庄野英二『ユングフラウの月』(創文社、一九七一年五刷、装幀・装画=串田孫一)。串田孫一の挿絵に惹かれて。サイン本だが、署名入りはけっこう出回っているようだ。百円。
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今回の百万遍での最大の収穫はこの『生活』(芝書店、一九三六年五月一日)だった。牧野信一氏追悼録。島崎藤村、河上徹太郎、織田正信、楢崎勤、牧野英二、巌谷たま、芝隆一、大島辰雄、中島健蔵、宇野浩二、辻潤が追悼記を寄稿している。芝書店主・芝隆一の文章から。
《こゝで打開けるが「鬼涙村」の装幀を自分は好かなかつた。それで牧野さんに次の「酒盗人」も白と黒が反対になるだけで同じ装幀になることになつてゐたから若し御意見があれば自分にだけおもらし下さいと手紙を出したら、あれで結構だ大島君によろしく、次のもどうぞ……、と折返へし返事が来た、人を信じたら信じきり委したら委しきる男らしい牧野さんをその時頼母しく思つて自らを大島君にすまないと恥入つたほどだ。》(「もう、一日二日」)
装幀は大島辰雄。