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福岡古書漁り記

先日紹介した『遊心』に凄みのある蒐集譚を執筆しておられた牧野氏より「福岡古書漁り記」という古本メールが届いた。福岡の古書店事情も分かって参考になりそうなので、お許しを願って一部引用する。桜新道は検索すると品川区にあるようだが、どうだろう。

÷

《福岡には九州大学があり、六本松と箱崎にキャンパスがあったので、それぞれ周辺にたくさん古書店がありましたが、箱崎はほぼ全滅、六本松ももはや二・三店を残すのみになりました。ご多分に漏れず、九大も順次郊外に統合移転中。そうなると、広島同様、古書店は全滅でしょうね。そういうわけで、まずは西鉄バスで草香江(六本松の次)へ。葦書房をチェック。
 葦書房には道路側の壁面に百円均一の棚があります。そこでの今日の収穫は:

[1] 阿部知二『道』(新潮社1943(昭和18)年8刷・定価1円90銭)装幀・挿絵は脇田和とあります。駅の改札口の挿絵に「口札改」、「口出」とあるのに注目。小説としておもしろいかどうかは読んでのお楽しみ。
[2] 共立数学演習講座『積分論・位相解析』(共立出版1962(昭和37)年初版5刷・定価350円)積分論は功刀金二郎・中西静、位相解析は吉田耕作・伊藤清三という豪華メンバー。これが百円とは!
[3] ランダウ・リフシッツ『統計物理学(下)』(岩波書店1963年3刷・定価600円)元パラ、極美。ランダウ・リフシッツの理論物理学教程のシリーズはすべて東京図書(旧・商工出版)の出版ですが、なぜか統計物理学だけは岩波が出しています。理工書専門の明倫館では第2版で上・下それぞれ¥1,500の値がついています。
[4] 岸田国士訳『ルナアル日記1894−1896』(白水社1938(昭和13)年・定価1円80銭、満・鮮・台北・樺 外地定価1円98銭)
[5]  岸田国士訳『ルナアル日記1900−1901』(白水社1940(昭和15)年10刷・定価1円80銭)

[4]には「桜新道 山陽堂書店」というラベルが貼ってあります。桜新道ってどこや? [5]には「海上 店書山内」というラベルが貼ってあります。へえ、あの魯迅が入り浸っていた内山書店か。1940年の上海から2008年の福岡まで、この本はどんな旅路を辿ってきたのでしょうか。もっとも、福岡からの直線距離では、東京より上海のほうが近いのですが。》

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《支払いをしたら、ポイントが溜まっていて、千円のキャッシュバックがありました。ご主人に福岡の古書店地図がないか訊いてみると、「古いのしかなくて、いま、どんどん店がなくなっていきますからね」とのこと。「香椎に行きますか?」と云うので、「香椎には古書店が残っていますか」と云うと、「いや、いま香椎の駅の三階で古本市をやっているのですよ」と云います。聞いてないよー! 出掛けにネットで福岡古書組合のホームページをチェックしましたが、そんなことは書いてありませんでした。もっとちゃんと広報してほしい。
 葦書房を辞去して、西鉄バスで「薬院駅前」、幻邑堂さんへ。店内をチェックするが、香椎のことが気になって集中できません。けっきょく、今日は次の二点だけ:

[8] 森銑三・柴田宵曲『書物』(岩波文庫1997年・定価660円)¥500
[9] 中国古典文学大系54『文学芸術論集』(平凡社1974(昭和49年)・定価2200円)¥1,500》

《薬院駅のドートルで一服して収穫物を点検してから、西鉄バス、JR電車を乗り継いで「香椎」へ。駅ビル三階の「納涼古本市」を見てまわりました。そこでの収穫は:

[10] ジュール・ヴェルヌ(田辺貞之助訳)『八十日間世界一周』(創元SF文庫1994年13版・定価480円)¥200。映画とその主題曲が好きなので。挿絵=南村喬之。
[11] トルストイ(中村白葉訳)『復活(上・下)』(岩波文庫1993年・定価410円+460円)¥400。いわずとしれた名作。
[12] デカルト(落合太郎訳)『方法序説』(岩波文庫1990年・定価410円) ¥250。旧訳が知らぬうちに入手できなくなっていたので。
[13] 安田武『昭和青春読書私史』(岩波新書1985年・定価480円)¥210。暗い時代に読書でからうじて生きる。
[14] 工藤宜『江戸文人のスクラップブック』(新潮社1989年・定価1500円¥700。江戸時代の儒者・詩人の大槻磐渓(1801−1878)がいっさいがっさいを張り込んだ11冊のスクラップブックの解読。英仏海底トンネル計画図まであり。おもしろそう!
[15] 中山省三郎訳『全訳ツルゲェネフ散文詩』(第一書房1933(昭和8)年・定価1円80銭)¥2,800。155ミリ×120ミリ×18ミリ。総革装丁、函入り。和紙に鮮明な印刷。たいへん美しい本です[下の写真]。初版千三百部と謳っていますが、こんな総革装の本をそんなに多く造ったとは信じられません。》《第一書房の美しい本をもう一度。現代の長谷川巳之吉よ、出でよ! なあんちゃって。》

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《ざっと以上が本日の収穫です。しごく満足して、15時40分博多発のレールスターで帰路に就きました。全日空のマイルが溜まったので、29日は休暇をとって上京します。東京古書会館の「書窓展」で掘り出し物にぶつかることを期待しつつ。》

う〜む、東奔西走、古本の日々ですなあ。
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by sumus_co | 2008-08-25 20:14 | 古書日録
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