林蘊蓄斎の文画な日々
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パトス書店

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『美術世界第十八巻』(春陽堂、一八九二年七月二十日)より渡辺省亭(わたなべ・しょうてい、1851-1918)「蘆渚泊舟図」の図版(片面のみ)。『美術世界』はフルカラー木版画の美術雑誌。最近えびな書店の『書架』に特集があった。これは汚れて綴じもほどけているため100円だったか。参考にはなる。

÷

中尾務氏より『VIKING』694号。「VIKING」という連載がすでに七回目。富士正晴が『VIKING』という雑誌を刊行するまでのいきさつが事細かに調べられており、富士正晴に興味はなくとも、富士を中心とした敗戦直後の出版や文壇の様子がよく分かる。

今回は富士が、神戸市の兵庫区荒田町あたりの古ぼけたしょっぽりした古本屋で見つけたヴァージニア・ウルフ『オーランド』を読んで、小説「小ヴィヨン」を書き上げた話。その古本屋はどこなのか? 覚えていたのは、今は亡き間島保夫さんである。荒田町に近い下沢通二丁目にあった。

《「あのあたりで、良い本もってたのはパトス書店でしょう。パトス書店は、戦後、追放されていた阪本勝さんが開いたんです。戦後間もなく素人の古本屋がけっこう増えるんですが、パトス書店も、その素人古書店のうちに入ります。阪本さんは顔を見せなくて、店には番頭の八木猛さんが出てました。売ってくれへん本もあってね。昭和二五年ぐらいまでやってましたよ」(二〇〇三・四・二五)》

荒田町は新開地の花街のすぐ北。戦前は古書店もいろいろあったようだ。たいへん貴重な証言である。なお公職追放は昭和二十六年までに多くが解除されていたから(二十七年に全員解除)、それにともなう閉店だろう。Web版尼崎地域史事典『apedia』によれば、阪本勝は人道主義だったものの大政翼賛会推薦の衆議院議員をつとめたために戦後の第1次公職追放(D項該当)となった。一九五〇年一〇月解除。佐伯祐三と北野中学で同級生だったはず。

÷

Tetu Makino 氏より古本メール。

《先日たまたま福岡の葦書房でつぎの本を入手しました:

[1] 寿岳文章・静子『紙漉村旅日記』
  (明治書房1944(昭和19)年・定価8円50銭)¥5000
[2] 寿岳文章『和紙風土記』
  (河原書店1947(昭和22)年3刷・定価35円)¥2500

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[1]は装丁・挿絵・地図=芹沢介の美しい本です。買ったときは表紙と本体が剥離していたので、ご主人が修理するから待ってくれと云ったのですが、断って、じぶんできれいに修復しました。函もつくって愛蔵しています。[2]のほうは、本文はあきらかに和紙で、本を持ってみると吹けば飛ぶように軽いのはいいが、この用紙ではたしかに印刷には苦労したことと思います。発行の河原書店は京都市河原町蛸薬師下ル、印刷はやはり京都の日本写真印刷(三条通堺町角)とのことですが、むろん活版です。これに反して[1]のほうの本文はわりとつるつるした紙ですが、やはり和紙ではないかと思うのですが、どうでしょうか。二十世紀前半のフランスの挿絵本なんかで、最高級の小部数限定版の用紙は「局紙(japon)」ですが、これは和紙でも、つるつるしています。これと同種ではないか、と思うのですが。

このつながりで、やはり福岡の天導書房から

[3] 寿岳文章『和紙落葉抄』
  (湯川書房1976(昭和51)年・定価2000円)¥1700
を通販で買いました。荷を解いて、あまりに美しい本であるのに驚嘆しました。湯川書房のことは、Spin04の山本さんのインタヴュなどを読んで、なにか1冊は入手したいと思っていましたが、想像以上に素晴らしい造本です。和紙を貼った函、本体とも、完璧です。ため息がでますね。

この3冊は、楽しみながらぼつぼつと読んでいるところですが、これを機会に和紙のことについて、基本的な知識をもちたいと思っています。和紙あるいは紙一般にかんする手ごろな入門書でご推薦されるものがありましたら、ご教示くださればさいわいです。》

う〜ん、そうですね、今手近にあるのでは、小宮英俊『紙の文化誌』(丸善ライブラリー、一九九二年)が和紙のみならず、紙全般を古代から現代まで図版入りで要領よくまとめてあり、紙についての概念を得るには重宝です。読者の皆様、おすすめの和紙本がありましたら、コメントいただきたく。
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by sumus_co | 2008-10-23 20:59 | 古書日録
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