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林蘊蓄斎の文画な日々
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Paris, 14 Nov. 2008

Paris, 14 Nov. 2008_b0081843_19592275.jpg


パリへ着いてからずっと天気が悪い。気温は予想していたよりも穏やかで過しやすかったが、毎朝のようにシャワーがやってきて、昼ごろ少し晴れたかと思うと、もう四時には薄暗くなる。さて四日目はメトロ七号線のレ・ゴブランへ。近くにゴブラン織りの工場(Manufacture des Gobelins)がある。ポール・ロワイヤル大通りとアラゴ大通りが交差する三角地帯にはマクドナルド・ハンバーガーの店があり、満員御礼の大盛況。フランス人は関西人と同じくマクド(MacDo)と略するようだ。

やや渋い色調のMマークを傍目にポール・ロワイヤル大通りをモンパルナス方面へ歩いて行く。並木のある広い歩道で、昨日のシャトー・ルージュの喧騒と一転ゆったりとしてはいるが、やや閑散とした雰囲気。途中に寿司店があった。今回のパリでもっとも目立ったのが日本の寿司屋、高級から宅配チェーンまで、いたるところに店を出していた。ヘルシー志向もあって受けているのだろう。五分ほど歩いたころ、白地に青いストライプの日除けが目立つ Librairie Vocabulaire(語彙書店)に到着。

Paris, 14 Nov. 2008_b0081843_200389.jpg


この店は本が多い方だ。手前と奥の二部屋にびっしり。ただ床に積み上げるというようなことはしていない。前室の中央には円卓があり、ランプを囲むように本が放射状に並べられている。肘掛け椅子やタイプライター、壁に貼られた文筆家たちの写真、といったディスプレーも書斎らしさを演出する。奥でパソコンに向かっていた六十くらいの白髪の店主にリストを見せると、さっそく探しにかかってくれた。次の二冊はすぐに出てきた。

・BRETON André, Anthologie de l'humour noir, Jean-Jacques Pauvert, 1966
・VIAN Boris, Le dernier des Métiers, Jean-Jacques Pauvert, 1965

ブルトンの『黒いユーモア選集』そしてヴィアンの『最高の職業』ともにJJP版。『黒いユーモア選集』は一九四〇年のサジテール版(Editions du Sagittaire)が最初で、それもこの店は在庫しているらしいが、かなり高価だ。いずれ欲しいとしても今回は見送る。

Paris, 14 Nov. 2008_b0081843_2012430.jpg


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Paris, 14 Nov. 2008_b0081843_202327.jpg


リストの三冊目にバタイユの『青空』を挙げてあった。ところがこれがどうしても見つからない。「売れたかもしれんな……、どのサイトに出てたかね?」などとつぶやきながらあちらこちらの棚を探し、テーブルの上の本の堆積を移動させても、結局、出てこなかった。こちらはその間に本棚を拝見する。画集や絵本、音楽関係なども置いてあり首尾範囲は広いようだ。そのうち「こんなのどう?」と取り出したのがブルトンの『秘法十七番』。

・BRETON André, Arcane 17, Jean-Jacques Pauvert, 1971

この初版は一九四五年の Editions Brentano's(ニューヨーク)で、四七年にサジテール版が出ている。15ユーロなので飛びつく。ブルトンが二冊になった。自伝によれば、マルキ・ド・サドをはじめとしてポヴェールの出版活動は常にブルトンによってもっとも強く導かれてきた。しかしポヴェールは、いつでも会えるのに、なかなかブルトンに会おうとはしなかったようだ(けっこう人見知りである)。一九五五年になって初めてポヴェールはフォンテーヌ通り42番地のブルトンのアパルトマンを訪ねた。そこに飾られているオブジェに少々ヘキエキしながらもブルトンとの強い絆を感じたそうだ。そのブルトンの部屋が You Tube で見られる。五階までの階段がキツそう(といっても、われわれのステュディオは八階なのだった)。

Par la fenêtre d'André Breton

いくらさがしても青空は見えない。パリの天気と同じだなどと思いながら「無ければしかたないですよ」と言った。
「どこかにあるはずだ。パリに住んでるのか? 電話教えてくれ」
「いや、もうすぐ日本に帰りますから」
「いつ帰る?」
「来週です」
「なら、それまでに見つかるかもしれない、番号書いて」
熱心に言うのでステュディオの電話番号を売上表の隅に記入した。「ブックの香り」もそうだったが、A5くらいの紙に今日売れた書名と値段を手書きで書き留めて帳簿代わりにしている。なぜかレジスターというものがない。釣り銭も用意していない。だから、できれば小銭、せめて10ユーロ札、5ユーロ札は用意しておいた方がいいようだ。コインは2、1ユーロ、および50、20、10、5、2、1サンチームがあるが、2と1ユーロが使い勝手がよかった。
「写真とってもいいですか?」
「もちろんだよ、東京でも宣伝しといてくれ」
いかにも古本屋という主人のいい店だった。
by sumus_co | 2008-11-28 21:11 | パリ古本日記
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