林蘊蓄斎の文画な日々
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七つ擲る

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リリアン・ハーヴェイ主演映画「七つ擲(なぐ)る」(Sieben Ohrfeigen, ポウル・マアテイン監督、1937、ドイツ)の広告が掲載された近藤書店(銀座五丁目、今はなき)の書皮。包んでいた本のタイトルは背の部分に書いてあるように『七宝の柱』(新潮社、一九三五年)、小島政二郎のエッセイ集である、たぶん、本は入手していないので断言できないが。

÷

阿瀧康さんより『ガーネット』55号を頂戴した。相変わらずの阿瀧氏の古本を中心とした日録が面白い。ただ今回は大橋政人氏の「松永伍一さんが死んだ」にも古本話が出ていた。練馬区の上石神井あたりで松永伍一は下宿屋をやっていたそうだ。若き日の渡辺武信や山本益博らも暮していたことがあるらしい。そこを訪ねた大橋氏は松永より谷川雁の詩集『天山』をもらった。

《その恐ろしく張りつめた詩行に圧倒された覚えがあるが、最終的には古本屋へ売ってしまった。そのころ池袋駅の東口を出てすぐのところに小さな古本屋があって、大抵の本は半値で引き取ってくれた。だから当時読んだ詩集は堀川正美の『太平洋』でも岩田宏の『グアンタナモ』でも、金がないので読むそばからみんな売ってしまった。いまから思うと本当にもったいないことをしたものだ。最後には「現代詩手帳[ママ]」のバックナンバーまで売ってしまった。よく、あんな薄っぺらな雑誌まで古本屋の親父さんは買ってくれたものだと感心する。》

時代がはっきりしないが、大橋氏は昭和十八年生れで、『天山』は国文社からピポー叢書として一九五六年に刊行されているから、だいたいそんな頃だ。『グアンタナモ』(思潮社)は一九六四年、『太平洋』(思潮社)も一九六四年刊。たしかに現在の古書価はかなりである。

《池袋駅の東口を出てすぐのところに小さな古本屋》は盛明堂であろう。架蔵する一九八一年の『全国古本屋地図』(日本古書通信社)には出ているが、八六年刊には見えない。池袋駅周辺では西口に古本屋が七軒、東口は一軒だけ。西口には文学書では知られた近藤書店もあったが、わざわざ盛明堂に持ち込んだ理由は何なのか、単に近かっただけだろうか。

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『ミュージック・マガジン』七月号「Art」欄で大城誠司氏が「ブックデザインの過渡期に活躍した才人「佐野繁次郎の装幀モダニズム」」と題して佐野展を紹介してくれた。やはりあれだけ数が揃うと壮観だという感想が出ており、展覧した甲斐があったナと思う。『ミュージック・マガジン』はウエッブ上にサイトがない。中村とうよう氏はまだ顧問格で出社しておられるようだが、そのへんにもこだわりがあるのだろうか。

÷

昼過ぎ、郵便局のCDから古本の支払い、ついで駅前のセブンでメール便を出したあとコピーをしていた(これが散歩みたいなコース)。コピー機のとなりにCD機がある。男がひとり操作していた。その後ろへメタボ体質でパパイヤ鈴木みたいな髪型の若い男が並ぼうとした。と、少し離れたところにいた背の高い女性が
「並んでます!」
と鋭い声を出した。
「なんで、そんなとこにおんねんや!」
とパパイヤがちょっとキレそうになってなじった。
「暗証番号とか見えたら悪いでしょ……」
女は答えたが、CD機から二メートル以上はあったので、さすがにパパイヤの言い分にも一理あると思った。おわり。
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by sumus_co | 2008-06-30 22:11 | 古書日録
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