林蘊蓄斎の文画な日々
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珈琲ヲ飲ム礼法

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ホルン珈琲店のメニュー。某氏より頂戴した。湯川さんがデザインしたという。先日の限定版目録と似通った装幀。ならば七十年代末頃かも知れない。ただ、表紙の紙は同じだが、本文用紙はもっと手触りのある、デコボコした、おそらく水彩紙ではないだろうか。風合いはすばらしいけれども、活字はかすれ気味だ(とくに小さい文字)。湯川さんは和紙に印刷するのも好んだが、和紙はインクを吸い過ぎて、和紙の繊維が印刷機に張り付いて上手く刷れない(とご本人がため息をついておられた)。印刷効果だけから言えば、このメニューは成功しているとは思えない。そのへんもまた湯川さんらしいと感じられる。もしこれが政田岑生の制作だったなら、絶対に刷り直したと思う、「活字が泣いている」と嘆きながら。

第一頁目に「珈琲ヲ飲ム礼法」が大書してある。

《砂糖ニ添ヘアル匙ハ只之レニテ我ガ茶碗ニ入ルルノミノ用ナルヲ以テ、決シテ我ガ茶碗ヲ攪拌スベカラズ》

または

《右手ヲ以テ茶碗ヲ口ニ運ビ傾クレバ液ハ自然ニ口中ニ流レ入ルベシ。スースート之ヲ吸フベカラズ。非常ナル失礼ナリトシルベシ。》

コーヒー通というのは煩いものだ。しかし後者は本当にその通りだと同感できる。ジュールルルとコーヒーを吸う喫茶店のマスターももちろん知っているが。

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『第34回ヨコハマ古書まつり』(10/23〜26)の目録が届いた。聖智文庫さんのページをまず開く。細江英公『薔薇刑』(一九六三年)そして柴田錬三郎肉筆題字・鴨下晁湖肉筆挿絵二葉と始まる八頁ほどはため息の連続である。南画廊のシュビッタース展図録なんかふるいつきたくなる。洲之内徹『棗の木の下』(現代書房、一九六六年)献呈署名が 31,500。やってくれますなあ。加藤一雄は『無名の南画家』『京都画壇周辺』『雪月花の近代』そして原章二『加藤一雄の墓』まで並んでいる。推理ものは得意のジャンルだし小林信彦もズラリ勢揃い。このヴァラエティは最良の意味でセドリ師の本領発揮というところ。

÷

四天王寺報告が Tetu Makino 氏より届いた。例によって長目なので一部のみ紹介する。

《幸田露伴『洗心広録』(至誠堂1926(大正15)年・定価3円80銭)¥5000 :ちょっと張り込んだ。鋲を打ったふたつきの堅牢な函からすべりでた本体は、朱色に鷺の絵をあしらった美しい装丁。本文の印刷は凸版印刷がやっているから、しっかりしている。『洗心録』『悦楽』の2冊の紙型が関東大震災で焼けたので、新たに合冊して出版したという。1冊で2度おいしい。》

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《吉田洋一『白林帖』(甲鳥書林1943(昭和18)年・定価2円80銭)¥1000 :著者は名著『零の発見』(岩波新書)で有名な数学者。数学者で味のある随筆の書ける人は稀だが、そのひとり。タイトルのいわれは不明。著者が随筆を書いたのは、北海道帝国大学理学部の同僚で低温物理学者の中谷宇吉郎の「煽動による」とあとがきに書いている。中谷は『続冬の華』、『第三冬の華』などを甲鳥書林から出しており、その縁でこれも甲鳥書林から出ているのだろう。装丁は赤と白のコントラストが美しい。中谷が随筆をたくさん書いたのは、むろん指導教官の寺田寅彦の影響だろう。寺田は物理学者だが、漱石の弟子。『我輩は猫である』の寒月君のモデル。》

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《柳田国男『昔話覚書』(三省堂1943(昭和18)年・定価2円30銭)¥300 :カバーは破れているが、本体の装丁は美しい。この日は、四ツ橋にちょうちょぼっこを初めて訪ねた。快適なスペースだが、難をいえば、急な階段を4階まであがるのは、メタボ老人にはちときつい。エレベーターを作っちくれえ。「古本と男子」から森田たま『随筆 竹』¥1200を記念に買う。函が壊れてるので、修理しよう。》

などなど13冊。《すこぶる満足しています》とは何よりでした。
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by sumus_co | 2008-10-14 20:46 | 古書日録
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