林蘊蓄斎の文画な日々
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カテゴリ:ほんのシネマ( 19 )

ママの遺したラヴソング

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「ママの遺したラヴソング A Love Song for Bobby Long」(シェイニー・ゲイベル監督、二〇〇四年)。スカーレット・ヨハンソン(ジョハンソン)主演。母親を知らずに祖母に育てられた娘。母の死を知らされ母が住んでいたニューオリンズへやってくると、母の家にはむさくるしい男二人が住んでいた。

画家のフェルメールを描いた作品「真珠の耳飾りの少女」(二〇〇三)でスカーレットの顔を覚えた。ヨハンソンという名前の通り父方がデンマーク系。母方がユダヤ系とのこと。そしてその後で見た「モンタナの風に抱かれて」(一九九八)にチャーミングな子役として出ていたのに吃驚し、「私がクマにキレた理由」(二〇〇七)でベビーシッターを演じていたのも彼女だったのだと改めて知ったしだい。

上の写真は母親の遺したトランク。本はこれだけ。娘は売り払うといいながら、駅の待合室でそのなかの一冊を読んでしまう。

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そのタイトルはカーソン・マッカラーズの『心は孤独な狩人 The Heart is a Lonely Hunter』(一九四〇年、河野一郎訳の新潮文庫は一九七二年刊)。一九四〇年の大ヒット小説。グレアム・グリーンはフォークナーよりマッカラーズが好きだと公言しているそうだ。彼女は第二次大戦後ずっとパリに住んでいた。

母に誰かから捧げられたこのペーパーバックを読んで娘パースレーン(ヨハンソン)は男たちの家に戻って同居することを決意。奇妙な生活が始まる。

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初老の男ボビー(ジョン・トラボルタ)は元ハーバードの英文学教授、いわくあって南部へ落ちて来た。いっしょについて来た教え子のローソン (ガブリエル・マクト)に小説を書かせようとしているが、どうもはかばかしくない。ところがローソンはパースレーンがやって来てから少しずつ変り始める。

トラボルタは器用にこなしているもののどうも適役とは思えない。ヨハンソンも悪くはないが、なんとなく役柄とは似合わないような気がする。ブルーズ演奏もやや取って付けたような感じ。結末もほぼ最初から見えている。ヨハンソンを鑑賞する映画というところ。

登場する本の姿はなかなかいい。
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by sumus_co | 2013-10-09 20:09 | ほんのシネマ

エターナル・サンシャイン

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映画「エターナル・サンシャイン」(ミシェル・ゴンドリー監督、二〇〇四年)を観た。脚本が「マルコヴィッチの穴」のチャーリー・カウフマン(なるほどと納得)。

監督であるミシェル・ゴンドリーはフランス人、一九六三年ヴェルサイユに生まれた。祖父の代から音楽一家だったようでバンド「Oui Oui」でドラマーをやっていたが、そのMTVを作ったことから、ビョークやストーンズらのビデオクリップを多数製作するまでになる。ヴィデオを使ったインスタレーションや漫画の原作も。そして映画も作るようになった。最新作は四月に公開されるボリス・ヴィアン原作の「日々の泡」。オドレイ・トトゥが主演のようだ(宣伝ヴィデオを見る限り、あまり期待できそうもない)。

L'Écume des jours (film, 2013)
http://www.lecumedesjours-lefilm.com

NY、ヴァレンタイン・デーの朝、目覚めると頭がすっきりしない。今日は会社を休んでやれと思ったジョエル(ジム・キャリー)は反対方向の電車に飛び乗りロードアイランド方面へ向かう。人気のない砂浜で一人の魅力的な女性クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット、「愛を読むひと」でも登場)と知り合う。彼女はバーンズ・アンド・ノーブル書店に勤めている。この書店については以前わりと詳しく書いておいたので参照されたし。要するに全米最大手のチェーン書店。

J・エプスタイン『出版、わが天職』
http://sumus.exblog.jp/13708729/

フィッシャーマンズ・ワーフのバーンズ・アンド・ノーブル
http://sumus.exblog.jp/9560783/

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すっかり恋人になっていたはずが、ある日、書店を訪ねると彼女は「何か探します?」と赤の他人のような扱いをする。彼女の記憶からジョエルはすっかり抹殺されてしまっていた。

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それなら俺も、ということでジョエルも記憶抹消クリニックでクレメンタインに関する記憶を消してもらおうとするのだが、その作業中に異変が起きる……というようなお話。ごちゃごちゃして解り難いところもあるものの、基本構造は単純なので、最後まで見られないほどではない。

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原題は「Eternal sunshine of the spotless mind!」でこれはアレクサンダー・ポープが「アベラールとエロイーズ」をテーマに書いた熱い長詩「エロイーザからアベラードへ Eloisa to Abelard」から一行をそのまま使っている。該当する連を引用しておく。真実の愛は夢のなか、そして天国にしかないということなのかな?

How happy is the blameless vestal's lot!
The world forgetting, by the world forgot.
Eternal sunshine of the spotless mind!
Each pray'r accepted, and each wish resign'd;
Labour and rest, that equal periods keep;
"Obedient slumbers that can wake and weep;"
Desires compos'd, affections ever ev'n,
Tears that delight, and sighs that waft to Heav'n.
Grace shines around her with serenest beams,
And whisp'ring angels prompt her golden dreams.
For her th' unfading rose of Eden blooms,
And wings of seraphs shed divine perfumes,
For her the Spouse prepares the bridal ring,
For her white virgins hymeneals sing,
To sounds of heav'nly harps she dies away,
And melts in visions of eternal day.

全文はこちら

Alexander Pope, "Eloisa to Abelard"
http://www.monadnock.net/poems/eloisa.html
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by sumus_co | 2013-03-26 21:12 | ほんのシネマ

ル・アーヴルの靴みがき

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アキ・カウリスマキ監督の映画「ル・アーヴルの靴みがき」(一九一一年)のDVDを観た。全編ほぼフランス語、舞台もフランスの港町ル・アーヴルのはずなのだが、どうみても撮影はフィンランド(ときどきフランス)。いかにもアキ・カウリスマキ好みの色彩に塗込められた珍作と思う。

初老の靴磨きは密入国のアフリカ人少年をかくまう。と同時に愛妻が不治の病を宣告される(といっても夫には内緒にするのだが)。靴磨きマルセル・マルクス(アンドレ・ウィレム)は当局の目を盗んで少年を母のいるロンドンへ送り出そうと画策する。というような筋書き。

上の場面は近所のパン屋のおばさんとバーのマダムが妻(カウリスマキの映画でおなじみのカティ・オウティネン、さすがに外国人の妻という設定)を病院に見舞って朗読をしているところ。病人に読んでやるにはややこしい文章だなあ、誰の作品だろうと思っていると、つぎのような画面になった。

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『フランツ・カフカ 小説集』とフランス語で書いてある。ま、これもフランスの本には見えないけれども、ちょっと検索してみた。いろいろ試みたがこのタイトルのフランス語訳は見つからなかった。だからといって架空のものだとも即断はできないけれども。

パン屋のおばさんが病室で読んでいた「町の連中ときたら眠らないんだ」はどの作品か? 「小説集(小説の複数形)」だから短編集だろうと見当をつけて、検索してみると、こちらは案外簡単に『観察』のなかの「国道の子供たち」だということが分った。架蔵の本野亨一訳(角川文庫、一九六三年)ではこうなっている。

「あすこには、いいかい、ねむらない人間たちがいる!」
「なぜ、ねむらないのだ?」
「疲労しないからだ」
「なぜ、疲労しないのだ?」
「ばかは、なぜ、疲労しないのだ?」
「ばかが、疲労してたまるものか!」

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『観察』はカフカ自身が編集した初の作品集。最近では吉田仙太郎訳『カフカ自撰小品集』(みすず書房、二〇一〇年)に『田舎医者』『断食芸人』とともに収められている。いちおう原文も掲げておく。『BETRACHTUNG』(Verlagseinband des Erstdrucks, 1912)より「Kinder auf der Landstraße」の最後の会話。

 »Dort sind Leute! Denkt euch, die schlafen nicht!«
 »Und warum denn nicht?«
 »Weil sie nicht müde werden.«
 »Und warum denn nicht?«
 »Weil sie Narren sind.«
 »Werden denn Narren nicht müde?«
 »Wie könnten Narren müde werden!«


映画のラスト、これまた奇想天外な終わり方だった。
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by sumus_co | 2013-03-08 22:02 | ほんのシネマ

好人好日

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「好人好日」(渋谷実監督、一九六一年、松竹)。原作中野実、脚色松山善三。笠智衆、淡島千景、岩下志麻、川津祐介、乙羽信子、北林谷栄……と配役もそろっている。奈良を舞台にして初々しい岩下志麻もいいが、やはりヘンクツ数学者の笠智衆がなんとも味のあるコミカルな演技を見せる。出番は少ないけれど乙羽信子もうまい。タイトルのデザインは真鍋博。これがまたシャレている。美術が浜田辰雄。

笠は天才数学者だが、人嫌いで外国の大学からの招聘も断って貧乏生活に甘んじている。そこへ文化勲章受賞の知らせが届き、やっと妻(淡島千景)の苦労が報われることに。夫婦で授賞式のために東京へ。昔の下宿に泊まり、そこでドタバタありまして……。最後はめでたしめでたし。

以下、これがヘンクツ学者の書斎のイメージなのだろうか。以前寺田寅彦の書斎の写真をアップしたが、たしかにだいたい似たようなものである。

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音羽信子は老舗墨舗の嫁、息子の川津が数学者の娘岩下志麻と付き合っている。結婚についてもめる。おじたちに相談をもちかける。筆匠の花沢徳衛のところへやってきた場面。
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白眉というか、怪演なのは三木のり平だ。
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奈良の美しい景色も見所。こんなのんきな映画が作れた時代に乾杯である。
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by sumus_co | 2012-12-17 21:17 | ほんのシネマ

日の名残り

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「日の名残り The Remains of the Day」(ジェームズ・アイヴォリー監督、一九九三年、カズオ・イシグロの同名小説の映画化)を久し振りに見た。おおよそのストーリーは記憶していたものの、細部はすっかり忘れており、楽しく見られた。「チャリング・クロス街84番地」で古書店の番頭フランクを演じていたアンソニー・ホプキンズがここでは忠実な執事スティーヴンスを好演している。上は主人の書斎で新任のメイド頭ミス・ケントン (エマ・トンプソン)について報告している場面。

次は梯子に上って本を書棚に戻しているシーン。お盆に注目。こんな小物があったのだ!
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それから映画「Emma エマ」 にも登場した模造文庫(ニセの書棚)がこのお屋敷にもあった。

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細かいところまでよく出来たラブストーリーである。俳優のなかで注目したのは執事スティーヴンスの父親(やはり執事として長年働いてきた)を演じているピーター・ヴォーガン(Peter Vaughan)。日本語のウィキにはまだ立項されていないが、「Internet Movie Database」によればイギリスのTV俳優として一九五〇年代から活躍しているようで、映画も「未来世紀ブラジル」「わらの犬」などに出演。本作ではこの執事一徹の父の死が見事にスパイスとなって効果を発揮している。
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by sumus_co | 2012-11-27 21:22 | ほんのシネマ

ブレードランナー

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映画「ブレードランナー」(Blade Runner、リドリー・スコット、一九八二年)より。遺伝子技術者セバスチャンが住むアパートメント。自らが作ったさまざまな人型の生き物をはべらしている(ヴィクトリア朝時代の画家リチャード・ダッドを連想させるショットもあった)。二〇一九年という設定なのだが、書物らしいものが登場するのはこのシーンだけか? やっぱり本が積み重ねてあるというのが学者のイメージなのだろう。セバスチャンがレプリカント(人造人間)の開発者であるタイレル博士と遠隔チェスをやっている、これはなかなかナイスなアイデアだ。

全体的には安い感じで、メビウスやエンキ・ビラルの漫画にヒントを得たという昏い無国籍な世界観が、いまひとつ薄っぺらい。巧みに雨、煙、光でごまかしている。予算との葛藤があったらしいが、映画としては「メトロポリス」の効果にも似ているようで、ハリウッドとしては異数の作品になった。

今回見たのはスコット監督自身の手によるファイナルカット(二〇〇七年)。昔の映画ノートを取り出してみると一九八六年四月一四日にTBS「月曜ロードショー」で初めて見たようだ。《映像的には奇抜で楽しめるが、ストーリー展開における演出が舌足らずで不満 7点》と感想あり。10点満点の評価で7点は高い方だろう。同じ監督の「エイリアン」は8点になっている。ファイナルカットで判断する限りストーリーはかなり単純明快である。

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「デンジャラス・デイズ/メイキング・オブ・ブレードランナー」(チャールズ・デ・ラウジリカ、二〇〇七年)より。向かって左がリドリー・スコット、右が原作者のフィリップ・K・ディック。試写(未完成フィルムの一部とのこと)にディックがやってきて「おれの頭の中をのぞいたのか」とびっくりしていたという。残念ながら公開に先立つ八二年三月二日にディックは急逝した。SFはほとんど読まないのだが、ディックだけは本映画の原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とか『逆まわりの世界』『ユービック』など数篇読んだ記憶がある。まったく突拍子もないことを考える作家だと思う。
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by sumus_co | 2012-11-10 21:46 | ほんのシネマ

古地図とヤングガン2

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ウィリアムモリスの近くには中村書店がある。これまで何度も取り上げてきた詩書が中心の古書店である。そこで何かと思ったのだが、今回はどうしても詩書には手が出なかった。手ぶらでは店を出ない主義なので一般客向けの文庫棚から引き抜いた一冊がこのマイルズ・ハーベイ『古地図に魅せられた男』(島田三蔵訳、文春文庫、二〇〇一年、デザイン=坂田政則)。

東京滞在中および帰洛の車中で読んでいた。図書館から古い貴重な地図を何百と盗んだ男を追跡する話。古地図の歴史から、古地図のディーラー、図書館員、地図製作会社、古地図コレクター、そして古地図泥棒本人にインタビューを重ねながら地図の魅力というか魔力について叙述する。興味深い内容なのだが、ただ、あまりに凝りすぎた構成が面白さをかなり削いでいるという感じがした。

いろいろメモしておきたいことはあるが、ここでは西部劇映画「ヤングガン2」を見たことと関連させてパスファインダー(The Pathfinder)と呼ばれた探検家ジョン・チャールズ・フリーモント(John Charles Frémont)のくだりを引用しておこう。フリーモントはアメリカ西部の名を高めるうえで十九世紀の探検家の誰よりも大きく貢献したという。名前の通り父親はフランス人だそうだ。

《パスファインダーは、本当に荒れ地を克服するためには、自分自身がそこで生きのびるだけでなく、それを他人にとって意味があるものにしなければならないということを理解していた。彼の地図ーーふつうは、何度かの任務に彼と同行した、才能豊かな地図作成者チャールズ・プロイスとともに下図を描いた。あるいはプロイスが下図を描いたーーは、アメリカ史上最大の移住をあおる手助けをした。なかでももっとも著名なプロイスとフリーモントの地図は、一八四五年の『ロッキー山脈への探査旅行の報告』とともに出版されたのである。》

『ロッキー山脈…』の原題は『The Exploring Expedition to the Rocky Mountains in the Year 1842, and to Oregon and North California in the years 1843-'44. 』(Washington: Gales and Seaton. 1845.)。なんと、要するに地図と案内書が「ゴー・ウエスト!」の大移動を引き起こした。「地球の歩き方」ならぬ「西部の歩き方」のおかげで西部開拓は進んだのだ。

「ヤングガン2」(Young Guns II、ジョフ・マーフィ監督、一九九〇年)はビリー・ザ・キッドとその仲間たちの最期を描いているが、かつて仲間だったパット・ギャレットがビリーたちを追跡する側にまわったためビリーたちは追いつめられて行く。

この映画のほん関係のシーンは、まず、パットが保安官に任命されて出発する前に町の新聞社を訪ねたところ。新聞社といってもごらんのような手動の活版印刷機で記者兼社長のおっさんがシコシコ刷っている。このワンシーンだけなのだが、なかなかそれらしいセットになっている。
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次はダイム・ノヴェル。ビリーに同行していた十四五の少年が狙撃されて命を失う。少年の荷物のなかにはビー玉やビリーの記事の載った『Beadle's New York Dime Library』が入っていた。
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ダイム・ノヴェルはアメリカで十九世紀後半から二十世紀初めにかけて人気のあった大衆読物。先鞭をつけたとされるビードル・アンド・アダムズ(Beadle & Adam's)社の「Beadle's Dime Novel」シリーズは一八六〇年に刊行が始まった。実話とフィクションを織り交ぜたストーリーが大いに受けたようだ。ビリーは一八五九年生まれで八一年歿(この映画では二十世紀まで生きながらえたことになっているが)、ちょうどかっこうのテーマになった。ここに登場しているダイム・ライブラリーも実物があるのだろう。

〇〇王子はこのころから使われていたのか(笑)。
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by sumus_co | 2012-10-19 21:09 | ほんのシネマ

大統領の陰謀

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映画「大統領の陰謀 All the President's Men」(アラン・J・パクラ監督、一九七六年)よりライブラリー・オブ・コングレス(アメリカの議会図書館)の登場したシーンをいくつか。映画はウォーターゲート事件の発端となったワシントン・ポストの二人の記者たちの活躍を描いている。彼ら(ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマン)はニクソン側が議会図書館でエドワード・ケネディ(ニクソンの最有力の対立候補とみなされていた)の調査をしたという情報に基づきその裏を取りに出掛けるシーン。階段を登るウッドワード記者(レッドフォード)の背後にはホワイトハウスが鎮座している。

一八〇〇年。議会図書館(The Library of Congress)はジョン・アダムス大統領のときに設立された。しかし一四年後にはイギリス軍によって焼き払われてしまったため元大統領のトマス・ジェファーソンが自らの蔵書(6,487冊)を新たな議会図書館を設立するために提供した。翌年それは正式に受け入れられ今日の議会図書館の礎となった。

一八七〇年の著作権法によりすべての著作物は二部納本することが決められた。ところが当然ながらそれによって大量の書物や資料類が集まってきたため新しい建物を建築する必要に迫られた。コンペが行われた結果一八八六年に John L. Smithmeyer と Paul J. Pelz の設計したイタリア・ルネサンス様式の設計案が採用され、一八九七年一一月一日になってようやく新しい建物は一般公開された。

現在のコレクションは 144,000,000 アイテムを超える。書籍および印刷物は 33,000,000 冊。写本・原稿・自筆ものは 66,000,000 点以上。その他、音楽媒体なども多数所蔵しているそうだ。

下は利用状況の調査をしたいと司書(?)に掛け合っている場面。一九七二年の設定なので当時のライブラリアンはローレンス・マンフォード(Lawrence Quincy Mumford)だったろう。左に掛かっている肖像画は六代目ライブラリアン Ainsworth Rand Spofford のようだ。
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この回廊はたしかにイタリア・ルネサンス風である。
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貸し出し係のお兄さん。記者たちは貸し出し票を調べたいと言って出してもらいしらみつぶしにチェックしはじめる。
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結局は証拠となるものはすでに隠滅されてしまっており、何も手がかりは得られなかった。

映画そのものは70点くらいの出来だろうが、当時の新聞社の様子、まだパソコンも携帯電話もない(ファックスはある)オフィスや文房具類のデザインがとても興味深いのである。
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by sumus_co | 2012-09-29 20:55 | ほんのシネマ

パーマネント・バケーション

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ジム・ジャームッシュ監督の「パーマネント・バケーション Permanent Vacation」(1980)を見た。幼稚な映画だなと思ったら、ニューヨーク大学大学院映画学科の卒業制作だった。ジャームッシュの処女作である。それでも、幼稚は幼稚なりに見所もあり、四年後の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」へ真っすぐつながっていると言えるだろう。

まったくの世捨て人状態(それがすなわちパーマネント・バケーション)の若者パーカーが自動車をかっぱらった金でパリへ行こうとする、それだけのお話。

パーカーの愛読書はロートレアモン『マルドロールの歌』である。同棲している女の前でその一節を読み上げる。たぶん露地で出会った幼い少女をズタズタにする描写だったような気がするのだが、メモしなかったので間違っているかもしれない。

《ふとした気の迷いで、おまえの腕をひっとらえ、洗たく物をしぼるようにねじあげるかもしれぬ。あるいは、二本の枯枝のように、ばりばりと腕をへし折って、否応なしにおまえに食べさせないとも限らない。また、優しく愛撫するふりをして、お前の頭を両手に抱いて、渇えた指をその無垢な脳葉に突込んで、唇にうすら笑いを浮かべながら、一生涯、永遠の不眠症に痛んでいるぼくの眼を、洗うと特に効めのある、脳みそを引ずり出すかも知れないぜ。あるいはまた、一本の針でおまえの瞼を縫いあわせ、世界の風景をうばい去り、自分の途を見出すこともできなくしちまうかもしれぬ。だからって、お前の道案内をぼくがするわけじゃないよ。あるいは、鉄の腕でおまえの男を知らぬ肉体をもちあげ、足をつかみ、石打玩具のようにぼくのまわりをぐるぐる廻し、最後の円周を描くときに、力まかせに壁にむかって投げつけるかも分らない。血の滴くは、いっせいに人間の胸にとびちり、ぼくの悪業の一例を人間どもの眼につきつけ、奴らを恐怖させるだろう。》(栗田勇訳、現代思潮社、一九六七年版)

朗読を聞いた女は男が窓の外を眺めている間に該当ページをそっと破り取ってしまう。
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『マルドロールの歌』は明らかにマルキ・ド・サドを意識している。想像力の限界を押し広げた感じである。サドの作品とともにシュルレリスム運動に大きな刺激を与えたのも頷ける。

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シュルレアリスムといえば「ミシンと洋傘との手術台のうえの不意の出逢いのように美しい!」というあまりにも有名なフレーズも『マルドロールの歌』から取られている。ヴィヴィエンヌ街とコルベール街の交差点で見かけた少年の描写のなかに現れる。

《彼は肉食猛禽の爪の牽縮性のように美しい、あるいはさらに、後頭部の柔らかな部分の傷口の定かならぬ筋肉運動のように、あるいはむしろ、あの永久の鼠取り機、動物が捕えられる度毎にいつでも仕掛け直され、一台で無数の齧歯類の動物を捕えることができる、藁の下にかくされていても機能を発揮することのできるあの機械のように、そしてなによりも、ミシンと洋傘との手術台のうえの不意の出逢いのように美しい! メルヴァン、このブロンドのイギリス女の息子は、剣術の授業を先生のところで受けてきたところだ。》

《; ou plutôt, comme ce piège à rats perpétuel, toujours retendu par l'animal pris, qui peut prendre seul des rongeurs indéfiniment, et fonctionner même caché sous la paille ; et surtout, comme la rencontre fortuite sur un table de dissection d'une machine à coudre et d'un parapluie ! Mervyn, ce fils de la blonde Angleterre, vient de prendre chez son professeur une leçon d'escrime, et enveloppé dans son tartan écossais, il retourne chez ses parents.》

『マルドロールの歌』は「第一の歌」だけが一八六八年に無記名で出版された後、「第六の歌」までをラクロワから一八七〇年に刊行するはずだったのが、戦争のために見本が数冊できただけに終わったという。見本を手にしたロートレアモン(本名イジドール・デュカス)は急死。一八七四年にベルギーから刊行されたが(この頃、やばい書物はたいていベルギーで出版された)、それも埋もれてしまい、一八九〇年になってジュノンソオという版元から出版された。それがグールモンの目に留まり、ようやくにして陽の目を見た。

引用した原文は『LES CHANTS DE MALDOROR』(Éditions Jean-Claude Lattés, 1987)より。一九九八年にパリのセーヌ河岸の古本屋台で求めた。まだあの頃は古本屋をのぞくというとそのくらいのところが関の山だったなあ…。
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by sumus_co | 2012-09-13 21:38 | ほんのシネマ

ダブル・フェイス

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映画「ダブル・フェイス 秘めた女」(マリナ・ドゥ・ヴァン監督、二〇〇九年)より。主人公のジャンヌ(ソフィー・マルソー)は少女作家としてデビューし、その後ドキュメンタリーやガイド本で成功していたが、あらためて小説を書き上げて担当の編集者に読んでもらう。その結果を聞くために出版社を訪問する場面。待合所に著名な作家のポートレートがずらりと飾られている。これらの作家をすべて出版しているとすればガリマールくらいだろうか(?)。ジイドとランボーのところで原題の「NE TE RETOURNE PAS」(振り返るな)の文字が現われた。

待合所から応接室へ。実際の出版社なのかどうかは分らないが、白髪の編集者のファッションも決まっている。パリなどでは中高年の方がオシャレが目立つような気がする。
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吹き抜けになっていて、写真が飾られている待合所が見えている。
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ジャンヌの自宅の書棚。見事に乱雑。ところが……
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こちらは寝室の書棚、きちんと整理されている。このあたりからだんだんとミステリアスな展開になっていくので、ストーリーには触れないでおこう。といっても、そんなに面白い映画というわけでもないが。
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by sumus_co | 2012-08-21 20:06 | ほんのシネマ