。唯だ価の高からざるを恐るるのみ。得る所の潤筆は尽くこれを揮ひ、狭斜に噉啖(たんたん)す。魚肉は大塊を嚼(か)むにあらざれば飽かず。風月の遊びは老いて少壮に減ぜず。衣服は斬新にして務めて時世を逐ふ。酒を嗜まずと雖も、好んで嫖客歌娼と混坐し、時々戯劇打諢(ぎげきだこん)の語を作す。》(日暮里養福寺に建てられた柏山人碑文より、原漢文)

食べることと女性が好きだった、最新流行のファッションも。酒は飲めなかったが酒席は好きだった。とくに魚を好んだようで魚類に関する経験談と蘊蓄を盛り込んだ文章が多い。個人的に注目したのは、茶粥の仕立て方についての記述である。「44 魚飯その一」

《茗粥之法、濃煎下品之茶、撇棄茶葉、取汁移鐺、下塩少許、投米烹之。待熟傾入篩中、再以茶汁滌之四五度、盛椀、澆上品茶而食。余近伝此法亦足以養老也。非止于其香其色精妙、冬日可以禦寒、夏天可以敗暑、適口果腹。勝双弓米遠甚笥矣。》

安物の茶を濃く淹し、その汁に塩を少し足して米を煮る。煮えたらザルに入れて茶汁でよく洗う。お椀に盛って上等なお茶をそそいで食べる。ということだが、これは以前紹介した東大寺の「あげ茶」に似た作り方ではないかと思う。

京のぶぶ漬
http://sumus.exblog.jp/16424432/

江戸時代の京の食味が紹介されている「38 京の名品」という一篇も参考になる。難しい漢字が多くて引き写すのが面倒なのでテキストは下記サイトを参照されたし。

髭鬚髯散人之廬 京都の名産品を殫見洽聞しよう=柏木如亭「詩本草」
http://rienmei.blog20.fc2.com/blog-entry-34.html

ただし、これは柏木如亭の京贔屓の引倒しに近いものがあろう。揖斐高の註には滝沢馬琴の紀行随筆『羇旅漫録』に見える京の食味に対するコメントが引用され《食味評論家として、馬琴は如亭に伍することはできないが》と書かれているけれども、さて、それはどうだろう? 以下『羇旅漫録』より「七十六 京地の酒樓」。

《○生洲は高瀬川をまへにあてたれば。夏はすゞし。柏屋松源などはやる。柏屋は先斗町にも出店あり。松源近年客多し。こゝにて鰻鱧。あらひ鯉名物といふ。魚類は若狹より來る鹽小鯛鹽あはび。近江よりもてくる鯉鮒。大坂より來る魚類。なつは多く腐敗す。鰻鱧は若狹より來るもの多し。しかれども油つよく。江戸前にはおとれり。鮎鮠は加茂川にてとるもの疲て骨こはし。鮠はよし。若狹の燒鮎よしといへども。岐阜ながら川の年魚などくふたる所の口にては中/\味なし。鯉のこくせうも白味噌なり。赤味噌はなし。白味噌といふもの鹽氣うすく甘ッたるくしてくらふへからず。田樂へもこの白味噌をつけるゆゑ江戸人の口には食ひがたし。鰻鱧は大平などへもる。小串は燒て玉子とぢにもせり。大魚の燒物は必片身なり。皿の下になる方の身はそきてとり。外の料理につかふこと大坂も又かくのごとし。京は魚類に乏しき土地なればさもあるべし。大坂にて片身の濱燒なと出すこといかにぞや。是おのづから費をはぶく人氣のしからしむるもの歟。京にて味よきもの。麸。湯波。芋。水菜。うどんのみ。その餘は江戸人の口にあはず。

○祇園豆腐は。眞崎の田樂に及ず。南禪寺豆腐は。江戸のあわ雪にもおとれり。しかれども店上廣くして。いく間にもしきり。その奇麗なることは江戸の及ぶところにあらず。すべて京の茶店は。四方一間位づゝにしきり。左右にすたれをさげたり〈名古屋の七ツ寺の酒店もこれをまなべり、〉

○祇園に孔雀茶屋あり。もろ/\の名鳥多し。〈名古やの若宮八幡前近年孔雀茶屋を出せり、〉

○大佛餅は。江戸の羽二重もちに似て餡をうちにつゝめり。味ひ甚た佳なり。ういろうちまきといふものは。黒砂糖製にて。よからず。その外安ものは。挽米のやきもちなり。上菓子はよしといへども價大に尊し。》(壬戌羇旅漫録

馬琴に一票である。
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by sumus_co | 2012-04-12 11:49 | 京のお茶漬け

柏木如亭を偲ぶ

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『「日本文化研究会」会報』四号(日本文化研究会、一九九八年九月三〇日)より永観堂墓地内に復興された柏木如亭の墓碑および如亭筆山水図。《生田耕作がまだ存命中のことですが、晩年は江戸漢詩を盛んに勉強していたんですけれど、京都で生田を中心に四、五人集まり、江戸漢詩の勉強会をしておりましてそれを〈日本文化研究会〉と称しております。最近では東京に支部もできまして、やはり四、五人のかたが江戸漢詩の勉強会をしております》と生田かをるさんがこの冊子の巻頭に述べておられる。

末尾の「研究会活動報告」によれば平成八年二月に生田歿後初めての会合を開いた。そのときの参加者は生田かをる、坂井輝久、八幡吉治、松本完治、野村竜夫。賛助会員が東条良人、川島紘一、佐々木一彌、西北八島、鎌田大。東京支部の参加会員は守安俊二、有馬浩一、村山徹郎、福原大介、椎名麻后、平田雅樹。一〜三号の特集は下記の通り。

一号「いい加減にしろ」ー「鴨川改修計画」批判
二号「洛中洛外雑詠抄」ー木水彌三郎翁追悼
三号「風景は文化なり」ー鴨川東岸「花の回廊」整備計画批判

そして四号が「江戸のボードレール 柏木如亭を偲ぶ 如亭墓碑復興記念」。荷風を初めフランス文学好きは、共通するものがあるのだろう、江戸後期の漢詩人をも好むようだ。

柏木如亭、名は謙、字は益夫、後に名を昶(ちょう)、字を永日に改めた。号を舒亭、後に如亭。黙斎、痩竹、晩晴堂、一杖閑客などとも。家は代々江戸幕府小普請方大工棟梁を務める。長男として宝暦十三年(一七六三)江戸に生まれた。少年期に父母と死別。十七歳で家督を継ぐ。市河寛斎の江湖詩社に参加、新進詩人として頭角を現す。寛政五年(一七九三)に第一詩集『木工集』出版。遊蕩にも耽溺し、大和屋太郎次、山東京伝、村田春海らとは遊興仲間であった。三十一歳で一族の者に家督を譲り職を辞す。諸国を遊歴して詩を教え、また書画を揮毫して糧を得る生活に転じた。信州中野、越後新潟、東海地方、京、備中、伊勢、讃岐、そして京都に戻ったのが文化八(一八一一)。頼山陽、浦上春琴、小石元瑞、田能村竹田らと交遊。詞華集『海内才子詩』を編む。諸国を遊歴しながら江戸に戻る。大窪詩仏の詩聖堂に旅装を解く。だが、様変わりした江戸になじめず上州から信州、越後を辿りながら文化十五年(一八一八)京に帰り着いた。黒谷の廃寺を借り紫雲山居と名付けて身を寄せる。金策のため讃岐の金比羅へ渡る。文政二年(一八一九)には伊勢四日市へ出向き若き梁川星巌と邂逅。意気投合。体調の勝れなかった如亭は遺稿集の出版を星巌に託した。同年七月十一日、京に戻ったとき水腫が悪化し木屋町の貸座敷へ移されて、そこで息を引き取った(揖斐高「柏木如亭略伝」より抜粋。柏木如亭『詩本草』岩波文庫、解説)。

上の墓碑は一九八六年、当時大阪大学国文科の新稲法子さんが卒論のために柏木如亭を選び、如亭年譜(揖斐高編)に永観堂の墓石が失われていると書かれていたのを読んで実地検分に出掛た。二度目に訪ねたときに崖に埋もれているのを発見したのだという。そしてその墓石が日本文化研究会によって復興され開眼供養が行われたのが平成十年四月五日。それを機にこの会報が発行された。
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by sumus_co | 2012-04-11 20:32 | 京のお茶漬け

京都市区分地図

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「ご興味あるかと思い送ります」というメモが付いて送られて来た。京都の地図。大いに興味あります。ただ、表紙が補修されており、発行年や発行元の情報が失われている。

戦後の地図だろう。まず確かめるのは現・阪急電鉄京都線の名称。これがまだ「京阪神急行」である。昭和十八年十月から四十四年十二月までこの名前で営業していたから、その間のいずれかの時期ということは分かる。そしてその四条大宮と河原町間が開業したのが昭和三十八年六月。この地図では大宮までしか線路は描かれていない。それ以前である。

もう少し絞り込めないかといろいろ点検していると、大宮と西大路四条間にトロリーバスが通っている。「京都市交通図」に国鉄線、会社線、市電、トロリーバス、市バスの区別があって気づいた(地図上にはトロリーバスと明示されていない)。この四条通りのトロリーバスは昭和三十三年に梅津まで延長されたので、ならば、それ以前であろうと推測できる。

京都駅前に京都中央郵便局がある(烏丸通七条下ルの旧庁舎。新庁舎移転は昭和三十六年)。この名称は昭和二十四年から(旧称は七条郵便局)。また工芸繊維大学前というバス停もあって、この大学も昭和二十四年からなので、とりあえず昭和二十四年から三十三年までの間に刊行されたと考えていいだろう。

きっちりと描かれたおもむきのある地図だ。スキャンしなかった右側の頁に同じ地域の町名色分け地図が展開している。全体をざっとめくっていると、町名を茶色のサインペン(?)で囲んでいるところが目についた。おや、北園町ではないか。
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旧蔵されていた方は北園町にご縁がおありだったか、はたまた天野忠のファン?
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山田稔『北園町九十三番地 天野忠さんのこと』(編集工房ノア、二〇〇〇年一一月一五日二刷、装幀=平野甲賀)より。

《メモ程度の日記によれば、私が初めて天野家を訪問したのは八二年八月三日のことであった。
 前々日、渥美半島に上陸した台風八号が富山へ抜けた後も天候は回復せず、不安定な、もどり梅雨のようなうっとうしさが続いた。その日、他に用事があって街なかに出かけた私は、三時すぎ河原町三条のふたば書房で涸沢純平さんと落ち合った。涸沢さんは以前に『砂漠の椅子』を売ってもらった礼を述べにその書店に立ち寄ったのだそうである。
 タクシーで北園町のバス停のところまで行った。そこからは直ぐである。三月に最初の偵察をおこなって以来、私は天野家の前を何度か通っている。右どなりの古い家の、黒く煤けた表札に「辻田右左男」と出ているのを発見して驚いたこともある。中学(府立京都一中)で地理を習った先生で、後に奈良女子大に移ったと聞いていた。もう故人のはずだが、表札はそのままになっている。》

『砂漠の椅子』は大野新の詩論集のタイトル。なお辻田右左男の生没年は1907-1997ということなので、一九八二年には存命だった。

《表通りに面した小さな冠木門の前に立った。横長の門灯に平仮名で「あまの」と書かれているのをながめた。門のところからのびる路地の奥はしんと静まりかえっている。いよいよ「動物園の珍しい動物」を見物する、期待と緊張の一瞬である。ベルを押し、たがいに先を譲り合うようにしながら格子戸を開けて中に入った。》

情景が目に浮かぶようだ。つづきは『北園町九十三番地』をどうぞ…。
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by sumus_co | 2012-01-30 20:44 | 京のお茶漬け

郷土趣味 第二号

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『郷土趣味』第二号(郷土趣味社、一九一八年二月二〇日、表紙=間部時雄)。発行所住所は京都市境町通三條南緑紅花園内、編集兼発行人は田中俊次。《民族芸術、郷土人文、土俗学等其他百般の事項に就きて諸先輩並に会員諸氏の研究記事を掲載発表し会員は無代配布を受く》とある。本号執筆者は竹内不死鳥、田中来蘇、明石染人、杉浦丘園、吉村与四郎、田中緑紅。(この雑誌は復刻版が出ているようだ)

当時は宝船が流行していたらしく、口絵に木版画の宝船図が掲げられている。明石染人「『宝船』の真意義」より。

《流石は京都、旧い習慣と迷信と物好きとをゴツちやにして宝船を節分に授与し又採集するの風が近来多いに興起した、要するに文盲に枕の下に布いて好い初夢を見様う等と云ふのでなく今年は幾枚集めたとか、屏風に仕立てるとかの目標の手合いが多くなつたに過ぎない。》

《足利時代初期に至つて疫神を祓ふのに川へ流す思想と、豊作を祈る思想とが節分にカチ合ひ巧く融合して舟に穂を積み来る所謂宝船の濫觴を形成した。》

《然して宝船の起源は誰人も云ふ如く洛陽の古社疫神除の、少彦名命を祀る五条天神宮(俗称天使)から年々禁裡公家に奉献したものに初り、維新当時まで引続いて行はれて居た、尤も其古い版木は数度の回禄の為め宝庫と共に亡失し現存のは後代の模刻であるが中々真髄を伝へて居る。》

下の図は平野神社の宝船。《一説に大雅堂の筆なりとの説あれども執るにたらず》(緑紅)
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おなじく明石染人「伏見人形小話」に古代伏見人形の写真が出ている。現在流布しているような種類の伏見人形は明治維新以後に作られたものという。巷間言われていたように鵤(いかるが)幸右衞門がその始祖ではなく、後水尾天皇元和の頃(十七世紀初め)東福寺近傍に生まれて伏見人形に一代革新を与えた人であろうと明石は推測している。
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裏表紙の「八坂神社蘇民将来社の茅の輪」。毎年一月十九日に限りこの飾りができ、この輪をくぐればその年には疫病に罹らないという。蘇民将来がスサノオを助けて疫病を防ぐ茅の輪を授けられたという伝説に基づき、平安時代以来流行したようだ。
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現在の八坂神社では一月十九日にこの茅の輪の設営は行われず《境内疫神社で厄除を祈ります。》とだけ。ただし六月三十日の大祓式において《境内に大茅の輪を設置。茅の輪をくぐり半年間の罰穢を祓います。》……。
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by sumus_co | 2012-01-18 20:12 | 京のお茶漬け

三条富小路書店2

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三条富小路書店2  〜12月18日
京都市中京区富小路通三条上ル福長町109
http://bookyoto.web.fc2.com/
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by sumus_co | 2011-12-11 11:40 | 京のお茶漬け