林蘊蓄斎の文画な日々
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ヂェルミニィ・ラセルトゥウ

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北京語言大学漢語速成学院で短期間(五ヶ月)学んでおられたご隠居NHさんからパンダ写真が届いたのでアップしてみる。《北京動物園でオリンピック期間特別公開中の、の若い8頭のパンダ(四川省からつれてきた)のうちの数頭です》とか。ご隠居は短期講習を何度も受講されており、むろん幅広い分野にわたる中国通である。一部、コメントも引用。

《時々息抜き。骨董市、書店通い、伝統演劇鑑賞……。北京の自然保護団体、鳥関係団体主催の探鳥会(市内、郊外、泊りがけの遠出も)にもなんどか参加。いろいろな鳥を見ることができました。今回は、北京の一般市民の家にホームステイ。東京で言えば「高島平」のような団地の暮らしを味わいました。》

÷

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風邪で寝て居る間に読んだ本ではゴンクール兄弟の『ヂェルミニィ・ラセルトゥウ』(大西克和訳、岩波文庫、一九五〇年二刷)が断然面白かった。この岩波文庫、初版ではないが、文庫専門店ではけっこうな値段が付いている。文庫といってもあなどれない。もちろんこれは100円(帯付)だった。

大西克和は『ゴンクウルの日記』三巻(鎌倉文庫、一九四七〜九年)および『ゴンクールの日記』五巻(角川書店、一九五九〜六四年)が大きな仕事で、他にゾラやドーデも訳している。『ヂェルミニィ・ラセルトゥウ』について言えば、意味不明な和訳(意訳?)も散見されるものの、全体の調子がなかなかの名文で、読みやすく仕上がっていると思った。

病中に daily-sumus から独立した「オックスフォード便り」に田山花袋への影響云々の話しが出ていたので読んでみる気になったのだ。ゾラやモーパッサンよりもタッチとしてはゴンクールの方が好みである。ミルクホールとかペンキ屋とか、コーヒー占いとか、小生の興味をもつフランスの庶民生活がたくみに描かれている。例えば、最近の話題にひっかけてこんなところも面白い。パリ郊外のヴァンセンヌの森へピクニックに出かけたくだり。

《日が暮れて、一同は歩いて帰つて来た。堡塁の壁に、ゴオトリュウシュがナイフの切つ先で石の上にハアトの形を大きく描くと、その中に皆は銘々の名前を日付の下に誌した》

日本人だけじゃなくこういうことは誰でもするもの。この「堡塁」はヴァンセンヌ城のものであろうか。ヴァンセンヌの森はパリ市の東郊にあり、元々王家の狩場だったが、一八六〇年、ということは『ヂェルミニィ・ラセルトゥウ』が発表される四年前に、ナポレオン三世によって公園として市民に開放された。だからきっと当時の市民にとっては新奇な遊楽の場所だったに違いない。動物園もあり、映画にもよく登場する。

ヴァンセンヌにはちょっと思い出があって、ここに友人の友人が住んでいたので、パリにしばらく居たころよく訪ねて行った。パリ暮しのかなり長い気のいい夫妻で、ダンナはやはり絵描きだった。彼らの住むアパートの物置場(各戸ごとのロッカーのようなもの)に荷物を数ヶ月預かってもらったり、オリーブの種を齧って取れてしまった奥歯のかぶせを応急処置で接着してもらったりと、けっこうお世話になった。いつエンストするか分からないミニ・クーパーでヴェルサイユまでドライブに連れて行ってもくれた。ほんと、底床が抜けそうな車だったよ。

ところが、われわれがイギリスへ行っている間に、そのアパートのロッカーが破られて、夫君の絵が盗まれたというのだ(それまでもときどきあったらしい)。われわれの荷物も被害にあった。リュックにはスペインやイタリアでのスケッチがけっこう入っていたのだ。ところが、夫君の絵(抽象画だった)を盗んだドロウボウ君は小生のスケッチには洟も引っかけず、フィレンツェで買ったファイアンスのコーヒーカップだけ持ち去っていた。まったく憎たらしい。いまでもときおりあの可愛い絵柄のカップとソーサーを夢に見ることがある。
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by sumus_co | 2008-07-24 20:07 | 古書日録
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