林蘊蓄斎の文画な日々
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語りの宇宙

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活版凸凹フェスタ2008」(5/2〜12)のポスターを朗文堂さんより頂戴した。ごく一部をスキャンしたので、全体はサイトで確認されたし。活版はいい。

÷

ある方より、一昨日、整理をしていたら中村書店の記事の載っている本を見つけた、そうしてこのブログを開くと、中村書店の話題が出ていた、この偶然にカンパイ! ということで、その本を送って下さった。有り難うございます。

山口昌男『語りの宇宙』(聞き手=三浦雅士、冬樹社、一九八三年)である。その最初の方、山口氏が青山学院大学の夜間部へ入った次の年、東大の入試を受ける直前に起った不思議な話に中村書店が登場する。

《入った理由はぼくちゃんと知ってるんだ。ほかの人より絶対いい点数を取ったところがあるんですよ。どういうわけか知らないけれど、ぼくはそのころから古本屋を歩き回っていた。またも本なんですが、受験の前の日まで古本屋あさりしていた。渋谷の宮益坂に中村書店という本屋があって、昔の岩波文庫でサミエル・バットラーの『エレホン』、Nowhere を逆にしたユートピア小説を買って、それを前の日の晩に読んでたんだ、受験にもかかわらず。翌日、受験に臨んだら、何と前の晩に読んだところがでてしまった。こんなことってほとんどあり得ないんだけどね。》

《そこにおいて、他の受験者を圧倒的に引き離す高得点を得たんじゃないの(笑)。文二が四百人で、三百九十九番であったとしても、その前の晩にそれを読んでなかったら絶対に入れなかった。(笑)だから、偶然性に生涯それで賭けることにしたんですよ。》

すごい偶然だ。ポール・オースターの小説みたい。それから、ついでに中村書店とは関係ないが、東大で山口氏は第二外国語でフランス語を取り、山田爵(実際の爵は本字、以前にも触れたが、山田珠樹と森茉莉の長男)に習ったという。

《このごろよくさる酒場でいつも酔っぱらって、「ぼくは教え子です」って言っても全然覚えてくれないんですね。もう何回言ったかわからない。(笑)で、「山口昌男です」と言うと、「すばらしい論文を書いている方ですね」って言って、その次になるとまた忘れてるんだ。
ーー教え子だとは一回も認知してくれない。
山口 そう。渡辺守章氏なんかと違って、戦争中でフランスへ行けなかったのね。だから先生のしゃべる能力たるや推して知るべしですよ。したがってその生徒もと言うつもりはないけど。》

÷

柳居子翁にいただいたコメントがそのまま『ざ・ぱいぷ』のエッセイにも登場している。

アンホーラ的な匂いに出くわす度に、私は精神衛生上の観点から嫌煙権を唱えたくなる》《変質したイギリスタバコしか知らない人が、気の毒に思えてならない。新鮮なものならば、マイルドとかフルとかを問わず極上のブランデーを口にふくんだ時のようなまろやかな口あたりと、良質の葉だけがかもし出す芳香に、彼等も思わず頬をほころばすことだろう。》

《市販されているイギリスタバコのミクスチュア・タイプは、真空パックの缶入りものでも缶をあけたとき、タバコを包む紙がシミでひどく汚れ、また、蓋の裏のパッキンが茶色やネズミ色に変色している場合は、タバコそのものもすでに変質しているとみて間違いない。「舌を刺す」のは、鮮度の落ちた魚の場合と同様であり、また、「靴下の臭気」は、主として変質したラタキヤ葉に原因があるのだ。》

こういう「嫌煙権」もあるわけだ。ラタキヤ葉はキプロス・ギリシャが主生産地で燻臭が強いとか。ちなみにアンホーラというのはギリシャの壷の一種の名前である。
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by sumus_co | 2008-04-11 19:49 | 古書日録
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