知人を左京区のある病院へ見舞った。ついでに白川周辺の古本屋を数軒のぞく。まずは某店の百円均一箱からこの『A GUIDE TO THE EXHIBITION GALLERIES OF THE BRITISH MUSEUM』(1894)を拾い上げる。大英博物館の展示ガイドで、本としてはどうということはないが、蔵書票と蔵書印がちょっと珍しいと思った。
伊達邦宗(だて・くにむね、1870~1924)は、伊達宗家三十一世・仙台伊達家十五代当主、父は仙台藩最後の藩主・伊達慶邦(よしくに)。要するに伊達政宗の子孫。ケンブリッジ大学で経済学を修め、帰国後には、伊達家屋敷内に農場「養種園」を開き、野菜の品種改良を行ったそうである。そこで開発された仙台白菜は全国にその名が知れ渡るほどの優品だったという。
留学中に購入した本の83番がこの大英博物館案内だったわけだ。検索してみると、他には早稲田大学図書館蔵の『
韃靼物語』がやはり伊達邦宗旧蔵である。大きい方の印は「伊達菊重郎図書之章」と読める。邦宗の幼名は「菊次郎」のはずだが、「菊重郎」については不明。
遠路はるばる京都のわが家までたどりついたこの本が、もし言葉を話せたら、いったいどんな物語が聞けるのか、想像するだにワクワクする。コックニーと仙台なまりがごっちゃになってたりして(ありえねー!)。