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三都穴さがし

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コーラの看板。古い酒屋の店頭である。これ、けっこう京都らしい風景と思う。錆び、いや、寂び、がある。

京都人ということについてだが、小生が京都人でないことは、昨日も書いた。ただ、知らぬ間に、讃岐よりも長く、京都で暮している。しかしそのていどで京都人がどういうものかが分かるはずもない。本当のところは分からないが、それなりの感触はもっている。

青木正児『琴棋書画』(春秋社、一九五八年)に「三都穴さがしの狂詩」という一文がある。これがすこぶる面白い。そこに文政二年(1819)編刊の狂詩集『太平新曲』から安穴道人と鄒可潭(すかたん)作が紹介されているので、一部を引用してみよう。まずは安穴道人作「江戸者嘲京」(えどもの、きょうを、あざける)。原文は漢詩、青木の書きくだしによる。

 木高く水清く食ひ物稀なり
 人人表(おもて)を飾って内証晞(かは)く。
 牛糞(うしくそ)の路は大津に連って滑かに
 茶粥の音は叡山に向って飛ぶ。
 算盤出合(であひ) 立て引き無く
 筋壁(すじかべ)連中 権威を假る。
 女 奇麗と雖も立ち小便
 替物(かへもの)の茄子(なすび)数の違んことを怕る。

 常に石橋を叩ひて蘆を渡るが如く
 畢竟皆銭廻りの無きが為なり。
 勝手の吝嗇 総て目を眠り
 上辺(うはべ)の追従(ついしよう) 膚を許し難し。
 帯は鵞絨(びろうど)を占めて不切(きらず)を買ひ
 鉢は南京を使ふて煎枯(いりから)を出す。
 最憐む歴歴の御見物
 各握り飯を包んで花の都を出づ。

そして鄒可潭「大阪者笑京」はこうである。

 勘定綿密 人情疎し
 物の入らざる事無上に誉む
 みだりに近付(ちかづき)を尋ねて茶屋を倒し
 或は手筋を頼って芝居を乾かす。
 小便の替へ物 汁の実と為し
 紙くずの直売り干魚を買ふ。
 笑ふに堪たり客人まさに帰らんとする節
 頻に支度を進めて みすみす是嘘。

「不切」は「おから」。どちらにも出ている「替物」というのは、肥やしとして使うため、汲取人が町中へ小便を集めに来たとき、汲取をさせる代わりに野菜をもらうことをさす。上品に着飾った主婦が汲取人と茄子の数を争ってもめるなど日常茶飯事だったとか。ケチと言えば、ケチではあるが、《小便の替へ物 汁の実と為し/紙くずの直売り干魚を買ふ》とはエコライフの鑑とも考えられよう。京都議定書は締結されるべき土地で締結されたのである。

安穴道人は中島棕隠の狂詩号である。棕隠は京の人で、名は徳規、字は景寛、通称は文吉。号を棕隠、道華庵、因果道士。代々儒を業とした。中島泰志の子で村瀬栲亭に師事、その楼号を銅駝余霞楼(どうだよかろう)と称した。安政三年(1855)歿、七十七。なお鄒可潭の正体は不詳とのこと。

晩年の生田耕作氏が中島棕隠らの江戸詩人を好んでその書物や尺牘などを集めておられた。御池を上がったあたり、鴨川畔の料亭でコレクションの展示が行われたのを見た記憶がある。永井荷風の絵入り色紙などもあった。祇園生れの生田耕作氏を考えても洒脱というにはほど遠い。一見人当たりは良さそうだが、京都人の内面には激しいものが燃えているように思う。詩人・天野忠もそうではないか。

そうそう、京都人は京都を愛している。これは間違いない。だから決して京都人の前で京都の悪口をもらしてはならない。不文律なり。
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by sumus_co | 2008-04-15 21:20 | 京のお茶漬け
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